剣の塔.3 旅は道連れ世は情け(助け合うのも嫌いじゃない)
昔、空港で先輩がお土産に買ったカンガルーの毛皮のストラップが違法物と思われ警備員に止められていた。
「先程は助けて頂きありがとうございます」
すっかり回復したリリアは、俺を見て頭を下げる。
「いやこちらは問題ない、それよりもどうしてこんなところに?見たところ攻撃魔法も使えない様だし…」
俺は先程助けたリリア、ルーの姉妹に素朴な疑問をぶつけた。
「…実は」
「私から説明するわ」
そういうとリリアは俺に説明を始める。
「私達姉妹はとある目的で旅に出ているのですが、冒険の中で剣に錆びができ、新調しようと思い立ち寄ったこの街で剣の塔があると聞き立ち寄りました、…そして今に至ります」
後半は大分弱々しくなったが、まあ仕方ないだろう。
おそらく1階層のブルースパイダーやグリーンフライみたいな弱いモンスターに浮かれて、より良い武器を目指して2階に上がった典型的なパターンだ。
「慢心は構わないが、力量を見誤るはよくないな」
「「返す言葉もございません」」
二人はしょんぼりしながら頭を下げる。
「じゃあこれからは気を付ける様に、ほらこれ」
「え、これって」
俺は先程倒したブラウンスコーピオンからドロップした【 毒の曲刀(廉価品) 】をリリアに渡す。
「う、受け取れません!」
「どうして?」
「だって私達、結局あなたがいなければ負けてたんですよ、それなのにこんな立派な武器」
「あー、ストップストップ、何か勘違いしてるかも知れないけど、この武器そんな凄いもんじゃないよ?2階層クラスって恐らく下っ端盗賊レベルの代物だからね、まるで名刀貰ったみたいに言ってるけど」
「…へ?」
リリアはびっくりするぐらいのまぬけ面で俺と剣を何度も見返していた。
そりゃ無理もないか、殺されかけた強敵がそんなに強くないなんて聞いたらショックは受けるだろうな。
「じゃあ俺はこれで、それじゃ」
「待ってください」
彼女達から離れようとすると思い切り肩を掴まれる。
「えっとまだ何か用で?」
「こんなこと言うのもおこがましいかも知れないけど、どうか私達をこのダンジョン内でのメンバーにしてくれないかしら」
まあここまでは予想していた展開だな。何てったって武器の新調にここに潜ったのに手に入れたのが弱い武器なんだから。
えーと、どうしよう…。
「1つ聞きたいんだけど君達の中で魔法使えるのってルーちゃんだけだよね、しかも初級回復…最初に覚える回復魔法だぞ」
「な、確かにそうだけど…!そうだレッドスレイヤー!あなたリザリアと契約してるってことはその下の精霊“キャトン”も契約してるってことでしょ」
「してるな当然」
「なら今から契約させて!精霊が無理なら魔獣でも!」
「いや、出すのは簡単だけどいいの?契約にはそれなりの魔力と依り代が必要なんだけど」
「それなら問題ないわ、私魔法適性は村一番だからね」
「お姉ちゃんは村に攻撃系統の契約者がいなかったから魔法が唯一使えなかったの」
「ちょっ、それは言わないで!い、今の聞かなかったことに!」
それを聞いて少し納得した。どうして妹の方に適性があり、姉の方に適性が無いのか、ようやく判明した。
普通は兄弟姉妹で使えた場合、もう片方も微弱ではあるが魔力を持てる法則がある。
だが自身の魔力に噛み合わない者と契約は不可能だ。
しかし村に攻魔精霊が1匹もいないって、どんな田舎だよ。
「…わかった、今から4匹の召喚する4匹なら1匹くらい相性がいい精霊もいるはずだからね」
「4!ありがとうレッドスレイヤー」
リリアは満面の笑みでこちらを見る。
「ん、それじゃあいくぞ」
俺は地面をなぞるように指を動かし始める。彼女達は何をやっているのかと、不思議そうにこちらを見ている。
すると突然ガントレットが光だし地面に魔法陣を描いていった。
「ふー、…我汝に命令す、この魔力尽きるまで共に戦う力になれ、この命尽きるまでの忠誠を見せよ!今ここに現れたまえ!精霊召喚!」
リリア「いよいよレッドスレイヤーの名乗る部分が無くなってしまったわね」
ルー「次はお姉ちゃんメインだしどうすんだろう?」
レッドスレイヤー「自己紹介すら出来ない俺って一体…」