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風魔法使いの転生無双  作者: Syun
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間章・結 セラディア・アルセエットによる事実把握

 いやー、人生の長い序章を終えて落ち着くかと思ったらまだまだ早かったね。早すぎたよ。

 ていうか、他の世界から来た人がユーリ君だけなんてそんなことあるわけないか。それがレアのお姉さんだったっていうのは驚きだけど。ほんと自分だけ特別だと思ってたら逆方向に特別だったとは。とんだ道化だぜ。

 まあでも、それでいいんだよね。みんなそれぞれ特別な色の羽根なんだから。私は私。ユーリ君はユーリ君でレアはレアだから。


「それにしても、無限色の翼プリズムグラデーション・エールとかかっこいいけど、今この状態だとなんかユーリ君が本体だよね」

「あー、本体のことについては考えてなかったな。いや、ビジュアルを考えるとこの世界そのものか」


 なるほどね。私たちはこの世界から生えてる翼の羽根。いいじゃんそれ。


「でもなんだかんだで女所帯に男一人なわけで、その辺どう思ってるのユーリ君。さすがにこの状態で無反応はないでしょ」

「そりゃあ、な。気も使わなきゃいけないし美人に囲まれてるのは戸惑うけど、暴走していいもんでもないし……前の状態なら特に考えなくて済んだんだろうけど、それは不健全だからな」


 ユーリ君は考え込むように目を逸らしてる。ここまではほぼ今まで通りだけど、なんか顔が赤いし困った顔してる。

 なんだこの反応?

 そもそも「暴走」ってなんだ? そういうことか?

 何かがあったってことは間違いない。でもいきなりこんなに変わるなんて変だ。

 だとしてもいい傾向でいいタイミングかもしれないね。今後のことを考えると必要だし。


「じゃあそろそろはっきりさせておこうか、ユーリ君」



 というわけで、最初のときみたくみんなで大集合した。今回はネレさんとリーズさんもいる。


「えーと、セラ?」


 レアが不安そうな顔をしてるけど、大丈夫大丈夫。

 ていうかまず最初にやっとかなきゃいけなかったんだよこれは。流し流しで済むもんじゃないし。


「とりあえず、みなさんにこれから大事な質問しまーす」


 できるだけ馬鹿話みたいにして。質問自体は重いからね。


「ユーリ君が嫌いな人ー」


 ティアさんが即、手を挙げた。うんわかってた。


「……まだ言ってるの、ティアリスってば」

「ティアちゃんはサァ……」


 でも、それが本気じゃないのもわかってるんだよね、みんな。


「ねえティアリス? 『認めよう。ユリフィアス・ハーシュエス。あなたは誰かの人生に影響を与える天才。ありがとう』。ホントに冗談で言えるかなー?」

「やめ。やめて。エルフェヴィア姉。忘れて。みんなも」


 エルさんが口調を真似て言ったら、ティアさんが真っ赤になって顔を隠した。おお、珍しい。

 エルさんの言ったのはララさん以外全員聞いてたやつかー。結構衝撃だったよね。絶対言わないだろうとは思わないけど。

 悪い方に影響食らった人も同じくらいいるけどね。でもそれは別にユーリ君のせいでもないし。実際、いい影響与えてると思うよユーリ君は。


「ただまあ、条件付きでって言うなら私もそうだね。今後のユーリ君の行動如何では嫌いになる可能性はある」

「そうならないように気をつけてはいるけど、どうあっても敵は山程いるからな。セラとティアさんがそういう敵にはならないと思うけど」


 まあね。「殺してやる」って思うことはたぶん無いと思う。「死んだほうが良くない?」ってくらいかな。思ってもほぼ冗談でだろうし。

 それも今答えが出るけど。


「では、最終質問をいたしましょうかねー」


 さっきと同じくさらっと言ってはみたけど、全員が息を止めた。そりゃこの流れなら私が何を言うかわかってるよね、みんな。



「中身や外見がどうであれ、ユーリ君を男性として好きな人は挙手ー」



 サッととかスッととかシュバッととかおずおずととかいろいろ表現のしようはあるけど、挙がる挙がる。

 ララさん。エルさん。ネレさん。レヴさん。リーズさん。アカネさん。フレイアさん。アイリスさん。レア。

 はい知ってましたー。いや?


「あれれ? ユメさんとミアさんは?」

「わたくしは……尊敬できる方だと思いますし恩義もありますが、それだけで測るのも違うのではないかと。今のところはよくわからないというか、それでわかってはいけないというか。男性としてではないですね」

「アタシはどうだろナァ。ユメちゃんと同じ感じカナ。人として尊敬できるカナってくらい。できない所もあるケド。そこはセラちゃんティアちゃんと一緒じゃないカナ」


 うむ、これは脈はありそうだな。ていうか人間的な好意に限れば私も同じかも。まあ、そうじゃなきゃここまでついてきませんぜ。


「さあ、ユーリ君さん。どうする?」


 もっとも、ここがユーリ君の王国なのは変わんないけどね。やるよねー。

 ……あれ? ティアさんは旅に出て、ユメさんとミアさんはお家に帰る。そうすると私だけが残るわけで?

 おうわ、これもレアを茶化し続けた罰か。だけどそれも甘んじて受けよう。別に私も旅に出ちゃいけないってことはないからね!

 ……泣けてきた。ちきしょー。


「どうすると言われてもなぁ。平然と『責任は取る』とか言ってララとフレイアを困らせたけど」

「困ってはいないですね」

「むしろ嬉しかったかな。勘違いだったけど」

「ユーリくん……」

「ユーリさん……」


 ララさんとフレイアさんは頬を赤くして、レアとアカネさんは目に見えてしょんぼりしている。他の方々も表情それぞれ。私は呆れ。

 おいユリフィアス・ハーシュエスさん? 今わりと「死んだほうが良くない?」側に天秤が傾いたよ? そんなこと言ってたのか。


「……帝都を出るときにセラにも言ったよな」

「そんな、セラ……羨ましいです」


 って私も言われたんでしたー! 忘れてたー!

 単純に「やったことの責任は取る」っていう意味だよね、そのときのこと考えると。聞かされる方としてはある意味ひどいなとは思うけど、真剣なのは真剣なわけで。


「しかし、これだけみんなをヤキモキさせてたと思うと本当に申し訳ないな。特に転生前からのことは」

「セラさんにはお礼を言わないといけませんね。遅かれ早かれ私たちの好意については話すつもりでしたけど、誰かが先にというのは考えていませんでしたから。色欲封じのことで足踏みしましたけどそれももう無いですからね」

「ええ……この十年以上……それだけを考えてきたとも言えますし……」

「長く生きてきて、この十年が一番長く感じたかな」

「そうだね。同じ気持ちのみんながいてくれたから良かったけど」

「風牙の仕上げを見据えることでごまかそうとしていた節もありますね」

「私は、ギルドの仕事をしていても何もなかったのでもう会えないものかと思っていました」

「私もそうだね。生きてるなら何かしら耳に入るだろうとは思ってたからねユーリなら」


 みんなユーリ君のことを想ってるみたいだけど、話を聞くに結構さっさと転生しちゃってるんだよね。まったく、どんだけの人の心を狂わせたら気が済むの。

 まあ不安も聞いてわかってるし、「努力を欠かさなくて自信もあるけどそれを誇りもせず焦ってるような危うさもあってそれでも人を助けるためには労を惜しまないし悩みには親身にもなってくれる」ってすごいキャラクターしてるけど。

 ……ん? しきよくふうじ?


「しきよくふうじってなんですかそれ?」


 意味がわからなくて素で聞いたら、リーズさんが申し訳無さそうな顔を。転生の副作用みたいなもの?


「わかりやすく言えば……人に恋愛感情を抱けなくなる……邪魔法です……わたしが勝手に転生魔法に組み込みました……ユーリさんが誰かを好きになったら嫌だと思って……みなさんにも悪いことをしました……ごめんなさい」

「え」


 リーズさんが頭を下げたけど、こっちの頭は追いつかない。

 何じゃそれは! そんなものをユーリ君は抱えてたの!?

 そりゃレアに対して平然としていられ……いや言うほどアプローチはしてなかったか。好き好きオーラがぼんやりと出てたくらいだね。ちゃんと言ったっていうのも聞かなかったし。


「そうだったんですか。でも良かったです、わたしが駄目なのかと思ったこともありますから」

「ユーくん、そんな状態だったんだ」

「なるほど、ユリフィアスさんがああいう性格だったのはそういうことだったのですね」

「どちらにせよ。原因はユリフィアスにある。それは変わらない」

「あー、だからかぁ。ララさんの護衛のときに……デート……の話しても平然としてるから、興味ないのかなと思ったけど」


 フレイアさんそんな話してたんだ。

 しっかしこれでいろいろ納得がいった。そりゃ恋愛音痴みたいになるよ。アカネさんがいつだか言ってたみたいな「オレ様は女に好かれてんぜゲハハハハ!」みたいなのもイヤだけど。


「というわけで、それを踏まえてこれからよろしくおねがいしますね悠理」

「うっ……真面目に考えます」


 これから大変だな、ユーリ君。自分でやっといてなんだけど。

 ともかく暖かく見守るか、この王様のこれからをね。

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