Interlude 風魔法使いのトンデモ開墾法
グレイクレイ家は、鍛冶師という職業もあって街並みからやや離れた場所にある。
つまり、周辺の土地はそこそこ余っている。畑として使える土地を探すのはそれほど困らなかった。
そもそもリーフェットは神域とされるエクスプロズに近くはあるが、神聖視や環境の問題でそこに立ち入ろうとするものはほとんどいない。ということで、「大都市でもなく観光都市ではありつつもそうではない」というある種微妙な土地柄を持っている、とこれは関係ない話か。
ともかく、畑の土地を用意するのは難しくなかった。もちろん、タダというわけもなくいくらか金は使ったけどな。何よりネレの人徳とこれまで積み上げてきた関係性が大きかった。近所付き合いは大事だな、どこの世界でも。
さて。
水田と比べ物にならないほど楽とはいえ、土地を畑として使うには開墾する必要がある。枯れ果てた土地に根付くものもあるが、だからってただ種を撒けばいいってわけでもない。植物の力を馬鹿にはできないが、どこからでも節操なく生えてくるわけじゃない。
何より気候も違うからな。って、その辺りをよく考えてなかった。妊婦の母さんにはやっぱり悪影響かもしれない……と思ったが。
「そこまで弱くはないから大丈夫よ」
本人がそう言っていた。なら大丈夫かな。内陸性気候なのは変わらないし。
というわけで、グレイクレイ家の説明と環境整備をしているネレと姉さんと母さんを残して、男二人で耕作予定地を見に来た。いや、男だけじゃなくてついてきたララとリーズもいるけど。
「作付けの方もそのまま行けそうかもな。身体強化と武器強化があれば耕すのも楽だ」
父さんが言うならそっちも大丈夫だろう。
耕作方法は姉さんや父さん母さんに魔法を教えてからとそれ以前からオレが使っていた伝統方法だな。だがしかし。
「もう何を憚る必要もない。今回はもっとさっさと楽にやろう」
「……またなにか馬鹿なことをやりそうな予感がします」
「そこは……ユーリさんですから……はい」
ララとリーズになにか白い目を向けられている気がするが、とりあえず気にせずにおいて。
ユーリ・クアドリ時代にこのあたりの地質は調査済みだ。少なくとも粘土質じゃないから極端な土壌改善は必要ない。
まずは畑の形状に合わせて四方に複合防壁を展開。飛び上がり、防壁の上に陣取る。
風魔法使いとしてあらためて探知した感じだと、やや空気の含有量が少なめだな。ここも同時に解決しよう。
腰からリターニングダガーを抜き、空気圧砲で撃ち出す。焼成矢や土針柱だと地中に残りそうだからな。こんな使い方をしたらネレとリーズとレヴにとっては複雑だろうけど、勘弁してもらおう。
粉塵が舞い上がりすぎたり土が熱変性を起こさないように。徐々に威力を上げて丁度いいところを探る。
「このくらいの出力でいいか」
地面を掘り起こすのに問題ない威力になったところで残りの四本も加え、地面を“殴り起こして”ひっくり返していく。
適度に地面の感じが変わったところで、予備に用意してあった腐葉土や魔力含有土を空間収納から取り出す。全部をぶちまけ、もう一度同じことをやる。今度は舞い上がった土を弱い竜巻でかき混ぜるのも加える。
魔力探知で満遍なく混ざったのを把握したら、あとは重力に任せて土を落とし込んで完了。防壁を解除。
「こんなもんかな。サイズにもよるから畝は自力で作らないといけないけど」
「あ、ああ。そうだな」
父さんは微妙な顔。また変な魔法の使い方を見せたってことか。
それ以上に、ララは呆れた目をしていてリーズは薄い苦笑だった。
「……あなたは目立つことをしないと気が済まないのですか? ネレは土魔法も使えますよ。まさか忘れているはずありませんよね?」
「わたしも……ここまで派手ではないですが……開墾はできます……それに……疑似精霊魔法でよかったのでは……?」
うん。どうも無用に大袈裟で余計で余分なことをしたようだね。単純な手法を使ったり素直に人に頼ることも覚えなきゃいけないね。




