Interlude 姉妹の夜話
『え? デートとかそういうラブでラブラブなことは?』
ほとんど毎晩している雑談で昨日のことを話したら、お姉様から呆れられてしまいました。
「それはこれからも機会がありますし……なによりまだまだ遠い気がしますから」
『……遠いも近いも無いでしょうに』
そうでしょうか。
たしかにユーリくんはどんなときでも振り向いて待っていてくれると思います。けど、それでは駄目なんです。走って追いついて手を掴まなければ。それくらいじゃないとわたしのほうが前に進めませんから。
『うーん、ユーリくんに関わるとなにかズレてくるのかな……? いや年齢的にはアレだしアレか……?』
アレというのがなにかわかりませんけど、お姉様が真剣に悩んでいるのは伝わってきます。セラが時折出すような雰囲気に近そうですかね。
「こういうことをお聞きするのはどうかとも思うんですけど、お姉様のほうは」
『ヤメロー、レアー、ワタシヲコロスキカー』
悲鳴が返ってきました。
お姉様のお相手を探すのが大変なのはわかっていますけど、ここまでですか。
『くっ、勝者の余裕かっ! ……とまでは言わないけどほんとにねえ。どうしたもんかな』
「ユーリくんは恋愛経験が無かったみたいですけど、お姉様はどうだったんでしょうか」
『あ、そうなの。わたしはまああったっちゃあったけどそんなにガッツリしたものでもないかなー。でもそっか、ユーリくん女性経験ないの。なら当たり前か。こじらせてるわけじゃないのはレアたちにとって救いだけど』
こじらせてる? なにをでしょう?
それに、恋愛経験から言葉が変わってしまっているような。
『ああそっか。ユーリくん身体的にはまだ十三か。だったら早いよね』
ですからなにがでしょう?
いえ、女性経験というからには当然。
『やーまー逆にみんなよく耐えてると感心する方か。耐えきれてない人もいそうだけど』
そういうこと、です、よね?
なるほど。早い。時期が。
「はう……」
即座に目の前がくるくると回りだして、足元がおぼつかなくなって、天井か床かよくわからないものが視界いっぱいになって。
『おーい、レアー? あれー? 大丈夫ー? あ、やばいかな。セラちゃんごめん聞こえる?』
『ほいほい、なんでしょうレインさん』
『ごめん、レア倒れたかも』
『はい!? レア!? うおおお!?』
『……思わぬ反撃になったか、これは』
そんなお姉様とセラのやり取りだけが頭の中に響いたのでした。




