Connect 何度目かの今後の話
「で。とりあえず人間関係は落ち着いたわけだけど、これからどうするの?」
セラが首を傾げたけど、何度目だろうなこの話。いや、実のところいつの間にかダラダラしてるから定期的にやらなきゃいけなくはあるんだが。
ただな。
「人間関係はまだ落ち着いちゃいないだろ。新しく挨拶回りしなきゃいけないところもできたし、依然として残ってるところもある」
「そうですね。お父様とお母様とノゾミに報告しなければいけません」
「ウチもカナー……お母さんがアレだカラ、からかわれソウ」
「というか。いい加減ワタシの家の情報も詳らかにするべきだと思う。え? なにウンディーネ? ワタシが言わなかっただけ? ……そうかも」
ほんとにやることが増えた。人生ってそういうものだけども。
「父上と母上と兄上たちと姉上にもって? ユーリ君が心配すぎるんだけど?」
「やっぱりエーデが無理そー」
「うーんと、うち、というかうちの里? エルフの世界? もだよね?」
精神的にと物理的にとのハードル問題もあるなぁ。エンパイアファミリーとの家族対面時にはいろんなことを覚悟しないと。ほぼ二人分だし、フォルシュリット殿下からの質問攻めを思えば、恋愛でないもののネレの分もありそうだな。
エルのご両親については、ティアのお父さんと話してみれば手がかりがあるかもしれないか。
「誰に何をどの程度話すのかというのもありますね。私の両親とアカネさんのご両親にも悠理の事情の多くは未開示ですし」
「お父さんとお母さんなら大丈夫だと思いますけど、慎重になるべきですもんね」
そこの線引きと踏み込みも変わらずある。
なにより不義理の問題があるとして、備えのこともあるから最終的には打ち明けるべきだろう。そういう括りの外にいるけど自主的に打ち明けたヴァリーとか、推論だけで真実の一端に辿り着いたソフィアさんもいるけども。二人は異界からの侵略者の可能性までは想像しちゃいないだろうけどな。
「お姉様のこともありますよね」
「レインさんもユーくんみたいに信頼できる人が見つかればいいね」
そこもあるなあ。今でさえ奇跡的になんとかなってるとしか言えない。レインさんのことについては積極的に干渉できるところでもなければしていいところでもないだろうから基本オレには無理だけども。
「装備の面では、残るのはララさんとユメさんとリーズさんでしょうか」
「そうですね……わたしの宝石はともかく……ダイヤモンドの合成は……あと一歩です……よね?」
「はい。ユリフィアスさんとセラディアさんとティトリーズさんのおかげで純度は遜色ないところまで来ていると思います」
「ええ。とは言っても、宝石をなにに設えるかという悩みも残っていますけどね」
その辺りもな。
ていうか、備えようとしてる憂いについても来なけりゃ来ないでいいんだが、いつか来るならさっさと来てくれという。変な心持ちだ。
焦っても仕方ないんだけどさ。わかっていてもどうしたものやら。後の世代に押し付けたくもない。それでいて今すぐ現れたら対応しきれるかは自信がなく。
「ユリフィアス。ウンディーネが『また答えの出ないことで悩んでいるのでしょう。ユリフィアスは』って」
「『ユーリの言ってた敵って、そんなにすぐ来るものなの?』ってフィーも」
「……そう聞かれると、すぐに来るとは言えないな」
そもそもどうやって来る? 現実的な宇宙船か、未来的なワープかはたまた超科学として次元トンネルとか。それが実用化されて使えるようになるのは。
「少なくとも百年単位で後になりそうか」
「百年以上? それってひょっとすると、ユーリが気を揉んで唸ってても実は仕方なくない?」
フレイアの言うとおりかもしれない。オレみたいに偶発的な個人の転移ならありえるとしても、敵意を持った大集団がやってくるのは再現性のある方法でないと無理だろう。むしろ非人間型の宇宙人のほうが早かったりして。
「と言いつつ、ユーリ君なら平気で千年くらい生きそうではありますが?」
「ありうる」
いやさすがにそれは無理でしょうよセラさんティアさんや。年齢退行が理論上はそれを可能にするとしても。
「あるいは……こちら側からの干渉……ですか……混沌の目的に……それもあるのだとしたら」
リーズの呟きにハッとさせられる。
人間の魔人化だの魔物の強制進化だのやってる奴らだが、転移者や転生者が絡んでいるならその可能性もあるのか。その意図が破滅の呼び込みか帰還かわからないが。
「あ……いえ……そういう魔法を創るのは今のところ不可能でしょうから……こちらも数百年かかるような話です」
「逆に、数百年後はドッチでもできるってコトですかネ……?」
科学にはまだ発展の余地があったし、魔法はおそらく半分も解明されていない。いつかそんな日が来るのかもしれない。少なくとも短距離転移移動魔法についてはノートに書いたからな。今のところリーズもなにも思いついていないらしいけど。
「では、焦って準備を進める必要まではないということですね。いえ、ララさんとユメさんとリーズさんの装備と風雅のことは急務ではありますけど、それくらいで」
「なのかな。ごめんなみんな無駄に煽り立てて。ヴォルさんたちにも謝っとかないと」
ネレが安堵したのを見て頭を下げると、みんなからも同じような顔や苦笑が帰ってきた。重しになるようなことを軽々に話した責任は大きいな。
ひと息ついたあと、レヴがこてんと首を横に倒した。
「そういえばさ。ユーリはわたしたちがしたいことってよく聞いてくれるけど、逆にユーリがやりたいことってないの?」
「そうですね。基本的にはわたしたちを鍛えるためだったり日常の予定のような細々としたことですし、大目標はユーリくんだけの問題ではありませんし。それとまったく関係ないわがままみたいなものは聞いたことがありませんね」
レアに言われたけど、そうか? いや、やりたいことを聞くのはよくあるっていうか、ここ最近お一人ずつ聞きましたけども。オレも同じことやって……あれ? ない? いやそんなもんオレが、
「『自分が覚えてないだけ』なのであれば、誰かそういうワガママを聞いた方は」
内心を完全に読んだララが聞くと、全員首を横に振った。あれオレワガママ言ったことないの。意外。色欲封じのせいとかかな?
やりたいこと、ねえ。「世界を見る」っていうのは言ったけど、それはエルやレヴの望みでもあるわけだし、今となってはみんなそういう気持ちはあるだろうから共通意識として番外にするとして。
もっと即物的なこと。言うまでもなく煩悩以外で。
衣食住。
一番外側の住はかなり足りてる。これ以上人が増えると建て増しも考えないといけないだろうけど、今は弟か妹のことくらいか。
衣についてはそれぞれこだわりがあるのは見れば分かるし、オレ自身も特には「これが着たい」ってものはない。
残るは食。これもまた十分足りてはいるけども。
「……海産物食うとか?」
レインさんにも言ったけど、達成できてないことの一つって聞かれるとそれだな。
もちろん生態系が日本近海と一緒ってわけはないだろうけども、海獣系の化け物はたぶんいるだろ。サメはあんまり要らんけどイカとかタコとか。昆布あたりもどうにか採取できないものか。
「それなら。ワタシの家は海に近いと思う。今まで行った中でなら」
「そうだね」
ティアの提言をエルが肯定する。
ふむ。だったら次にやることは決まりか?
「ティアのお家にお邪魔するんだね」
「ティアちゃんのお父さんとお母さんダケ会ってないもんネ」
「そうですね。ティアリスさんにはお世話になってきたのですから、いい機会です」
そうか。水精霊の祝福のメンバーにとっても、相互紹介最後の一つだな。
さてそれでは、食材と新たな旅への期待と、ご両親との顔合わせに気合を入れていこうじゃないか。




