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「中央広場のモニュメント案ですか」
「そうなんスよ~も~今さら言うかって」
夜、二十時。社食で晩御飯。結慧とウィルフリード、アーベル、ハンスの冬至祭チームが揃ってテーブルを囲んでいた。
仕事終わりに食べて帰ろう、ではなくただの休憩。三人が部署に戻ってきたのは就業時間過ぎのこと。そこからようやく腰を据えてデスクワークを始められる。
今ハンスが荒れているのは冬至祭まで一ヶ月を切った今になって中央広場のモニュメントを変更したいとお偉方からお達しがあったから。普段「夜は軽めにしてるんスよ」という彼にしては珍しくガッツリ揚げ物を食べている。相当ストレスが溜まっているらしい。
「今から案出して!決めて!発注して!作って!絶ッッ対に無理!!!」
モニュメントは冬至祭の一週間前には設置される予定。つまり三週間切っている。
「モニュメントってどういうものなんです?」
「冬至祭では各家庭で玄関とか窓とかに月のモビールを飾るんだ。その大きいやつだね」
なるほど、向こうの世界でも見たことがある。確か北欧の……ヒンメリだっけ?
モチーフは月と決まっているから、毎年さほどデザインに変わりはなく使いまわしも多い。今年もそれでいこうと決まっていたはずだけれど。
「観光客が年々減ってるんだよな。ま、仕方ねぇと思うけど」
今年は特に見込めないらしい。それでは困ると都市部が言い出した。モニュメントを一新して、それで集客を狙いたいらしい。
「ソウマさん、何かないっスか」
「お。異世界文化輸入するか!」
「何かって言われても……」
冬至にする事といえば「ん」のつく物を食べるか、柚子湯に入るか。そのくらいしか思い付かない。
冬至に関係なくていいのなら、クリスマス。いや、クリスマスも元々は冬至の祭なんだっけ?
「クリスマス?」
「すごく簡単に言うと神様の誕生を祝う日ですね。その日だったらもみの木に飾り付けして、」
「それ!それってどんなのっスか!?」
ガタン、と大きな音を立ててハンスの椅子が跳ねる。食堂を利用していた何人かがこちらを振り返ったけれど、彼はそれどころではないらしい。懐からメモを取り出して目を爛々と輝かせている。
「ええと、もみの木に沢山オーナメントをつけるのだけど、丸いのとか、杖の形のキャンディだとか、ベルとか靴下とか。木の頂点には星を飾って、夜になればイルミネーションをつけるんです」
「その飾りには何か意味があるの?」
「それぞれに意味はありますけど、うちの国では誰もそんなこと気にしてませんでしたね。だからもしこちらでやるのなら、こちらの意味のあるものをつければいいと思いますよ」
こちらの世界でやるのに、向こうの意味を持ち出すのは野暮だろう。
「花とか、雪の結晶とか。そういうので飾ったのもあって綺麗でしたよ」
「色は自由っスか?」
「定番は赤と緑と金ですね。でも、それも何でも。テーマカラーを決めてあるのもお洒落ですよ」
結慧が見た中では、ピンク系統の色で統一したツリーは文句無しに可愛かったし、赤と金の花だけで飾ったものはゴージャスだった。
つまり、何でもいい。それを伝えると三人はうーんと考え込んでしまった。
「頂点は月っスね」
「色は月神様関係だと銀か……白とかか?地味だな他の色入れようぜ」
「飾りつけどうしようか。今から発注して間に合うもので考えないと」
「それより本体の木ってどっかにあるっスか?伐ってくる?」
うんうん唸りながらしばらく考えて。そして三人して顔を見合わせて、うん、とひとつ頷く。
「わかんねぇっス!」
「実物見ねぇと駄目だな」
「ってことでユエちゃん、ご飯食べちゃおうか」
「ええ?」




