Material この世界の魔法属性について
『風魔法は使う価値なし』
どうもそれがこの世界での共通認識らしいので、これについて少し解説しようと思う。
魔法というのは大別すると、“自然魔法”と“非自然魔法“に分けられる。
自然魔法には大分類に火・水・風・土があって、そこから派生して氷や木や金などの特化属性がある。
非自然魔法は主に光・闇・無の三種。光魔法の中でも奇跡に似た高出力なものは聖魔法と呼ばれたり、呪いなんかの効果を発揮するものは邪魔法と分類されたりする。実態はそれとは異なる部分もあるんだが。
邪魔法の類が犯罪にしか使い道がなさそうな感じなので外道扱いされるのはわからないでもない。真偽はともかくこれはとりあえず選外として。闇も悪魔を連想するので微妙なところがあるものの、アングラな人気とか厨二的な感じで一定の需要があるのも事実だったりする。ただし、光と闇自体もある意味で先天性の特化属性な上、後天的に消失したりするのでこの辺は万人がホイホイ手を出せる領域ではない。
無属性魔法は魔力を単純にエネルギーとして使うだけなので、これは属性魔法が上位互換という扱いになっている。
というわけで、魔法を学ぶ人間は火水風土のうちから多属性を習得する人間がほとんどだ。
一番使われているのは水魔法だろう。これは炊事洗濯掃除などの生活魔法として一般人も習得していたりするからだ。
単純に“力”として行使されることが多いのは火魔法だろうか。理由は文字通り火力なのと、単純に「カッコイイから」らしい。確かに、出力面でも見栄えでも派手なのは火魔法かもしれない。
土魔法については、生産職や土木関係なんかにかなりの需要がある。ある意味で安定した生活を送れるのは、強力な土魔法使いだというのが定説になっている。
で、風はというと。
地味。
軽い。
使い道がない。
そんな理由で選ぶ価値がないとされている。まあ、その評価はある意味で正しくはあるから困るといえば困る。空気を圧縮して刃を作るなんて、普通は無理だからな。
科学から見れば魔法は奇跡の近縁だろう。しかし、少なくともこの世界においては奇跡そのものではない。木は燃やせても星は燃やせないし、池を作ることはできても海を作ることはできない。この世界では主流ではない“物理”の法則から大きく逸脱することはできない。
というわけで、風魔法はかなり扱いが悪い。風の、それも特化魔法使いなんて誰がなるんだということになっている。