羽虫の遺言
自由ってやつはアッという間に何処かに行っちまうもんだな
飛べるからといって楽しいわけじゃない
半分は風に吹き飛ばされているんだ
残り半分はお前らと同じ
生存競争に余念がない
小せえかでけえかだけの違いだな
自然の摂理とやらに従って
息を吸うように生まれ
息を吐くように死ぬんだ
自分で殻を破って這い出て
人目を憚ることなく倒れる
誰の助言も要らないし
天国へはひとりで行ける
自分のことは自分でやるさ
なあに、そのうちまた
会いたければ会えるだろう
だから悲しむことはないんだよ
俺はただ
朝露がきらめく蜘蛛の巣の
寝返りが打てないベッドで二度寝する
ただそれだけのことなんだ