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1-10

 

 あの闇から出てきた黒い獣のようなもの。あれは「魔獣」と呼ばれているそうだ。

 

「太陽が昇らなくなってしばらくしてから…あれらが出現しました」

 

 世界中で同時多発的に発生した魔獣の被害。被害を受けるものは主に人間。それから家畜。彼らのように対抗する力を持っていればいいけれど、そうでない場合は。

 

「月神の野郎、人間をいたぶって面白がってやがるんだろうな」

「魔獣も月神のせいなの?ひどぉい……」

「月神がやっているという証拠は?」

「そんなのは誰が見ても明らかでしょう」

 

 つまり証拠はない。けれど、発生時期が太陽の昇らなくなった時期とほぼ同時。それから魔獣が人智を超えたものであること。そこから導き出される答えは唯一つ、ということだ。

 

「聖女様、あなたにはあれらに対抗する力があります」

 

 ルイが陽菜の手を取る。恭しく、顔がいいからまるで王子様のよう。

 

「太陽の聖女の祈りは、我ら太陽の加護を受けたものの力を引き出すことができるのです」

「あたしにそんな力が?」

「ええ。あなただけがもつ神秘の力です」

「ヒナが祈れば俺たちは負けない」

 

 陽菜の髪を一房手に取り口付けるクラウドは自信たっぷりに。それもまた、見た目がいいから絵になる光景。だけど。

 

「だからといって何も伝えずにいたのは違うでしょう」

 

 問題は、魔獣が出ることを伝えられていなかった点だ。結慧に伝えられないのはまだ、百歩譲ってわかる。けれど陽菜にまで伝えられていないというのは。

 

「騙しているのと同じじゃないの」

「偉そうに…いい加減にしろよヒナのオマケのくせに」

「貴女など、本来この場にいるべき人間ではないというのに。口を慎みなさい」

「あら、そうして話をすり替えるということはわざと教えなかったし、騙しているという認識はあったということね?」

「口が減りませんね。貴女、この地に置き去りにされたいのですか?」

「私はそれでも構わないわよ?」

「ねぇ!」

 

 言い合いを止めたのは陽菜だった。うるうると水分の多い瞳を上目使いにして、胸の前で手を組んで。

 

「あたしのために喧嘩しないで…!」

 

 そんなポーズでそんな寒い台詞を本当に言う人間がいるとは思わなかった。本気でやっているなら一種の才能だろう。けれど、言っていることはまぁ合っているので何も言えない。それに、おかげで冷静になれた。冷めたともいう。

 男たちはまぁ......

 

「ヒナは優しいんだな」

「あのような者にまでお優しいとは......さすが聖女様、心が清らかでいらっしゃる」

「えへへ……」

 

 本当に心が清らかな人間は、知り合いがあからさまに罵られているのを見過ごすことはしないと思う。まぁ、陽菜の場合は嫌味に気づいていないだけだろう。

 

「あたし、さっきはビックリしちゃったけどぉ……旅はちゃんと続けるから大丈夫!」

「聖女様……!」

「だってぇ、あたしがお祈りすればみんなパワーアップするんでしょ?」

「ああ、他でもないヒナが祈ってくれるんだからな。俺たちは負けない」

「それに、こんなことする月神なんて許せないもんね!はやくやっつけなくちゃ!」

「……そういう事をあまり大きな声で言うものではないわ」

 

 ここは月の国なのだから。

 

「………ずいぶん、月神の肩を持つんだね」




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