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風魔法使いの転生無双  作者: Syun
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第七十六章 歩きますか? 飛んでもらいますか? 走らせますか?

「ところでさ。ティアちゃんちに誰が行くの? 居残りは?」


 クースルーさん宅訪問のためにとりあえずの日程のすり合わせとかを考えようとしていたところで、フレイアが言った。

 誰が行くか、ね。たしかに全員は結構な大所帯だな。でも。


「人員の面なら全員で行く気ではいたぞ、オレは」

「え……?」


 即座に反応したのはリーズ。当然というか、まあそうだろうなって気はする。

 でもな。


「誰かを仲間外れとかにする気はない……ってのはみんなに言ったわけではないけど、例外を作る気はないからな。そもそも、オレと出会ってネレのところに身を寄せるまでは普通に世界を転々としてただろリーズも?」

「そう……ですね……はい」


 オレがいない間もリーフェットや帝都の馴染みの店に顔出しもしてたらしいし、引きこもりってわけでもないだろう。けど、本当に嫌なら無理に連れ出す気はない。それでもまあ、こうなって初めての遠出ではあるんだからみんなで旅行として楽しみたいところもあり。

 というのを言うとそれこそ無理やりになるのかな、なんて思っていたら。


「……海にはコレまでに見たコトのない魔道具の材料があったりして、トカ?」


 ミアがポソリと言った言葉で、リーズがピクリと反応した。なるほどそっち方面から攻めるのが良かったのかー。勉強になります。

 実際、海の魔物素材は絶無ではないだろうけど珍品だろうな。単純な素材もか。それこそ黒真珠とかも手に入れられる可能性は無きにしもあらず。


「それでは、行きたくない方は挙手を」


 ララがみんなを見渡しながら聞くと、手は上がらなかった。これで全員参加と見て良さそうだな。

 しかし。


「でも、十人以上だよね? どうやって移動するの?」


 次なる問題をセラが挙げる。

 次なる問題じゃなくて、一番目か二番目に大きい問題だよな。先送りにして解決を待つなら十年単位の時間が必要になるような。

 そのころはもっと問題が大きくなってるのか? ってこれは気が早すぎ頭沸きすぎですね。


「十四人……乗合馬車でも一台では収まらないですね。以前より多いわけですし。サラさんたちもさすがに窮屈に思うでしょうか」


 ユメも困った顔をする。サラたちはどう思ってるだろうな、と思ってエルとティアを見るとそれぞれ苦笑とうなずきだった。

 夏季休暇のときでもギッチギチだったからな。イヤな顔されたのはそのせいも……いやそれは無いな嫉妬だけだきっと。そしてそれがおそらく今回においても。最大の問題だというのもまた置いておく。


「わたしがドラゴンに戻って飛べばいいんじゃないの?」

「それが確実だよね」


 レヴとエルはそれでもいいらしいが、オレの思い描いてたのだと、


「せっかくだし、旅らしい旅をしたいと思ったんだけどな。馬車に揺らり揺られ景色を楽しみ。西へ東へ気の赴くまま、ってのは今回は違うけど」


 言うなればそれこそ、電車の旅か飛行機の旅かか。目的地を楽しむなら後者になるのだろうけど、全員で初めてという意味でも道中の満喫もしたいところだ。


「じゃあ、歩く?」

「当然だけど。結構な距離がある。何日かかるか……何日かかったっけ?」

「鍛冶を休むことは大きな問題にはなりませんけど、薬草畑と畑の管理がありますよね。そこについてはのんびりしていられないのでは」

「食料のこともありますよね。レインさんによるとなんでも冷凍しておけばいいってわけでもないそうですし」


 姉さんの言葉にはティアが難色を示す。ネレとアカネも。

 あー。植物はそんなにヤワではないと言っても特殊栽培系だし、なにより生モノ系はなぁ。身重というにはちょっと早いけど、そんな母さんを抱えた父さんに頼むのも悪いし。一日二日か、猶予は。


「ユーリさんの世界みたいに、バスがあればイイんですけどネー」

「バス……ですか……たしかに」


 そうだなあ。地球でも路線無し十数人の旅なら移動手段はバスになるか。

 駅馬車でも最大二馬力ってところだ。大人数長時間高速移動となるとやはり科学の独壇場だな、まだ。もちろん、超長距離列車も線路上の野生動物を轢殺してたんだろうから環境ハードル的にはそこまで変わりはないとも言えるのかもしれないが。ただ、この世界には環境を強引に巻き戻すような自然力もあるわけでどうなることやら。


「二台分くらいのサイズの馬車を作って、身体強化で引っ張るか」

「であれば……ランドサーフィンを大型化するのが……最適解でしょうか……もしくは……そういえばレインさんのメモに……少し失礼します」


 リーズは足早に部屋に向かい、メモ書きを数枚持ってきた。そいつがテーブルの上に広げられる。

 さっき話したバス。やや意味合いが異なるがバイク。それに。


「キャンピングカーか」


 レインさんの趣向として調理と食卓のスペースが大きく取られてるから、むしろ移動式レストランみたいな。これはこれでおもしろい。


「きゃんぴんぐかー。走るテントみたいなものでしょうか?」


 姉の発想に妹が首を傾げている。呼称がたどたどしいのは微笑ましいポイントだな。言葉馴染みがないから当然とは言っても。


「用途は合ってるけど、むしろ動かせる家かな。こういうので暮らしてる人もいたらしい」


 その名のとおり、生活する上で基本的な機能は揃ってたみたいだ。とは言え、オレが思い浮かべてるのは海外のもっと大きなもの。トレーラーハウスだっけ。

 どちらも今回の用途にマッチしてはいるものの、これが爆走するのは道路状況云々を考えれば無理がある。レインさんもいろいろ書いてるしオレも実用化の方法はいくつか思いつくが、運用面でのハードルが高そうだ。

 なにより人目がな。未知のものは常に奇異とは言え。


「この人数だもんね。みんなで乗って寝ることもできるようなのだと、ユーくんの言うとおり家が走ってるような大きさになるよね」

「あったら便利そうではあるけどねぇ。でも家が動くってなると……うーん」


 セラの頭の中の光景はなんとなく予測できる。それだけでちょっとした騒動が起きるのも予想できる。さすがに車輪の付いた家が動くわけではないとはいえ、段階的な発展の公開が必要そうだ。

 ぶっちゃけ、出来さえすれば魔道具の使えるこの世界のほうが簡単便利なはず。リーズの結界を組み込めば、安全性と秘匿性も確保される。将来的には一台あってもいいだろう。いや、欲しい。レインさんのアイデアにはロマンが詰まっている。


「たとえばですけど、ユーリさんやリーズさんが使っている空間圧縮を逆に拡張方向に使うことはできないんですか?」

「できます……というより……それを使っているのが……ネレさんも使っているバッグ……ですね」


 アカネの疑問にはリーズが即答する。

 たしかに、魔道具としてなら拡張方向に持っていくのが正しいやり方か。そもそも圧縮空間に手を突っ込むのは怖いし、人体の発する魔力との干渉で困難になるだろうな。


「うーんと。じゃあ、それを使って中だけ広くするとかも無理ってことです? 前々から思ってたんだけど、そうすれば小さな家にいっぱい住んだりとかもできたりしないのかなって」

「セラさんの案は……理論上は……可能です……この結界のように空間の広さ次第では……内側の生物等の魔力放出はある程度無視できますから……けれど……もしも術式が崩壊した場合……どうなるかを考えると……」

「術式崩壊。エート。ソレって、もしかしてですカ?」

「空間が元に戻るわけですから……その中にわたくしたちがいた場合」

「ぺちゃんと? それは。怖すぎる」

「うーん、危ないね。やめといたほうが良さそう」


 普通の家に普通に住んでたって災害のリスクはある。しかし、全方向からの圧潰の危険性はそうあるわけじゃない。それこそ水中くらいの話か。宇宙空間だと逆だな。

 決して万能でもなく思わぬところで融通が効かないのがこの世界の魔法の特徴というか当然の摂理だけど、リーズもオレも安全第一だから越えられない壁ってのもあるのかもな。それを悪いと思うことはないけどさ。


「むずかしいね。やっぱり今回はわたしが飛ぶのがいいかな?」

「私とレヴでユーリの家から帰ってきたときみたいに人目を避ければ大丈夫じゃない?」

「そうだな。残念だけど、街道での旅は今後の楽しみにするか」



 とは言ったものの、次が来るのが遠いとも限らない。むしろそれを考えておかないと気軽に出かけることもできない。あるいはファンタジーゲーム定番のワープの魔法とかもいつかできたりするのだろうか?

 超高速移動なら今でも可能ではあるからそれを突き詰めるのが、ってこういう話じゃないな。それもまた旅の一形態ではあるのだろうけれど。

 なによりこうやってレヴの背中に乗せてもらって移動するのもまた、この世界でしかありえない旅の究極の形態でもあるんだよな。


「そもそも一番でかい馬車ってどんなもんなんだ?」


 そのあたりを聞くとしたら、当然貴族側のそれも上の方になる。オレたちの中にはそれが数名いるってのは笑い話だろうか。


「……皇族用の大きいのとか想像してる? そんなのあるわけじゃないよ?」

「ハウライト家としても、一般的な四人ほど乗れるものくらいですね。人数に合わせて複数台使うのが基本です」


 セラとユメの言うのは、王都でもよく走っていた貴族様が乗っていたのとさほど変わらないのだろう。

 貴人輸送で言えばそんな大勢乗れる必要は無い。襲撃を考えて重装化すれば重くもなる。一人一台の方に持っていくか。野営する機会はゼロではないとしても、限りなくそれに近いだろうし。

 加えて、リスク分散のような「もしも」の意図もあるかもしれないな。イヤな思考だが、それもまた貴人の責務だ。


「駅馬車より……大きなものは無いのではないでしょうか……馬の限界に……機動力や……視認性の問題もありますから……」

「聖国でも隊列を組むのが普通でしたね。人の乗る馬車と物資輸送用の馬車も分けていました。加えて騎馬や徒歩もいましたね」


 リーズの言う機動力と視認性っていうのは、魔物や野党に目をつけられたときと逃げるときのことかな。

 一台あたりの容量が決まっているのなら、やはりララの言うとおり数を増やすしかない。隊列の場合、言うまでもなく「防衛力を揃えられるのなら」という前提が付くだろうな。

 駅馬車は定員十人くらい。オレたちであれば二台なら余裕で守りきれるのは言うまでもないとしても、そこは一台がロマンというかリアルというか。


「……まずは極端に軽い馬車でも作って市場に流すか?」


 軽量化のクッションを挟めば巨大化しても問題は無いだろう。軽くなれば万一事故ったときの被害も小さくなるし馬の労力も減るし、悪いことではないはずだ。

 しかし……その次は動力源だよな。それこそどかっとレストランカーすら作れるはずなのにこうしていろいろ考えてしまうのは、損な性格なのだろうか?

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