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風魔法使いの転生無双  作者: Syun
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Offstage 魔法使い達の苦難と風魔法使いの自由さと苦慮と

 本来、火と炎なんて概念上の違いくらいしかなさそうなものだが、この世界の魔法においては明確に別個の存在だ。火魔法使いが死ぬ気で打った魔法を、鼻歌交じりで起こせるくらいに。

 だからこそ逆にフレイアは困っている面もあるわけで。この世界では全く役に立たない例えとしては、ヒグマを駆除するのにミサイルを持ち出してくるハンターがいないようなもの、とかか。いや、日本で使えるかはともかく、手榴弾くらいなら使いたい人は居るかな。

 その辺りはフレイアの算段次第というか、レヴと同じジャンルになったのかもな。対軍魔法士としては最強の部類だろうが、対軍戦闘がないなら宝の持ち腐れってレベルですらない。スタンピードが起こった時だけ呼び出されるのも、それはそれで微妙な扱いだろうし。

 それとはベクトルが違うが、検証の為に王都の外に出てきたオレ達、というかセラも絶賛困っていたりする。



「熱って、どう使うべきかなぁ……」



 まあ、気持ちはわかる。そもそも、あんまり直接意識しないからな。暑いとか寒いとか不快な温度をうざったく思うくらいで、適温や常温ですら熱があるとか考えて生きてない。オレも、自分で扱わないし扱えないものに対して深く考えても仕方ないというスタンスではあるし。

 しかしそもそもこの世界、魔法が根底となっている割にはその魔法自体の解明が緩い気がする。進化属性については、覚醒者が少ない上に申告しなければわからないにしても、あまりにも不明瞭すぎる。属性と発現した人物の記録が大まかに残っているくらいだ。

 最初の世界だと世界の解明が科学の発達と同期していた面もあったようだから、もう数十か数百年すれば変わるのだろうか。あるいは、戦争が科学を発展させたと言われるようなことが起これば。それだけはさせてやれないとしても。


「とりあえずは、火を作って温度を上げるとかだろうな。あとは、ゴーレムを倒した時にレアとやったのを一人でやるとか、生物系の魔物を低温や高温で鈍らせるとか」

「そっか、そういうのもあるのか」

「わたしの作った水を凍らせることもできますよね?」

「それもできる。けど、氷になると二人共から制御が離れるな。いや、表面だけ凍らせるとかすればレアが内側の水で操れるかな」


 細かい行使はそれなりの慣れが必要そうだ。しかしそれも、不定形である火の扱いから得るものが多いと思う。

 熱か。考えたこともなかったからな。どんな使い方があるのか。


「とりあえず、火の温度を上げるのやってみようかな」


 そう前置きして、セラは魔法を使い始める。

 火の温度。あー、具体的な温度は覚えてないな。赤より青の方が高温だってことくらいか。でも、フレイアの炎も基本は赤だし、ネレの炉の中の火も赤だったような。いや、鍛冶の炎は炎色反応の要素が強いのかもしれない。

 じゃあ逆に、魔法なら凍える炎なんてのも作れるんだろうか。燃える氷、は違うな。


「んー……よくわかんないなあ。温度上がってるのかなこれ? たしかに火だけよりは暑くなってる気はするけど。上がってるとしてどのくらい?」


 たしかにわからないな。よくよく思えば、青い炎もむしろ燃焼効率の問題が大きいのか?


「こっちも試してみますか?」

「やってみよっか」


 レアが出したウォーターボール。その表面が少しずつ凍っていく。


「これはわかりやすいね」

「ええ。だんだん扱いにくくなってきてます」

「じゃあ、扱える限界まで凍らせてみるよ」

「わかりました」


 まだまだ模索の必要はあるな。さすがに、人間電子レンジとか人間冷蔵庫とか提案する気はないし。

 それもまた、一つの生きる道ではあるけどな。


「上昇の方は、付加した火の温度を上げて剣を溶かしてみればわかるか」


 空間収納から数打ちを取り出す。どうせ、射出用とか何かあった時の貸与とか、ほぼ使い捨てとして用意しておいたものだ。惜しくもない。


「いいのこれ?」

「実験用としては安いほうだろ。融けたら後で別の物に作り変えるさ」

「サラッと変なこと言うし……」


 まあ、矢とか槍くらいだろうか。あとは、弾丸かな。そのまま何かに撃ち込んでもいいし。

 しかし、魔法に魔法を重ねる、ね。オレは普通にやってたし今もやってるが、一般的なものだと大杖が似てるのか。魔法を宝石に押し込むわけだから、その発想で、


「……ん?」


 なんかこの発想、何かに似てるし応用できるような。

 魔法でもなくて、宝石でもなくて。

 今まで使ったことのない。それでも考えたことのある何か。

 えーと。魔法じゃなくて。魔力を? 重ねて?


「ああ」


 そうか。魔力結晶の空気錬金。

 本来は弾丸として使うつもりでいたけど、大気中の魔力だと容量が足りないんじゃないかとふと思ったり、疑似精霊魔法とかリターニングダガーを使うことを考えてて完全に頭と選択肢から放り出されてたな。

 自然に漂う魔力元素が足りないなら、無駄に余ってる自分の魔力を使ってやってみるか。

 完全停滞で空間を固定。内側に複合防壁を展開。形状はまあどうでもいいとして……いや、クリスタルっぽい形にでもするか。

 まずは魔弾を突っ込んでみよう。防壁内で連射してと。


「うーん……」


 なんかそれほど効率が良くないな。魔弾も単純に魔力だけではなく撃ち出すときに変質しているのか、バーストや射出実験の時のように周囲の術式に溶けているのか。

 魔力をそのまま放出するとオレ自体から出てしまう。カマクラみたいな方式にして砕いて出てくることもできるだろうけど。いや、無理かな。圧死するかもしれないし。

 だとすれば、魔弾を射出せずひたすら威力を上げる。これならただの魔力の塊に過ぎないから、条件としては合うはず。

 魔弾が膨らみ、防壁と接触。微妙に溶融してるな。でも、完全には混じっていない。このままひたすら魔力を込め続けて、適宜防壁の修正もして、圧縮を進めていく。いや、濃縮かこれ?

 ともすれば爆発するかもしれない作業だ。魔物に謝らないとな。ここまでして魔力結晶を作ってるのか。


「ユーリさーん? 人が苦心してるうちになにをやらかしておられるのでー?」

「魔力の動きを見ると……まさか」


 レアは気づいたみたいだな。

 まあ、これだって理論や推測上できるはずってだけの話で、成功するとも限らない。現時点でも明らかに一般的なサイズの魔力結晶が内在する以上の魔力を注いでるし。

 無理か? いや。


「ちょっと本気で行ってみるか」

「え?」

「はい?」


 軽く跳んで二人から距離を取る。

 指先で注ぐ感じにしていた魔力を、両手で包み込むような姿勢で。漏出していく魔力を別方向からバーストで誘導。これで、効率はともかくとして瞬間的な使用魔力自体は数倍になった。

 魔力の隠蔽を緩める。漏出する魔力をさらに増やしてそいつもバーストで。注ぎ込む魔力も、倍々にするくらいの勢いで。



 ……さて、どうなる?



 そう思った瞬間、ビキ、バキ、と硬い物にヒビが入るような音がする。

 魔弾の中央。米粒ほどのサイズだが、魔力結晶が出来上がってきている。

 理論が証明されたな。ただ、効率が悪いのは気になる。魔力結晶を持つ魔物と持たない魔物の違いもこの辺りにあるのだろうか。すぐにできないという事は、個体はもちろん、個々の持つ魔力の中にも結晶化しやすいものとそうでないものがあるということなのか?

 手のひらに乗るくらいのサイズになったところで、魔力の供給を止める。一般的なサイズは大体こんなものだろう。指でつまんで二人のところへ戻る。


「……できたね」

「……できましたね」

「できたなぁ」


 感無量、でもないな。オレは仮説の証明が成ったくらいの感想。対して二人からは、「またやっちゃったよこの人」みたいな声が聞こえる気がする。


「最近忘れてたねー、この感覚」

「思えば、わたしの身代わりを作った時もとんでもない事をしてたんですよね」


 とんでもないか。たしかに、要らない技術ではあるかもしれない。いや、転生前に皿を売ってたみたいに、ビスクドールみたいなのを作って売るとかできるのか。ネレに教えよう。


「ほんと、ユーリ君には驚かされてばっかり」

「そうですね。一度くらいは驚かせてみたいです」


 なんだか、お化け屋敷や絶叫マシンの話をしているように聞こえるのは気のせいだろうか。ド肝を抜きたいみたいな意味だというのはわかるのだが。


「オレだって二人には驚かされてるぞ。レアが魔力斬を使ったりとか」

「ナニィ!? レアそんなことしたの!?」

「はい」


 心底驚くセラに対して、珍しくレアが満足そうに胸を張っている。まあ実際あれはかなり驚かされたからな。


「そっか。なら次の課題は魔力斬か。で、私は?」

「……」

「なんか言ってよ!?」


 そんな悲痛な怒った顔しなくても、ちょっと考え込んだだけだって。


「いや、セラには大げさに驚かれることが多い気がして。ああそう、ケルベロスとやった時はうまい魔法の使い方をしてるなと思ったぞ。属性のことがあるにしても、魔法剣もサマになってるし」

「いきなり褒められるこの落差よ。心臓に悪い」


 飴と鞭みたいだってことか? そんな気はないんだが。

 魔法使いの成長ってわかりにくいからな。大魔法を使えるのが一つの目安なのだとしても、そんなものどうあっても目安でしかないわけで。世界を滅ぼすような魔法を使えたとしても、準備している間に初級魔法でトドメを刺されたら話にならない。現実はターン制バトルでもないし。

 まあ、何より無詠唱を教えたことで魔法の使い方が変わってしまったのもあるのかもしれない。それと考えられるのは、やっぱりオレが過保護すぎることか。


「……あんまり冒険させてやれないからな。取り返しのつかないことが多すぎるから。それはオレもどこかで覚悟はしないといけないのかもな」

「なんのこと?」

「軽く言えば怪我をする覚悟、重く言うと死ぬ覚悟、ですかね。以前も聞いたような」


 レアの顔が神妙になるのを見て、セラの表情も変わる。

 死ぬ覚悟とまではいかないけど、大怪我する危険は最低限覚悟しないといけないだろうな、それがいつになるかはともかく。あとは、オレがそれを許容範囲に入れられるか。

 今さらではあるけどな。姉さんなんて、ここ二年はほとんどオレの目の届かないところにいたんだし。命の取り合いも経験済みのようだし。平穏な日常の中に死が一切ないわけでもなし。

 難しいな。どこまでが保護でどこからどこまでが過保護でどこからがエゴなのか。いや、全部がエゴではあるんだろうが。このまま全て放り出すことになる可能性だってあるんだろうし。

 増長させても停滞させても叩き折ってもいけない。ホントに難しいな、人を育てるのって。オレ自身がマトモな育成者かもわからないし。


「微妙な問題だね」

「ですね」

「ほんとにな」


 いい加減、その辺り諸々の折り合いはさっさとつけないといけないな、オレは。

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