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風魔法使いの転生無双  作者: Syun
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Interlude 帝国変(誤字ニ非ズ)

「そういえば、気軽に行こうとしすぎだったですかね?」


 張り切って帝都まで来たけど、目的地を目の前にして二の足を踏んじゃったよ。

 いまさらだけど、「皇位継承権放棄する!」って言っておいて「実家だから」でホイホイ来れるような場所じゃないよね、皇城って。本来はホイホイ出れるもんでもないけど。


「まーねー。でも来なかったら来なかったで拗ねそうだからなぁエーデ。何も言わずに帝国内にいたってバレたら怒り……怒りはしないか。血の涙を流しそう」


 あー、たしかにエーデ姉上はなぁ。フレイアさん大好きだから。

 ていうか母上もいっしょに一晩中話してたみたいだけど、シュベルトクラフトの女性陣はちょっとフレイアさんに執着しすぎじゃないの。いやそれは私もか。なんだその変な血。

 と呆れたんだけど、それを裏付けるというか象徴するさらに呆れた出来事はすぐにあった。

 一応、帝都の宿屋に泊まって手紙を出したりしたわけですよ。道中の懸念があったから。いきなり行っても会ってはもらえないだろうからね。

 でも次の日、ゆっくり寝てたら満面の笑顔のエーデ姉上が来て叩き起こされた。なんで。


「フレイア姉様、母上がお呼びです。誰よりもわたしがお待ちしていました。あとセラも」


 私は完全についでかーい。

 宿を出てしばらく歩いて馬車に乗る。そのまま城へ直行。皇城に着いたら姉上の部屋に直行。

 部屋の中には母上もいるし。お茶会の準備もしてあるし。


「ひょっとしてお二人とも、暇」

「セラ? 物事には優先順位があることくらいあなたにはわかるでしょう?」


 笑顔で遮られた。ウニョウニョの悪い魔力がまとわりついてくる感じもする。

 もしかしなくても身内で一番ヤバい人って実はエーデ姉上なのでは?

 対して、母上の方は苦笑。


「セラディアの言うことも正しいかしらね。いろいろあったでしょう? まだ落ち着いたとは言い切れないところもあるのよ。だからお茶会やパーティーも多くが先送りになっていたりするの」


 そっか。王国も意外な人が魔人になっちゃったりしてたもんね。帝国だって一緒か。

 魔法学院の先生にも魔人になったんじゃないかって人はいたわけで、組織構造がガタガタになって立て直せてないところもいっぱいあるのか。


「それで……フレイア姉様。こうして会いに来てくださったということは、ここに住むことを決めてくださったのですか?」


 前回そんな話をしてたんだ。

 ここ。言い方からして帝国じゃないよね。帝都でもなさそう。となると皇城か。


「あはは、だからそれは無理だって」

「どうしてですか? ちょうど部屋も空いたところですのに」


 へー、そうなんだ。

 いやこれもしかして私の部屋のことじゃない?


「姉上……そこまで無下にされるといくら私でも泣くよ?」

「もう泣いてるよセラちゃん……エーデもいい加減にしなさいってば」


 そうかぁ、視界が歪んでるこれは涙かぁ。


「セラだってわたしに相談も何もなかったですもの。お互い様です」


 エーデ姉上はプクリと頬を膨らませた。

 そっか。そうだね。何より家族に相談すべきだった。みんながそう思ってても仕方ないよね。


「ごめんなさい、姉上」

「やっと謝ってくれましたか。許します。おいで」


 手を広げられたので、抱きつく。あー、昔はよくこうしてたな。まだ「お姉ちゃん」って呼んでた頃。

 アイリスさんもユメさんもレインさんも姉上も、おねーちゃんは偉大だ。


「エーデルシュタインの冗談はともかく。学院を卒業したとは聞いたけれど今回はどうしたの? ユリフィアスさんや同じパーティーだというルートゥレアちゃんと一緒ではないの?」


 そうだ、これまたいまさらだけど二人はレアと会ったことなかったっけ。私の一番の親友はさっさと紹介しないといけないな。


「エクスプロズに居を構えることになったのでお報せに来ました。帝国内に腰を落ち着けることになったわけですから、とりあえずは縁のある私たちがと。エーデからも再訪を促されていましたからね」


 本題は母上から振られたので、フレイアさんが答えてくれた。どこまで明かしていいのかっていうのは私たちの裁量に預けてくれるとは言われたけど、まあ人員構成とか関係を言わなければ大丈夫かな。

 ……そこを話すとまず何よりユーリ君が命を狙われそうだし。姉上に。

 で、当然ながら母上と姉上は首を傾げた。気にならないわけないよね。


「エクスプロズ? リーフェットではなく?」

「はい」

「それは気軽に会いに行けるのか無理なのかよくわからないですね」


 いや皇女が気軽に会いに行っちゃダメだからね。私が言えることじゃないのかもしれないけど。

 そーいや、お客さんが来られるところじゃないよね現住居。招かれざる客が来ないようにしてるのはそうみたいだけど。


「そもそも住めるのですか?」

「そこはいろいろと手段もありまして……」


 フレイアさんも早々に説明が苦しくなってきてるな。魔道具がどうって話はできるけど、連鎖的にボロボロ情報が出ていきそう。


「なんとなくわかる気もするけれど、聞かないほうがいいということかしらね。そう、エクスプロズに。フレイアちゃんに爵位と土地を贈るという話もあったけれど、あの辺りは女皇龍エンプレスドラゴン様の神域だから無理よね。しばらくお姿を見ないという話ではあるけれど危険は無いの?」

「おそらくは……それと、申し訳ありませんが土地も爵位も貰う気はありません。貴族は懲り懲りです」

「でしょうね、フレイアちゃんなら」


 フレイアさんも言うね。まあ、地位やお金より恋だよね。むしろお金は山とありそうだし。

 ちなみに、レヴァティーン様も人化して思いっきり恋愛生活満喫してますよ。

 ……なんてのは言えないよね。満喫してないからじゃないよ? 現状できてないけど。

 やっぱり割と大っぴらに口にできる状況じゃないな、今の私たち。でも魔王様たちはちゃんと把握してるのか。うーむ。リーズさんと私じゃ立場とか立ち位置とかいろいろ違うけど、だからいいとも言えないなぁ。

 ユーリ君がいつも言ってる「相手の見極め」ってほんとに難しいな。母上と姉上が信頼に値しないわけじゃないけど、情報がとんでもないのと私自身が懸念を拭いきれないところもある。相手だけ見てればいいわけじゃないのか。

 そう考えるとバンバン事情を明かしてくれてる当人はそれはそれで異常なわけで。信頼に応えなきゃって気にさせられるからこれもよくない面があるんだろうけどね。裏切ったら後が怖くなるってことはたぶんおそらくきっとないとしても。逆に私もユーリ君が好きだったらリーズさんみたいに事情を晒せたんでしょーか? 差ってその辺だよね今のところ。


「……母上」


 そんな葛藤をしてたら、エーデ姉上が表情を引き締めて母上を見た。



「わたしも皇位継承権を放棄してフレイア姉様のところに行きます」

「ダメよ」



 母上拒絶が早い! っていうか姉上もなにその宣言!?


「なぜですか!? このまま誰かの夫人に収まるくらいならいっそのことフレイア姉様のメイドがいいです!」

「いや待ってエーデ。おかしいから。普通は逆だから。逆もやらないけど」


 うん。ほんと何言ってるの姉上。

 変なところに嫁がされるのが嫌ってのはわかるけど。フレイアさんのメイドもなかなか魅力的ではあるけど。

 というか。各国の王皇族で結婚できそうなのが今のところリーズさんしかいないような気がするのは私の認識間違いかなー? 大丈夫か次代。


「姉妹でそこに影響を受けられても困るわ。そもそもセラディアの継承権だって無くなったわけではないのに」

「え?」

「はい?」

「んん?」


 え?

 いや、え?

 ちょ、え? どういうこと? フレイアさんもだけど姉上も驚いてない?


「え? 放棄しましたよね、私? 夢?」

「現実だけれど、セラディアも思い込みだけで行動してはダメよ? 父上が受け入れた? 貴族たちが同意した? 国民が同意した? 書面化した?」


 し……てないですね誰も。何も。


「つまり、私は」

「まだ第二皇女のままね。たとえ放棄できても復位もあるわけだから逃げられはしないけれど」


 マジかー。私の皇位継承権そのまんまかー。最下位なのは変わんないけど残ってるのかー。

 あれ? だったらユーリ君のお父さんとお母さんに嘘ついたことになるじゃん。変わらず接してほしいのは本音だけど。


「じゃあ、今の状態って悪かったりするんですか? 第二皇女の私は責務も果たさずに遊び歩いてるわけですし」

「そこは他人がどう思うかではないかしら。何をしていても許さないような輩はどこにでもいるのだし」


 いやまあ、うん。それはそうなんだけど。

 いや待てよ。あのハーシュエス城で私一人蚊帳の外にいると思ってたけど、定期的な逃げ場所ができるのはいいのでは?


「じゃあ、いつでも泊まりに来てもいいですかね?」

「それは構わないけれど、いつでも来たいなんてなにか辛いことでもあるの?」

「フレイア姉様といるのに辛いことがあるなんて……」


 母上は心配そうだけど、姉上は嫉妬と憤怒の表情をしている。

 ひ、ひょっとしてヤバい話振ったかな。核心に触れずに嘘つかずに誤魔化さねば。



 こうして私たちの報告は特にこじれることもなく……こじれきることもなく……穏便に終わったのだけど。

 帰り道でフレイアさんが特になんの前触れもなく恐怖の表情をした。


「ねえセラちゃん。私、とんでもないことに気づいちゃったんだけど」

「はい?」


 うん? なんでしょういきなり。そんな怖いことなかったと思うけど。


「今、若返りの魔法をリーズさんにかけてもらうことになってるじゃない?」

「あー、そうでしたね」


 そういえばそんなこともあったね。例の実験は意味があったけど極端な増加はないってことで、魔力結晶が充分に溜まってからってことになったけどさ。


「そうすると外見年齢的にはたぶん十七歳くらいになるわけじゃない?」

「ですね」


 都合二回ほど夢で見たのと同じくらいかな? いやあれよりもう少し後か。なんにせよ、今のアカネさんの少し下くらいになるんだよね。



「それをエーデにどうやって説明すればいいかな?」

「…………あ」



 最後に、忘れていたとんでもない大問題がそびえ立ったのだった。

 どうしよ。

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