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風魔法使いの転生無双  作者: Syun
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Material ある夜の談話~魔鳥の話から

 これはオレがまだユーリ・クアドリだったころの話。

 メンタルケアって言うと過言があるけど、できる限りララとの時間は持つようにしていた。別に聖国に戻らなくても出先で会うこともできたし……と言うより、広域情報伝達の遅いこの世界でも聖女の居場所は一目瞭然即時拡散だったからな。

 それでなにをしてるのかって言うと、情報交換ならまだ日記なんかに残せる方で、「友達の部屋に暇つぶしに来た」みたいなのが多かったんだけどさ。

 これはそんな中のとある一日。この世界に来て間もないころの話だ。



「そういえばこの世界、陸地中水中の魔物はいるけど空の魔物はいないな」

「空の魔物ですか」


 こうして「ふと思いついたことを口にする」っていうのは、この世界のことに無知な俺の諸々の疑問解消としてお約束になっていた。なので、特に話として脈絡がなくてもララも別に嫌な顔はしない。

 で、今回の話で言うと海の魔物もまだ見たことがないんだけども。海の話をすると異常者みたいな目で見られるんだよな。そんなこんなでどうにも海岸線に足が向かないのだ。禁忌地区これすなわち危険地帯なわけで。って、魔物領域やダンジョンも危険地帯だけど。


「山岳地帯に行けばいますよ? ですけどたしかに他と比べれば少ないですね」

「へー、そうなのか」


 いるにはいるのか。なら一度その山岳地帯も行ってみないとな。

 ドラゴンの住んでるっていう山にもいるんだろうか? もしそうなら一度で用事を済ませられそうだ。


「……存外好戦的ですよね、悠理。騒動のときは喜んでいるようには見えませんでしたけど、そっちが素ですか?」


 ん? なにその呆れた目?

 好戦的? あ、クエストとか興味本位で狩りに行くと思われたのか。


「いや、純粋に興味があるから見たいだけだって。デカい鳥はいたけどほとんどが飛べなかったからさ。人より大きいともう無理だったな。大昔はもっとでかい飛行生物もいたけど滑空しかできなかったらしいし、どんな感じなのか気になる」

「はあ。そうですか」


 なんか呆れられたままだな。「そんなことしてる暇があるならもっとかまってください」って顔……に見えるってだけで気のせいだよなきっと。気持ち悪いヤツの思考だ。

 しかし、自分で言っておいてなんだけど鳥の化け物ってなんだろう? パッと浮かんだコカトリスとかは鶏系統だから、ケツァルコアトルとかそっち系か? フェニックスとか? 鳥じゃないけどグリフォンとかキマイラも個体によっては飛べるんだろうか?

 あとはコウモリとか? いやそれは野外にそうそういるものでもないのか。合成獣系もそうだけど。


「しかし、空の魔物がいないなら空路が発達してそうなもんだけどなぁ」

「空の道ですか?」


 現状のこの世界でも問題なく作れそうなのは気球、は移動手段としては弱い。飛行船とかか。


「球状ないし楕円球形にした布を膨らませて、その下にゴンドラをつけるだろ? 推進力はプロペラだったけど……この世界だと風魔法が使えるな。なら好きに飛び回れる」

「……風魔法ですか。さほど重要視されていないから無理でしょうね」


 重要視されてない?


「風害はあるだろ? 突風で建物が壊れたりとか、台風はわからんけど竜巻とか。魔法で抑えるなり起こすなり」

風殺石ふうせつせきというものがあります。一定以上の風を無害化してくれる魔道具です。一般的なものですよ」


 マジか。「街中だとなんか風魔法の阻害要因があるな?」と思ってたけどそれか。

 風は時にあらゆるものをなぎ倒す力になるけど、実感が無いってことなんだろうか。もしくは百害あって一利なしと思われてるとか。

 そう言えば阻害されてるのって風だけじゃないな。


「他の属性にもそういうのってあるのか?」

「ええ。火災除けの火抑符かよくふ。水害対策の水散珠すいさんじゅ。地滑り止めの土抗柱どこうちゅうですね」


 そうか。四属性それぞれ抑える手法はあるのか。さすがは魔法世界、科学にできないこともやってのけられるわけだ。

 その上で風魔法が追求されてない。それもまた意味不明ではあるけど、ともかく空気推進は完全に未知ではないかもしれないけど検討の外と。たとえ帆船の基礎があったとしても、自在に風を受けさせられるような魔法使いがいないと。魔道具でやるにしても電源として魔力結晶が必要になるのか。

 もったいないなあ。抑える方向にコントロールできるのなら安全装置になるわけだし、やれることはいくらでもありそうなのに。それこそ空を……いや?


「もしかして、空の魔物は飛行に魔法を使ってるからその魔道具で追っ払えてるのかもしれないのか?」


 コウノトリとかアホウドリが空を飛べる鳥の最大だっけ? 物理学上の制約を超えるのなら、ファンタジーの要因が必要になるわけで。


「ああ、なるほど。ありえますね」

「つーことは、特に対策もせずに魔法で空を飛ぼうとすると、落ちるか?」

「でしょうね」

「マジかー。道理で高所の上りはともかく下りが面倒だと思った。風で減速できないんだもんな」


 物事は功罪両面あるわけだな。

 逆に防壁をエアバッグ替わりにできるのも変な気がするけども。

 そんなことを納得というか感心というかしていたら、またララに呆れたような怖がっているような顔をされ。


「……あの。それって、悠理が助けてくれた、モラーレたちとやり合うときの前の」


 そこまで含むので、頷く。あのときはなんとか防壁に切り替えてことなきを得たんだったな。


「……まさか、あれが最大の危機だったとは思いませんでした」

「……あー。すまん」


 たしかに今思えば最大の危機だ。墜落死するほどではなかっただろうにしても、足は折れただろうし。


「はあ……助かったのだからいいんですけど。いまさら言っても仕方ないですし」


 今度は裏なんてなく心底から頭の痛そうな顔に、申し訳なくなってしまった。



 ちなみに、この頃できた魔法の一つが魔力隠蔽である。時系列的に言えばリーズがだいぶ前から使ってたわけだけども。

 実際に隠密行動にも適していたので、なんだかんだこの世界の人も魔力感知みたいな能力を持っているのだろうと推測したり、元の世界で“気配”って言われてたものも魔力とよく似たなにがしかだった可能性もあるのかなと思ったりしたわけだ。

 でも。

 それを聖女の部屋に忍び込むために使ってたとなったら、聖騎士団と聖導士団の意地と威信にかけてユーリ・クアドリを抹殺しに来ること間違いなしだったろう。なので、身内だけの笑い話として残しておくことにしよう。

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