Interlude 誠に申し訳ありませんでした
夢うつつの幸せな一日の翌日。私はテーブルに額をこすりつけていました。
「本当に本当にごめんなさい、皆さん。私、あんな抜け駆けみたいなことを……」
明確に抜け駆けと言えるようなことについては、理性を失っていてもぎりぎりなんとか耐えたと思います。たぶん。きっと。おそらく。
だけど、だからって許してもらえるようなことをしたとは思えません。特に無限色の翼のみなさんからすれば憤慨もののはずです。
魔力探知するのすら怖くて、ここから放り出されるようなことはないと信じていても変な汗が止まりません。
「私としては……いえ、ここはセラさんとティアさんに判断してもらうほうがいいでしょうか」
ララさんの声は、呆れたというか困ったというか、判別のつかないものでした。気持ちはわかります。そう言ってはいけないんでしょうけど。
「え、私たちですか?」
「なるほど。ワタシたち二人はユリフィアスとそういう関係性ではないから」
「あーそういう。納得」
いろいろと法廷が形成されていっています。
なんだか、ギルドを除名処分されそうになっている冒険者の気持ちがわかってきました。多くの人のような悪あがきはしませんけど。でも、できることならこのままここにいたいです。
「じゃあ判事的なアレをやらせてもらいますね。ともかくアカネさん、頭は上げていいと思いますよ?」
「同感。事実誰も怒ってはいない」
セラさんとティアさんの言葉にゆっくりと頭を上げます。おっしゃるとおり、みなさん怒っているようには見えません。
それどころかララさんから回復をかけてもらったらしく、額の痛みが引いていきます。
「ていうか、皆皆様方きっと羨ましいだけですから? ですよね?」
セラさんの指摘に全員が首肯。微笑んでいたり恥ずかしがっていたり苦笑していたりそれぞれですけど。
「そう。アカネさんはなにも悪くない。昨日言ったとおり。悪いのは積極性皆無でまったく踏み込んでこないユリフィアス。それのみ」
ティアさんの指摘にまたほぼ全員が首肯。これも苦笑や悲しみや呆れなどいろいろといった感じでした。リーズさんとアイリスさんとレアさんもかすかに首が縦に動いていましたね。
ちなみにそのもう一人の当事者であるユーリさんは、縛り上げられて部屋に放り込まれています。大丈夫でしょうか。
「まあ、前みたく単純にやればいいよね。アカネさんに非があると思う人は挙手をー」
セラさんがそう言っても、手は一つも上がりませんでした。
「……ありがとうございます、皆さん」
泣けてきます。実際泣いてしまいましたけど。
本当に皆さん優しくて、どう恩を返したらいいかわかりません。
「な、なんで泣いて? むむ、むぬぬむ…………そうだ! 一人ずつ順番に担当日、いや専有日を作ればいいんですよ! アカネさんは微妙な感じっぽいけど、それで解決ですよね!」
セラさんが慌てた様子でまくし立てて、みなさん否定しなかったのでそういうことになりました。
「じゃあちょっとクジを作ってきまーす。その間にルール決めとかよろしくです。ヒャッホーイ」
最後はちょっとだけ、いえ、とてもとても楽しそうでしたけど。




