Offstage 彼女たちの戦い
「ユーリ君が拐われた!?」
レヴの登場で唖然としていた彼女たちは、セラの絶叫で正気に戻る。
止めてしまっていた攻撃を再開。それでも、意識は二つに割かれる。
「さ、拐われたって。そういう感じでもなかったですよね?」
「な、なんだったのでしょう、あの方は?」
「水精霊が驚いてたけど。詳細は話してくれない。なんで?」
「ソレよりユーリさん無事なのカナ!?」
「だ、大丈夫だよ、ユーくんなら」
焦ったミアが微妙に口を滑らせるが、アイリスもそれ以上に混乱していて気づくことはない。
そんな中、アカネだけは冷静に知識の中の点を線で繋げていた。情報量で言えばミアのほうが多かったはずではあるが、ここは経験の差かもしれない。
(聞き間違いじゃなければ、ユーリさん彼女のことを“レヴ”って。無限色の翼の話を聞いたときに、“女皇龍レヴァティーン”って言ってたような……)
見事な正解であるが、それで安心できるかと言えばそんなわけもない。いや、どんな危険な状況であっても一番安全なのはユーリだということはわかってはいるのだが。
「ともかく、ここはわたくしたちの担当です! 続けましょう!」
ユメがリーダーシップを取り、七人は意識と戦線を立て直す。
とは言え、最前で最強の切り捨て隊長をやっていたユーリがいなくなったのは痛手というレベルではない。負担がすべてセラにかかるわけではないが、感覚的には倍以上にはなる。
「キッツー! ユーリ君が抜けただけでこれ!?」
「アタシも前に出るカラ!」
「わたしも行くよ!」
「加勢します!」
ミアとアイリスとアカネがセラのそばに滑り込む。そのまま周囲の魔物に攻撃。血のナイフを辺りにバラ撒き、ウォーターカッターで切り裂き、火をまとった拳と蹴りで叩き潰す。
「わたくしたちも援護を!」
「はい!」
「当然!」
ユメとレアとティアも戦線を押し上げ、水魔法の援護を強める。
それとほぼ同時。前線の方から波のように魔物が押し戻され、ハウンドやゴブリンといった小型の魔物が宙を舞い降り注ぐ。
「なんか飛ばされてきた!?」
「ユーくんの魔力斬? でも、規模が……」
「アハハ、さっすがユーリさん。まだまだ隠し事は多いネ」
「本当に、私たちも強くならないと」
前線の四人もさらに魔法の出力を上げる。突き、切り裂き、串刺しにし、蹴り飛ばす。
間髪置かず、前方からまた波が来た。
「って、また飛んでギャー!?」
セラが悲鳴を上げる。今度は、原型を留めていない肉片や血糊や言葉にしたくもないものが細切れになって降り注いでくる。防壁に阻まれて直撃は免れたが。
もちろん、レヴの力まかせの攻撃の余波である。
さらに、突然の魔力の奔流。まずは四属性それぞれの魔法。ただし、威力はかなりのもの。それが連発。
その行使も唐突に止み、少しの時間を置いて突き刺さるような魔法の連撃が始まる。
「ははっ、ユーリ君でしょあれ。ホント、やってくれるよ」
「風魔法使い、もっと見直されても良さそうなのにネ」
「本当ですね」
「……うん」
悲喜それぞれみんな笑っているが、アイリスだけは素直に頷くことはできなかった。
少し前から、胸に刺さった棘が大きくなり続けている。
「アイちゃん?」
「え? あはは、ユーくんすごいよね。わたしも頑張らなくちゃ」
それでも、今は強引に無視する。感傷に囚われていていい場ではないのだから。
「いえ、アイリスさんも十分すごいと思いますけど……」
「そうですよー」
「ホントホント」
「ありがと、みんな」
四人は微妙な空気を漂わせながら魔物への追撃を続けていたが、いきなりありえないほどの魔力が圧縮され始める。
『この声が聞こえていたら全力で防壁を張れ! 余力があるなら周りも守れ!』
魔物の叫び声を吹き飛ばすように聞こえた声。アカネを除きその魔法には覚えがある。
「これ、あの時の。ユーリくんですよね?」
「とか気にしてる場合じゃないよレア!? この魔力量ヤバすぎ!」
「ユーくん……わかった。みんなちゃんと守るからね! それくらいは!」
「魔法使いの皆さん、お願いします!」
「水精霊! 周囲の冒険者も! できる限り守って!」
「血の盾! 数は目一杯! モットモット!」
「近接職の皆さんも近くの人と一塊に! 可能なら共同で防御を!」
彼女たちが全方位に叫び、聞こえた全員が言われた通りに防壁を展開し防御姿勢を取る。
直後、周辺が閃光と爆風の中に消えた。




