Material 国家と種族についての授業
この世界にはいくつかの国があります。
調律を主軸とするこの国、リブラキシオム王国。個人の力に重きを置くシュベルトクラフト帝国。受け継がれてきた教義を主柱とするプロメッサルーナ聖国。
そういえば、近々聖女様がいらっしゃるそうですね。
話がずれましたが、これらの人族主体の国家に加えて、各種族の獣人コミュニティーが集まったステルラ連合、魔族主体のシムラクルム共和国があり、さらに精霊を隣人とするエルフの国もあると言われています。
これらの国が分かれた理由は種族的なものもあるのでしょうが、その多くは文化的価値観による並立と共存であるとされています。各国家間の国交は百年単位で断絶されてはいないので、いつか他国を訪れてみるのもいいでしょう。知識だけでは得られない発見があるはずですから。
さて、次は国家の主体となっている種族の話に移りましょう。
皆さんの中にも、獣人と呼ばれる方や魔族の方がいらっしゃいます。私は種族的に言うと、えー、どう表現すればいいのかという問題はありますが……この授業では人間という表現にしておきますが、その人間です。人間の中には他の種族を線引きして扱う人もいるようですが、その逆の広範化もまたあるようです。特に、魔族の方は魔物との関連を疑われ不当な扱いを受けることも多いと聞きます。
人は、自分と違うものや未知のものに対して無意識に構えをとってしまうものです。この授業がその構えを崩す助けになると幸いですね。
ところでですね、みなさん。
この種族の違いですが、一体どのように分化したのでしょうか。
答えを言ってしまいますが、未だ謎とされています。それと共に、獣人や魔族と人型に近い魔物……そうですね、狼人族とワーウルフやコボルトですとか、牛人族とミノタウロスですとか、鬼人族とオーガですとか、性質だけで見れば似通った種族がどういった関係にあるのかは全くわかっていません。もちろん、これを両者の類似性として扱うわけではありません。類似する魔物がいないからといって、人間が悪を為さないということなど無いというのは……まあ、皆さんは言うまでもなくご存知でしょうし。
また。「獣人」あるいは「亜人」のような言い方は「人間」を主体としたものですが、生命系統として人間の先に獣人を置くべきなのか、それとも獣人の先に人を置くべきなのか。先ほど挙げたような獣人と魔物の関係性とともにいまだ論争の中です。これは魔族についても同様です。土魔法のゴーレムと魔物としてのゴーレムの違いや、魔物と神獣と精霊の区分などもこのジャンルになるかもしれませんね。
あ、今日の授業はこれまでですね。
この辺りのことは、おそらく考えても答えが出ることはないでしょう。ですので皆さん各々で考え、近くの方と議論を交わしてみてください。それで、できればその結果なんかを私にも教えてもらえると新しい視点が生まれるかもしれませんので、よろしくお願いしますね。