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「今、何か」


 一人の男が顔を上げた。眉をよせ、彼方を見遣る。


 久方ぶりに感じる気配が、一瞬。

 遥か遠くで光ったような。

 

「気のせいか?」


 気のせいだろうか。

 本当に?


 長い長い計画の、最終局面。

 順調だ。何もかも。

 邪魔する者などいないのだ。


 それは、いちばん始めに殺したのだから。


「月の国」


 気配は月の国の方角からだった。

 

 計画は、最終局面。

 完璧だ。何もかも。


 しかし何かを、忘れているような。


「――――消すか」


 元よりあの忌々しい存在に属する国など必要ない。

 

 男は立ち上がる。

 獲物を前に、どのようにいたぶってやろうかと唇を舌で湿らせて。


 一国を消すなど造作もない。


 私こそが、唯一なのだから。

 



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