Interlude 聖女の死角
「申し訳ありません、ララさん。わたくしもユリフィアスさんのことを好きになってしまいました」
「そうですか、ユメさんも」
頭を下げるユメに、ララは苦笑した。なにを言うのやら、と。
人を好きになることに許可がいるなどと聞いたことがない。
「謝ることではありませんよ。これだけ好きになる人が増えるということは、それだけ悠理が魅力的だということでもあるわけで……いえ、それは人によるでしょうからわかりませんけど。だとしても、私たちが魅力的だと感じているそれを否定する必要はありませんよね」
人から人への好意は、自覚していない当人よりも他人のほうがずっと楽に気づけたりもする。ララ自身もユメの中に好意があるのは気づいていた。レインとメーレリアとリーナのそれは多少やりすぎではあったが、「背中を押す」ことも悪いわけではない。
この場合だと見る人によっては「尻を蹴った」になり、おそらくそっちの感覚のほうが正しいのだろうが。
(それにしても……)
ユメを見ながら、ララは思う。
まとう雰囲気。
優しさをたたえる表情。
やわらかい物腰。
反省や謝罪をしっかり出せる素直さ。
なにより、たしかめるまでもなく自分よりも誰よりもやわらかいはずのどこか。
(かわいいし魅力的すぎます! 十二歳は無論、十五歳の私はここまででは! いえむしろこの世界の誰もッ!)
完全な死角からやって来た刺客。
自身が精神的な早熟と身体の成熟が全く一致していなかっただけに、その両要素を併せ持つ人がいるなどと考えもしなかった。いや、考えたとしてそれが自分と同じ立場とも言える存在であり、しかも同じ関係になるとは思いもよらなかった。
「ユメさんは……強敵ですね」
「え? い、いえわたくしは敵になる気などは。ララさんをないがしろにする気はありませんし。けれど、それでももちろん負ける気ではだめで……」
歯噛みする自分を見ていても怒ったり嘲笑ったりするわけでもなくひたすら焦り戸惑うユメに、ララは愕然とさせられる。
「ふ、やはり強敵です。私も最低限素直にならないとと、そう思ったはずなのに。うふふふ。うふふふふふふ」
「え、ええ……?」
器の大きさ。性格。
光り輝くそれらを目の前にして、ララは自分自身が色を失っていくような錯覚を覚えたのだった。




