Material そもそも近衛魔法士団ってどんなところ?
「そう言えば、魔法士団の組織構成について聞いたことなかったよな」
「うん、聞かれた覚えないけど。何? いまさら入るわけでもないよね?」
そんなわけない。ただ、それこそいまさら気になっただけだ。アンナさんの今後の事とかもあるし。
「半生を聞いた時に色々と事件があったのは聞いたけど、そもそも士団で何をやってたか詳しくは聞いてなかったと思ってな」
「そだっけ?」
フレイアはあの時のことを思い出すように目線を動かす。
Sランク認定されそうな魔物を倒したとか反王国組織を潰したとかは聞いたが、詳細な経歴は聞かなかった。必要でもないと思ったのかもしれないが。
「まあいっか。総隊長は知っての通りリーデライト殿下だね。私が入った時はまだ国王陛下が務めてたけど。で、第一隊は戦闘魔法士の集まりだね。そこは話したけど、私も最初は第一だったんだよ。騎士団と連携して戦闘を行うのが主な役目。って言っても中距離から遠距離だけどね。私たちみたいに魔法剣で突っ込んだりはしないから」
初級から中級の魔法を使う近接職もいるが、多くは前進の為の目眩ましや後退のための一助でしかない。接近距離で武器と魔法を交互に使っているのは片手で足る程度しか見た覚えがない。
それとは逆の“近接武器を多用する魔法使い”は基本的にいない。詠唱が必要である以上は接近戦を行いながら大魔法を使うのは余所見をしながら戦うのと変わりがないし、武器の練度と魔法の練度もそう簡単に両立できない。詠唱を必要とする魔法使いにとって発声に支障をきたす距離はすなわち相手にとってのキルレンジなのだが、その直径部分を小さくするのは一筋縄では行かない。
そこを騎士とカバーし合うという戦い方もあるだろうが……騎士団と魔法士団が統合されるような未来は当分来そうにないかな。
「で、第二隊は支援魔法士の集まりだね。基本は現場で兵站を確保する仕事かな。進軍のための道を作ったり一時拠点を作ったり。飲食の補給とかを担保する役割。もちろん戦わないわけじゃないよ」
だろうな。道や砦を作るなら騎士も含めた本隊の前に出なきゃならないだろうし、乱戦になれば「補給係だから」なんて言ってられない。急な配置転換もあるだろう。だからか、殿下が第二隊に対して魔法の巧拙や機転を重要視していたのは。
「あとは、災害のときに前面に立つとかかな。その場合は第一や騎士団が防御に回ることもあるね」
なるほどね。進軍インフラを整えられるなら災害救助や臨時復旧にも力を発揮できるか。良く出来てる。自衛隊も同じような事をやってたな。どういう隊員が担当してたのかとかは知らなかったけど。
「ん? 第三隊の役割は? 話を聞くにその二つで十分に思えるけど」
「第三隊は特殊な魔法士の集まりかな。というか、私が士団に入ったからできた感じ?」
うん?
「特殊? フレイアが入ったから?」
「ほら、前に殿下も言ってたじゃない。『炎魔法が強すぎて足並みを揃えられない』って。私は基本でそれだけど、大魔法に特化した魔法士ってそれなりにいたから第三隊としてまとめたわけ。で、さらにそこに元々あった研究班を取り込んで戦術分野と魔道具分野を統合したの。アンナは兼務になっちゃってるけど、元々そっち担当ってことで入団したんだよね」
そういえば言ってたな。“曲者の集まり”ってのもそういうことか。
「だから遊撃部隊として動くとか、大規模魔法を使ったときにどう連携を取るかとか、基本属性以外の魔法の使い道とか、魔道具による魔法の再現全般とか。そういうのを研究してるところ……かな」
なるほどね。歩兵とか砲兵の大隊にいきなり戦車……いや爆撃機が混じったら立ち行かなくなる。それなら「一度構成を分離して有効な編成や運用方法を探そう」ということかな。
「こんな感じかな」
「よくわかった。ありがとな」
「いえいえ」
教師のような顔をするフレイアに苦笑する。また一つ炎皇の与えた影響を知ってしまったわけだ。
それにしても、アンナさんってもともと研究畑の魔道士志望だったんだな。それが巡り巡って特殊遊撃班の班長みたいな役割に。人生何が起こるかわからないものだ。
まあ、アンナさんなら隊長職も上手くこなすだろう。なんだかんだでフレイアを支えてきたんだから。リーデライト殿下もいるわけだし、案外総隊長補佐みたいな役割まで上り詰めたりして。なんてな。




