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3-3


 ベッドにごろんと転がる。

 通された部屋は掃除が行き届いていた。ドロリスが定期的に掃除をしていたのだろう、使う予定を信じて。それに感謝して、労って。

 シャワーを浴び、用意されていた寝巻きに袖を通して一人きり。疲れがどっと襲いかかってくる。


 疲れた。本当に。


 宵の口に役所を出てから、未だに時計の針は天辺をささないというのにまるで数日間過ぎたような身体の重さに目を閉じる。


 色々なことがあった。

 あの人たちはどうしたかしら。約束を守ってくれるだろうか。あの人たちがこれ以上立場を悪くしないといいのだけれど。


 色々なことを聞いた。

 知りたかったことを知れた。たくさんの謎だった部分が繋がって、真実が見えた。けれど、それをどうしたらいいのか相談できる人がいなくなってしまった。


 身動ぎ。ちゃり、と手首から小さな音。

 あの人は。ウィルフリードは。


 たくさん心を砕いてくれたのに、それに報いることができなかった。あんなに手を伸ばしてくれたのに、それを取ることもできなかった。


 好きだと言ってくれたのに。

 私も好きよともう言うこともできない。


 唇をなぞる。

 キラキラ輝く街明かり、重なった温もり。

 後悔したって遅いのに、どうしたってもう会えないのに、あの温かい腕の中には戻れないのに。


 ブレスレットは、どうしても外すことができない。




 ふと目が覚めた。


 いつの間にか眠ってしまっていたらしい。時計を確認すれば一番上を少し越えたところ。もう真夜中だ。

 このままもう一度眠ろう。そうして布団の中で体勢を整える。もぞもぞ、ごそごそ。

 目を閉じて、開く。


 ――――何か、いる。


 目が覚めてしまった原因だろう。窓の外、ベランダだろうか。何かが、……誰かが、いる。

 そっとベッドから出て床に足をつける。暖房の魔道具で部屋が暖まっているとはいえ、ひんやりと冷たい。そこを音を立てずに歩く。窓に向かって。


 躊躇ったのは一瞬。

 カーテンを掴んで、投げるように勢いよく開ける。

 目が合う。


「びっ……くりしたぁ……急に開けるなよ不用心だな!」

「泥棒にそんな事言われたくないわ」

「いや泥棒じゃないって」


 冷たい真冬の風が部屋の中へと入ってくる。窓を開けるのにはもう一瞬の躊躇いもなかった。不用心はその通り。自棄になっているのは自分でも分かっている。


 侵入者の男、年の頃は二十代前半だろうか。一見して良い身なりをしていた。確かに泥棒ではないだろう。

 だったら一体なに?


「俺はウトゥ。太陽の一族の者だ。月を継ぐ者に話があって来た」

「……こんな非常識な時間に?」

「それはすまん!」


 あっはっは、と明るく笑うその男。

 長い長い夜はまだ続く。




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