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風魔法使いの転生無双  作者: Syun
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第二十二章 再び、道中

 魔物と魔族に特に関係はない。

 しかし、シムラクルムの領域に強力な魔物が出るのもまた事実である。それが土地柄なのかそこに住む者故なのか。

 ……まあ、魔族の魔力が影響を与えているのなら、街の中に魔物が湧いて出るだろうからありえないな。


「ちょっと襲われすぎじゃない!? ユーリ君、実は誘引使ってるんじゃ!?」

「冤罪」

「返答が雑!」


 もう二桁は襲撃があったか。オレだってここまで襲われるとは思っていなかった。駅馬車が停止されていた理由はこれもあったのかな。

 根本の原因はなんだろう。街道周辺の魔物の駆除が行き届いていないのか。もしくは、八人分の魔力を垂れ流しにし過ぎなのだろうか。それとも隠蔽を解除してもっと威圧した方がいいのか。


「とりあえず、しばらく魔力を隠蔽して様子を見るか」


 魔力隠蔽の領域を、全員が入っても余るくらいまで広げる。


「ユーリくんが言う度にいつも思いますけど、魔力の隠蔽ってどうやってるんですか?」


 今更気づかされたが、やってることは明言しても手法を説明したことはなかった。聞かれる前に話しておくべきことは多いな。


「基本的には魔法防壁だな。その出力を周辺の環境魔力と同程度まで抑えるだけだ」

「濃度変化もあるから完全に一致させるのは難しいけどね」


 今はやや広範囲に展開しているが、いつもはごく周囲までのサイズに抑えている。状況によって一般人程度まで上げたり、という感じだ。


「案外簡単だったんだ」

「ただ、やりすぎると変な奴に絡まれ……だからか」


 魔力的な存在感を失うから、初対面の相手からは雑魚みたいに見えてるのか、オレは。


「どうかしましたか、ユリフィアスさん?」

「いえ。オレって、初めての相手には幽霊みたいに見えてるのかな、と」

「こんな存在感のある幽霊はいない」


 ユメさんに返答したら即座にティアさんに否定されてしまった。


「あはは、幽霊って……」

「それはネー」


 アカネちゃんとミアさんにも苦笑されるが、


「なるほどね。複合防壁で物理的な存在感と魔力的な存在感を消してたらたしかに、注視しないとわからないのかも」


 姉さんだけは肯定してくれた。


「そういえば、これまで何度かユーリくんがそばにいても気づかなかったことがありましたね」

「んん? ああ、あったね。ジャイアントトードの時とか的当ての時とか」


 思い出すと何度か驚かれた覚えがあるな。存在感がないからかと疑ったが、そういうことだったのか。これも今更ながらに解を得てしまった。


「つまり。ユリフィアスに後ろに立たれると。死ぬ」

「何かの怪談ですかオレは」


 この世界にメリーさんはいるのか? 聞いた覚えがないぞ。


「とか言いながら、ユーリ君が本気になったらそうなりそうな気がするなぁ」

「ウーン。否定できない、カナァ」

「まさか……いえいえ」


 セラの怖い予測にミアさんも何故か同意し、アカネちゃんが否定、しきれていない。片や記憶を覗いた者。片や某昏倒事件を知る者。仕方ないのか。


「……でも、今なら絶対に見つける自信があります」


 そんな中、レアが独り言のように呟く。って、実際独り言か。

 なんだかよくわからないがすごい自信だ。魔力探知の精度が上がったって話かな。


「で。襲われなくなったネ」

「そう言えば。隠蔽のせい?」


 それは感じていた。魔力探知に引っかかる反応がほとんど移動しない。


「オレたちが放つ魔力がいい感じに誘引材料になってたのか」

「え、それってヤバくない?」


 ヤバいな。このままどこかの街に滞在したらとんでもない事になるかもしれない。


「魔力隠蔽を覚えるしかないね」

「今、この場でですか」

「わたくしたちの魔力が原因なら、必要でしょうね」

「それが無理なら強制的に魔力を増やすか減らすか」

「ユリフィアスの提案する手段。聞くまでもなく拒否すべき」


 というわけで、偶然からこんな所で魔力隠蔽の修行が始まったのだった。



「なんとか街につけました……」

「精神的疲労が半端じゃない……」

「無詠唱やウォーターカッターの修練がなければ無理だったでしょうね……」

「今思えば。水精霊に頼めばよかった……」

「でも今後使う機会もいっぱいあるよネ、たぶん……」


 魔法使いたちは這々の体である。さざ波のように変化を繰り返す基準に感覚だけで分量を合わせ続けるようなものだから、精神がガリガリ削られるのはわかる。

 さらに、アカネちゃんはその倍は疲れていた。


「私は魔力探知からでしたから余計に……」


 その分ユーリさんと話せましたけど、という呟きも自嘲に聞こえてしまうほどだ。

 それでも、みんなよくやったと思う。


「ていうか、私達に教えながらとかそれが終わったら周りを飛び回って魔物の処理してたユーリ君が異常なんだって!」

「だって暇だったし」

「今の言葉でセラに全面的に同意することにします……」


 隠蔽が成功してるかどうかは結局魔物の動向を見ないとわからないのもあるし、当然の行動だろう。

 まあ、空間圧縮してあるコレだって無駄にはならないしな。


「宿を取ったら、オレと姉さんでギルドに行ってくるよ。クエスト処理と売却をしてくる」

「みんなはゆっくり休んでて。今なら魔力放出量が少ないから精密な隠蔽は必要ないだろうし」

「「「「「「そうします……」」」」」」


 念の為に魔力探知を展開していたが、宿に引っ込んだみんなは夕食の時間まで微動だにしていなかった。

 その夕食の代金は主にオレが狩り続けた魔物を売った金から出たのだが。それでも有り余ったのは皆には言うまでもないかな。

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