Material 超金属目録
「そういえば、ファンタジー金属みたいなのって無いのこの世界?」
レインさんが思いついたように言いました。
ファンタジー金属? なんでしょうそれは。そう思ってユーリさんを見ると、苦笑されてしまいました。心外な。
「要は物語とか神話に出てくるような超金属だよ。オレたちの世界だとオリハルコンとかミスリルとかが有名だったな」
「おりはるこん……みすりる……」
「えーとね。オリハルコンは“金の銅”って表現されてたかな。こっちは意味不明だしどうこう説明しようがないけど、ミスリルのほうは“魔法銀”って表現されてたね」
金の銅。たしかによくわからない表現です。金も銅も現実の金属ですし、混ぜても強くはならないですから。
対して、魔法がこもった銀というのはわかりやすいです。しかし。
「魔法銀というのは無いですね」
残念ながらありません。
シルバーゴーレムは存在するらしいので、魔力の籠もった銀自体は存在するでしょう。けれど、魔力強化と同じくというかそれとほぼ同じでゴーレムの構造材は倒してしまうと急激にではないにしても魔力を失ってしまいます。これもまた魔力探知によって知り得たことですが……時折出回る魔物素材としてのそれに価値がないというのは、いつごろ常識になるのでしょうね。
「オレも世界を全部見たとは言い難いですけど、そういうのってだいたい詐欺でしたね。もちろん匠の技みたいなのはちゃんとありましたけど、探知する限り純度や添加物の問題が多かったです」
「通常の金属を超えた材料というのであれば、魔物素材との合金がそれでしょうね。今のところはレヴさんの龍鱗に敵うものはありません」
「あはは。世界にただ一人のドラゴンだものね」
本当に、鍛冶師としてはレヴさんに頭が上がりません。それでも、レヴさんに頼らない合金の配合も試行錯誤を重ね続けています。それを使った販売用も好評なのは私の腕と誇ってもいいですよね。
「まあ、刀の鉄も“玉鋼”って言って特別な配合があるんだったような覚えがあるし、刀匠っていっぱいいたわけだからそれぞれの秘伝なわけで、答えがあることでもないんだろうけどさ。流派としても続いてくかどうかは次世代次第だけどね」
最後。レインさんは私たちを見て微妙な笑顔を見せました。
次世代。
つまり。
「っ!」
「あいた」
思わず、ユーリさんの腕を叩いてしまいました。
私がお父さんの仕事を継いだということは、私とユーリさんの子供が同じように継いでくれるということですよね。いえ、予定も未定ですし確定ではないですか。
と、ともかく。がんばりましょうか、そちらも。ねえ、ユーリさん?




