Connect いつか二人で
「ユーリ君にもできないことがあると安心するねー」
「失礼だとは思いますけど、わたしも同感です」
セラとレアに苦笑されるが、仕方ないだろう。三度の人生通して一度も社交ダンスどころかフォークダンスすらやった経験がないのだから、ぎこちない盆踊りみたいにもなる。
タップダンスとかブレイクダンスならできるのかも……というか、本当に必要かこの技能?
「卒業パーティーで踊る機会があるからね。一年の頃から気合い入れてた子も結構いたよ。ユメとミアは習うまでもなくできたけど。あ、セラちゃんとレアちゃんもだね」
眼の前の姉さんから容赦のない宣告。現在進行形でパートナーを務めてくれているが、姉さんも踊れたのか。知らなかった。
そう言えば、転移ちょっと前くらいにダンスが必修科目になるみたいな話をしていたような。それってこういうのも含まれてたのかな。
「……もっとこう、頭を使う方の時間が足りてないかと思ってたのに」
「そう? 魔法理論とかはユーくんは学院のレベルに収まらないんじゃない?」
そう言えば、十二から十五歳ってそもそも中学生の年代だな。微分積分とか数学知識が必要になる年齢じゃないのか。むしろこういう素養の方が重要か。
そもそもこの世界だと二次関数すら必要だと思われてるかわからないし、立てる予定の方向性が間違ってたのかな。
「でも、わたしとしてはユーリくんには頑張って欲しいです」
「だよねー、レアとしては」
レアは真剣だが、セラはからかうような顔をしている。なんだろうな。できないことがあると幻滅するか?
「ユーくんも、レアちゃんと踊ってみたいとか思うでしょ?」
「ああ、なるほど」
そういう理由か。ならオレも気合を入れないとな。レアに恥をかかせられないし。
それに、魔法のことばっかり考えてても芸がない。ダンスの一つや二つ踊れるくらいの余裕はあっていいんだろう。
「うーん。身体能力もあるはずだしリズムもおかしくないんだけど、なんか合わないね? なんでだろ」
……余裕があっていいだろうっていうか、魔法以外もできるようになりたいなほんとに。
先は長そうだが。