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風魔法使いの転生無双  作者: Syun
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Connect to Prism-gradation Air

 今回の一件、物的被害はもちろん人的被害もひどいものでした。何よりの問題は魔人化した人たちでしたが、その辺りは証言によるものしかないので、流布すると口さがない噂と混ざることになります。箝口令が引かれたのは聖国にとってはせめてもの救いでしょう。言い方は悪いですが、他国も同じ状況であったのも。そこは敵の計画に逆に救われたというべきですかね。

 魔人のことも多くの人が知ることになり、各国それぞれが混乱したとも聞きました。それでも人は前に進まなければなりませんから、復興も全力で行われているそうです。

 そんな中、私は聖堂に聖皇たちを呼び出していました。フィーリアとカリタを連れて。


「いかがいたしました、ソーマ様」

「……我々の罷免ですかな」


 騒動前に十二人いた聖皇は半分に減ってしまいました。グロリア同様魔人になってしまった者や、その犠牲になった方もいたそうです。比率は……言うまでもないでしょうか。


「椅子の数が決まっている以上、権力闘争があるのは仕方ないでしょう。そこにとらわれるのは問題外ですが。しかしあなた方がそうでないことはわかっているつもりです」


 こんなことがあって選別されてしまったというのはこれ以上ない皮肉なのでしょうね。それで私と彼らのパワーバランスが崩れてしまったというのも。


「この大変な時に責任だの罷免だのと言う気はありません。私の話は『次の聖女を決めた』という一点だけです」

「は?」

「え?」

「ソーマ様?」


 聞いていた人たちは一様にぽかんと口を開いて、


「な、なぜですソーマ様。国が混乱している今この時でなくとも」

「そうですぞ。今それを言い出せばさらに混乱するのでは」

「決めたって、やっぱり……」

「そっか……」


 理解して、慌てたり悲しんだり。誰からも良い感情は見られません。まあ、予測していたことですけどね。


「混乱している今だからこそです。新しい流れというのもありますけど、悪意を持つような聖皇もいないですし、慣習を破壊するのにはいいタイミングだと思いまして」

「ふむ……慣習ですか。たしかに、我々が聖女の選定を縛り付けていた面もありますか」

「聖女の権利と意思もですね」

「プリマヴェラはいつもそれを口にしていましたな」


 私を聖女に推薦してくださったプリマヴェラ聖皇様。彼女は今回のことで命を落とされてしまいました。一晩悼んで、何も返せていないことに気づきました。それを為すなら今だと思います。


「ソーマ様の一存だけで決める事は難しいと思いますが、その判断を私達も支持いたしましょう。お聞かせ願えますか」

「フィーリアとカリタを連れてきたということは、どちらかを次の聖女にということでしょうかな」


 そう見えますか。でも、それなら二人のどちらかを連れてくればいいだけですよね。


「そこです、間違っていたのは。今回の一件を通して私の頭が固かったと気づいたんですよ。いえ、みんなそうだったのです。『誰にするか』なんて考えるのが間違っていました」

「「「「「「「「?」」」」」」」」


 全員が首を傾げました。ということは、私のたどり着いた答えと同じ答えを持っている人はいないということですね。

 振り返り、聖女候補二人の顔を順に見ます。抑えていますが、そこにあるのは恐れや無念でしょうかね。どちらも自分が選ばれるとは思っていないと。なんだか不思議なことになってしまいましたね。


「フィーリア。カリタ。貴女たち二人を次の聖女に指名します」


 けれど、それさえも乗り越えていかなければならないし、乗り越えていけるのが聖女なのでしょう。

 私に悠理がいたように、一人では無理でも。


「え……?」

「私、“たち”?」

「つまり、フィーリアかカリタのどちらかを? いえ、どちらを?」

「ですから違います」


 やはり懇切丁寧に説明しないといけないでしょうかね。


「聖女が一人でなければならない道理はありません。今回のように二人であれば乗り越えられることもあるでしょう。私にユーリ・クアドリがいたように。それにいい加減うんざりなんですよ。聖女になってからずっと思っていましたが、あちらが立てばこちらが立たずで救われない人が増えていきすぎです。もうそういうのは止めにしましょう。掬う手を増やすことで溢れるものを減らせるのだとしたら、躊躇する理由はありません。この二人であればそれぞれの場所で頑張れるでしょうし、どちらかが倒れそうになってももう一人がその手を引いて進むことができます」


 あの時見た二人と、これから共に歩むのであろう仲間たちから教えられました。私もまだまだだったというのと、悠理の転生にもきっと意味があったしもっと多くの意味ができたのだということを。


「ふむ……二人の聖女ですか」

「そうですなあ。神秘性のために聖女は一人と決まっていると思っていましたが、そんな決まりがあるわけではない」

「時代の移り変わりには悪くないかもしれませんね」

「たしかにこれは面白い案だ。それでいて救いもある」


 聖皇様たちにも好意的に受け止められたようです。


「二人はどうします?」


 そう尋ねると、二人は顔を見合わせて微笑みながら涙をこぼしました。


「わたし、ずっとカリタと争わないといけないしそんなの嫌だと思ってた。でも一緒なら。ううん、カリタと一緒に聖女になりたい。そうできるならこんなにいいことはないよ」

「私は……フィーリアとなら頑張れると思う。今までできなかったこともできるようになると思う。ソーマ様みたいにも」


 お互いに握られた手。魔力探知で二人の魔力が安定と増大するのがわかりました。

 これで大丈夫ですね。さあ、行きましょうか。


「え? あの、ソーマ様。どこかへいらっしゃるので?」

「ええ。そのお荷物と服はずっと気になっていましたが」

「そういえば」

「聞けませんでしたけど」


 フィーリアとカリタもさっきまでの雰囲気がどこへやら、手を繋いで目を少しだけ腫らしたまま不思議そうな顔を。

 今の私は聖女でもなければ見習いやあのとき着た聖侍女服でもないただの平服。それにヴァリーに用意してもらった大きな遠征鞄を足元に置いていました。


「私の役目は終わりましたし、この国を出ていきます。何かあれば遠慮なく戻ってきますけれどね」


 と、しまった。嘘をついてしまいましたね。これは謝らなければ。


「話は二点でしたね。申し訳ありませんでした。では、あなた方と聖国のこれからに幸あらんことを」


 それだけ言い残して身体強化の力で荷物を背負い、外に向かって歩きだします。唖然とした聖皇様たちに背を向け、彼らと同じ顔をして手を離してしまったフィーリアとカリタの間を抜けて。


「え?」

「はい?」

「ええ?」

「「えええソーマ様!?」」


 次期聖女の話をしたとき以上の悲鳴が聖堂に響き渡りました。



 さあ、行きましょう。あの時掴まえた大事な人の手をもう二度と離さないためにも、顔を上げるときが来ました。



 任せた王子様二人がいくら有能とは言え、全能ではない。王都もしっちゃかめっちゃかになってしまった。それはみんなが回ってくれた世界中の街や村も同じなようで、「落ち着いたらしばらくは世界各地の復興の手伝いをして回らなきゃいけないだろうな。旅もついでにできるし」とぼんやりと考えたりしていた。

 ……いや、両王子の出した被害がどれだけあるかとか聞けるわけ無いだろ。破山剣と大杖を返される時にボロっとこぼされそうになったけど。

 で。復旧には騎士団も魔法士団も各王立学院も駆り出された。その中で魔法士団第二隊と魔法学院と工科学院の繋がりとか、騎士団と第一隊と騎士魔法両学院の戦闘職希望との繋がりとか、魔道具師志望者と第三隊と家政学院との繋がりとか、予想外のパイプができたりもした。「災いは転じて福と為せばよい」と言う気はないが、良かったことの一つではあるかもな。



 リュフィがティアさん以上の無感情で士団の魔法士を閉口させていたりとか。

 テヴィアが男性騎士を手玉に取っていたりとか。

 アオナに復旧に使えるような魔法の使い方を教えてみたりとか。

 スヴィンがいろんな所に縁を作っていたりとか。

 アンナさんとリレヴィス先生が「久しぶりにゆっくり話ができた」と喜んでいたとか。

 イリルがアンナさんを「師匠」と連呼して困惑させていたりとか。



 まあいろいろあったけど。

 卒業式の段取りを話さなきゃいけなくなる頃には、なんとか王都は魔人が大発生する前の状態に戻りつつあった。



 残念ながらと言えばいいのか当然と言わなければいけないのか、先生や生徒の中にも魔人になってしまった奴はそこそこいた。いい加減対処療法じゃなくてなんとかしたいところだが、人間の心はそう簡単じゃないからな。いや、簡単なところもあるし、これもその類の面もあるんだろうが。

 そんなこともあって、今年度の卒業式は四学院共同でやることになった。結局あの大会も流れてしまったし、その代わりのお祭りとして転換にしようってこともあるんだろう。オレたちも適当な魔物を狩ってきて家政学院に提供したりして、後夜祭の盛り上げに貢献した。



 そして翌日。とうとう王都を出ていく日になった。



 この状況で王都を去ることに後ろめたさはあるが、もう止まらないと決めた。オレはオレのやり方で世話になった人や世界と向き合っていこう。

 王立魔法学院の正門には、リレヴィス先生とクラスメートたちが見送りに来てくれていた。


「セラ、しっかりやって」

「でもあんまりやりすぎないようにね」

「例の報告もよろしくー」

「レア、いろいろ頑張ってね」

「そうそう」

「まあ何がとは言わないけど?」

「この一年楽しかったぜ」

「忘れないよ、君たちのこと」

「元気でやれよ、ユリフィアス」


 一人一人が声をかけてくれる。みんなこんなにもオレたちのことを見てくれていたんだな。


「みんな、またね」

「また会いましょう」

「みんなの成長した姿を見るのを待ってるからな」


 何度も振り返りながら千切れそうなほど手を振るのを終え、背を向けて歩き出す。王都の外門では一足早く姉さん、ユメさん、ティアさん、ミアさん、アカネちゃん、フレイアの六人が待っていた。


「お待たせ」


 笑いながらそう言うと、みんな笑い返してくれる。

 これで王都での物語は一旦終わりだ。オレたちは次に進む。



 さあ、行こうか。無限色の翼プリズムグラデーション・エールのみんなのところへ。

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