間章 ティアリス・クースルーと精霊の秘密
そう言えば。
「エルフェヴィア姉。火精霊たちはすごく流暢に喋っている。なんで?」
旅のこともだけれど。それも聞いておきたかった。
基本的に。声自体もある程度関係性が深まらないとはっきりとは聞こえない。だからお父さんの周りにいる精霊たちが身近だったけど。舌っ足らずと言えばいいのか抑揚が薄いというのか。そんな話し方をしていた。
ワタシに力を貸してくれている水精霊もまだその傾向がある。ちょっと感情が薄いような。
「ああそれね。たぶん、付き合った相手の性格と長さの問題と分けた霊力の量かな。里だといろんな性格の精霊がいたよね」
『ぼくみたいな土精霊もいたし』
『我のような火精霊もいたな』
『わたくしのような性格の風精霊もいましたし』
『ティアの水精霊は私に近いかな?』
『じぶんでは。ティアと風精霊ねえさまと火精霊にいさまにちかいかと』
ふむ。なるほど。主に年の功。
でも。霊力を分けることならできる。今のワタシの霊力がどれだけあるのかはわからないけど。
手のひらで掬うように水精霊を抱き留める。
「ワタシの霊力。受け取って。水精霊」
魔力と霊力を選り分けて手のひらの上に集める。それを水精霊に供給。いつも分けてるのよりずっと多めに。
『はい? はえ? あわわわわ? ティア? そんなにきゅううううう……?』
「水精霊!?」
なんで!? 水精霊がすぐに目を回して気絶した。床に墜落するのは止められたけど。
『……ティアリスよ。物事には限度というものがある』
土精霊に怒られた。ワタシのせいなの。これ。
「えーとね? 精霊にも魔力酔いっていうか、霊力酔いみたいなのがあるみたいなの。だから、ってもう言わなくてもわかるか」
魔力酔い。欠乏の逆。魔法使いであれば一度はその経験はある。
頭痛。吐き気。目眩。前後不覚。あれは辛かった。
「知らなかった。ごめん水精霊。ごめんなさい」
『いいえー……ワタシのしゅうれんも……まだたりなかったんですわねー……』
のんびりやっていくしかないのかな。ワタシが彼女といられなくなるまで。それがいつになるのかはまだわからないけれど。
それでももしも。ワタシに子供ができたら。その子の力になってあげてほしい。それまでよろしくね。水精霊。




