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風魔法使いの転生無双  作者: Syun
(18・19)
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Interlude 遠くに在りて思うこと

 ハウライト家に戻って新しくできた日課。それはノゾミへの魔法の教授でした。

 ノゾミはユリフィアスさんと同じ魔法の使い方を求めましたけど、身体強化や探知はともかく風魔法を真似るのは無理でしょう。わたくしたちのような水魔法か、あのとき見ているはずのセラさんのような火魔法か、お父様やアンナさんのような土魔法か。そのどれかにしておくべきかと思います。

 そもそもユリフィアスさんは疑似精霊魔法エクスターナル・エレメントマジックで万能に見せてはいますけど、本質は戦闘に特化した風魔法使いですし。実際はわたくしたちの倍の人生経験もあるのですからね。


「いつか、ユーリさんと同じくらいの魔法使いが現れるんでしょうか?」

「どうかしら。現状でもユリフィアスさんを負かす方はいらっしゃるけどね」

「……………………、え?」


 ノゾミとしては思いもよらないのでしょうね。と言っても、ちゃんと倒したのはエルブレイズ殿下とララさんですけど。それ以外ではフレイアさんが「殺す気でやれば勝てるかもしれない」と言っていたくらいですか。レヴさんやリーズさんも不可能ではないでしょう。ティアリスさんに言葉でやり込められているのもよく見ますね。

 などと考えるまでもなく、そもそもこちらが本気であればわたくしでもユリフィアスさんには勝てると思います。関係性も考えればどうあっても本気を出そうとは思わないでしょうから。

 力以外ならあるいは、セラディアさんのおっしゃっていたような大人の魅力でしょうかね。色欲を取り戻した今であれば通用するのでしょうし。「傲慢と色欲に溺れた姿なんて見たくない」というアカネさんの嘆きには同意しますけれど。


「え? ユーリさんより強い人が? え?」


 唖然としたまま素振りを続けるノゾミを残し、邸内へ。今度は働いてくれている方たちの子どもたちと遊ぶ時間です。

 本当ならお父様のお手伝いをしているべきなのでしょうけどね。これも誰かがやらなければいけない大切なことです。ときどき、これとお父様のお手伝いとノゾミの相手とでハクヨウさんが三人くらいいるように感じることがありますけれど。


「お待たせ、みんな」

「わー、ユメおねーちゃん」

「いらっしゃーい」

「きょうはなんのおはなし?」


 リブラキシオムの王都から帰ってきてさほど経っていないのですから当然その経験を話す時間になることが多いのですが、最近特に多いのは。


「ねーねーユメおねーちゃん。ユリフィアスおにーちゃんとはどうなったの?」

「ほんとのところはー?」

「そうよ、ユメ。ユリフィアスくんとはどうなったの?」

「えーと……」


 どこかで聞いたような話が多いです。

 というより、お母様までなぜ混ざっていらっしゃるのでしょう。それもそちら側に。いえ、夏にみなさんと帰郷したときも似たようなことは聞かれましたけれどね。


「わたくしは、特には。ユリフィアスさんとは良いお友達ですね」

「えー?」

「うーん?」

「あらそう残念」


 子どもたちもお母様も、そんなにわたくしとユリフィアスさんをくっつけたいのでしょうか。子どもたちにはわたくしたちが物語の登場人物のようなものに見えているのかもしれませんけど。

 多くの方から慕われてもいますし、ユリフィアスさんが魅力的なのはたしかですけど、そこにわたくしも加わるというのはあまり現実味はないです。お互い一人ずつを愛し合うのが当然という感覚ももちろんありませんし、みなさんお互いが思い合っていて、わたくし一人くらい受け入れてくださるというのはよくわかっていますけれど。

 だからか、入浴も就寝の準備も終えてベッドに寝転がりながら毎日のように恋のことについて考えてしまいます。結婚というのも、今は見えないですがすぐ先にある必要なものですからね。


「……長女、ですか」


 言われた言葉がふと頭に浮かびました。

 ノゾミの姉で子どもたちのお姉さん。たしかにここでも長女です。ユリフィアスさんが甘えられる相手になれるのかというのと、自分も甘える立場になりたいというのも。

 もちろんこの屋敷にも歳上の方はいらっしゃいますし、お兄様お姉様とも呼べる年齢の方もいます。けれど、そんな気にはなれないのですよね。

 通信魔道具で聞いたアカネさんのお話。子供のような顔で抱きつき甘える姿。想像するのはちょっと難しいですが、三年近く付き合ってきたのですからできはします。ユリフィアスさんも印象的な方なのでこちらも簡単です。

 その想像のアカネさんを、わたくし自身に置き換えてみ、て?



「……、…………? っ!? っ、っ……っ!?」



 気づいたらベッドを転がりまわっていました。ティトリーズさんの結界内に滞在する日々の中で一度だけ体験した、エクスプロズの灼熱の環境。あのピークの部分がいきなりやってきました。顔がこれ以上なく熱くなって、目の前が二重に見えて、足元がふらつく感じ。言葉にするとそんな。


「っ、ッ、っ!」


 さっきからずっと声が出ません。枕に顔を押し付けて、身体を震わせて。足が自然とバタバタしてベッドを乱打してしまいます。


「ふ、はぁ……ふぅ」


 なんとなく落ち着いた気がして顔を横に向けると、真っ赤になった自分の顔が姿見に映っていました。

 ハウライト家は自由恋愛推奨。つまりお父様とお母様も恋愛結婚。両親のそれやアイリスさんがたびたび口にしていたような落ち着いた双方向の好意が恋愛だと思っていましたけど、ララさんが見せたような拗ねてしまうようなものや、エルフェヴィアさんやレヴさんのようなただ信じるような恋の形もあって。ネレリーナさんのような友情の延長上にあるようなものもあればティトリーズさんのような静かで小さな嫉妬や恐れを持ってしまうような形もあって。フレイアさんのようなずっと心で燃やし続ける形もあって。ルートゥレアさんのような大切に胸に秘めて伝えるのを怖く思ってしまうな形もあって。何よりアカネさんのようなずっと背中を追いかけ続ける恋の仕方もあって。

 多くの方たちのように一対一もあれば、ユリフィアスさんのように一対多の形も。多対多があるのかはわかりませんけどね。

 いろいろな恋や愛の形があることに気づいていましたし、素敵だとは思っていました。けど、気づいていなかった大事なことにようやく気づくときがきたということでしょうか。


「自由恋愛だと言っておいて……わたくし、恋をしたことなかったんですねそれどころかどんなものかもわからず。いえ、知ろうともしていなかった」


 素敵だとは思っていましたし目の前にもありましたけど、その間には自分で作っていた見えない壁があって。気づいていなかっただけでどこか遠い世界のものだと思っていた。それで他人に対して苦言を呈していたなんて、なんて滑稽なのでしょう。


「でも、気づいてしまいましたから」


 先程夢想した光景と感情をまっすぐ見られたなら。やっとわたくしの恋が始められるときなのかもしれないですね。

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