とある家の庭で起こった小さな出来事
短編小説の形式をとりつつ連載していきたいです
それは冬曇りの正午過ぎのことだった。
少しだけ太陽が勢いを増したように感じて、ここ数日家に引きこもっていた私は、久しぶりに縁側から空の様子を眺めようと思った。
朝から居座っている炬燵から最大限に腕を伸ばしたが届かず、仕方なしにぬくもりを振り切って、それでも往生際悪く足先だけを炬燵に残したまま四つん這いになって障子の引き手に指をかけた。
ゆっくりと20㎝ほど開いたら、すぐに部屋より少し低い温度の空気が私の頬をくすぐった。
私はそれ以上は障子を開けず、そのままの格好で空を見上げた。
そこには予想通り、冬特有の曇り空があった。グレーの雲が一面に広がっていたが、太陽のある場所だけがやや白っぽい雲に見える。
あぁ、だから障子越しに差し込む日差しが少し明るくなったのか。
そう思って、目線を空から地面に下した。
ところが、見慣れた我が家の庭には思わぬ来訪者がいた。
ふわふわとした毛並みの見慣れぬ三毛猫が、まるで置物のように静止してこちらを見ている。
尻尾はピンと空を差し、右の前足は直角に曲げられたまま、足先が宙に浮いている。
想像するに、鼻歌でも歌う勢いで(猫が鼻歌を歌えたら、だが)他人様の庭、まぁ我が家の庭だが、それを闊歩していたのだろう。
ご機嫌な散歩のさなか、突然の不審な物音に振り返ったら知らない人間が障子の隙間から顔を出しているではないか。
挙句の果てに目が合い、驚きに驚きが重なって固まってしまったのではないだろうか。
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