Interlude 魔物の価値とクラスメート達の未来
「うおおおお、マジかマジかマジか!?」
「ひええええ!?」
「キラキラしてるキラキラしてるキラキラしてるー!」
「一気に金持ちだー!」
もしかするとなんて言うまでもなく、戦いの後よりずっと盛り上がっている。が、仕方ないかもしれない。ギルドのカウンターには大金が積み上がっているのだから。
ホーンラビット約二十匹。ハウンド十五頭。ブラッドグリズリー一体。倒し方からすべてまるまる価値があるとは言えないが、オレが運んだおかげで殆どの魔物素材が換金対象になってくれた。さらにレアが血抜きをしセラが冷却を行い可食部も取れる。何よりブラッドグリズリーの魔石はサイズも価値もデカい。
騒ぐクラスメート達をアカネちゃんは微笑ましそうな顔で見ていた。周りの冒険者達の多くからもそんな空気が伝わってくる。
「今回は多くが駄目でしたけど、変質が少なければ各魔物の皮も貴重な素材になります。ブラッドグリズリーのような強力な魔物の外皮を傷つけずに倒すのは難しいですが、そうできたら完全に一人前ですね。冒険者を目指す人がいればギルドの資料室には図鑑や手引書も揃っています。いつでも閲覧に来てくださいね」
「くっそー、残念だなぁ! 目標は高いぜ!」
悔しさを示す言葉だが、それでもスヴィンは笑っている。それを見たアカネちゃんも再びニッコリと笑い、オレにも目配せをした。
わかってる。いいクラスメートだよ。
ただ。
「おほん。ですが、皆さん決して油断や慢心をしないように。死んでしまっては何もなりませんからね」
「リレヴィス先生の言うとおりだ。水を差すのを承知で言うが、うまく行かないこともいくらでもある。大事なのは何度でもどれだけでも後ろに下がってもいいから折れずに前に歩く事だ。そうすれば必ず昨日の自分より遠くに行けるからな」
今回はたまたまうまく行った……などとは言わない。運の要素があったとしても、今回見た皆の実力は確かだ。それでも何かイレギュラーな要素が加われば最悪へ流されることは往々にしてあり得る。
湧いていたクラスメート達は一様に心を落ち着かせ、
「……ああ」
「うん」
「そうだね」
「わかってる。これはみんなで掴んだ勝利だ。一人でできるなんて思っちゃいないよ」
全員が頷いた。
そこにオレや先生が危惧しているような油断や慢心の色はない。大丈夫そうだな。
「それはそれとして、今日くらいは騒いでもいいだろ!? いいよな!?」
「賛成!」
「ほら、ユリフィアスくんもセラもレアも! 先生も行きましょう!」
「わ、私もですか?」
「当然でしょう! クラスの勝利なんですから! 先生もクラスの一員です!」
「ちょ、強引だってイリル」
「ちゃんとついていきますからっ」
「あ、アオナさんもう少し落ち着いて。私もちゃんと参加しますから」
クラスのみんなに背を押され、セラもレアもリレヴィス先生も人の塊に飲まれて転ぶみたいにギルドを出ていく。
数歩離れてそれに続くオレの隣にはスヴィンが並んだ。
「お前と同じクラスで良かったよ、ユリフィアス」
「ああ。同感だスヴィン」
もしかしたらこのクラスで三年間やっていくという物語もあったのかもしれない。それもきっとかけがえのない日々になったことだろうし、クラスメート達もそれを望んでいたかもしれない。
でもオレ達は先に進む。止まらないし謝罪をすることもない。
「前に言ったけど俺も冒険者になる。自分で道を作ってお前たちに追いつくからな」
「待ってるよ」
掲げられた拳に拳をぶつける。
大丈夫だ。オマエなら誇りと勇気を持った冒険者になれるさ。必ず。




