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風魔法使いの転生無双  作者: Syun
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Offstage 二つの世界の知識全開で話そう

「それにしても、魔法があるだけでとんでもなく普通の世界なのよねこの世界」


 軽い駄々っ子状態から落ち着いたレインノーティアさんは、これ以上なく残念そうに言った。


「まあ、地球の月も重力が六分の一だからって物理から逃れられるわけじゃないはずですからね。科学はどこでも同じ結果が出るものですし」

「いやそれもそうなんだけど、いわゆるチートだのスキルだのステータスだの。地球になかったものなんて一切ないし、人生ハードモードは変わらないのねってこと」


 あ、そういう。


「確かに、ステータスくらいは社会構成的にはあっても良さそうなのにとは思いました。システムじゃなくて計測機構みたいなものでも。最低限、水晶に手をかざしたら色が変わるとか」

「そうそう。レベルもないからいま自分がどれだけ強いのかとかわかんないからなぁ」

「んー、ギルドランクがそれと似たような役割はありますけど、それだって不正はできますからね」

「だねぇ。その辺りは前の世界でも一緒だけどさ。むしろ個人確認が怪しいこっちの方がズルはしやすいよね。魔法も成長で覚えるとかじゃないし、魔力が増えても威張れるわけでもなし」


 とは言え、ステータスってそもそもプログラムの内部情報とかなんだろうとは思う。それがあるってことはそれこそ世界がプログラムされたものであるってことで、そういう意味じゃここは現実だという証拠の一つなのでは。

 いや、論理として成り立ってはいないかな。テストの点だってある種数値の可視化だし。


「でもそういう発想が出るってことは、レインノーティアさんはゲームとかやってたんですか?」

「人並みにはね。アドベンチャーとかが多かったけど、他のジャンルがメイン要素になってるのとかも結構あったから。もちろん、剣と魔法のRPGもやったよ」


 となると、違和感があるというか予想とは全く違う世界だったわけだな、レインノーティアさんも。


「まあ、ゲームを現実にした世界だったりして、体力数値一の超瀕死状態でも生きてるなんてスプラッタホラーとかゾンビ映画みたいなことにならなくてよかったなあって思ったりもしたけどね。手足が千切れても問題なく動けて、回復すれば繋がったり生えてくるとか。もしくは斬られても殴られても外見上はダメージがないとか」


 ああそうか、ゲームだとそういうのもあるのか。具体的に表示されてないだけで。

 それはそれで色々イヤな世界だな。死が遠いんだか近いんだかわからなくなる。


「でも変なものは色々ありますよね、ポーションとか。割と謎の産物じゃないですか? 漢方薬とか栄養ドリンクで回復してるみたいなものですよね」

「でもポーションで良かったんじゃないかな。文字通り道草食って復活って、今思うと嫌な図じゃない?」


 道草。薬草か。すごい言い回しだな。その辺に生えてるんだから間違ってはいないんだが、想像するとたしかにヤバい光景だ。人の家に押し入って物を壊したり盗んだりしても無罪になるような世界はありえないだろうが。


「ていうか、ポーションって社畜にとっては無敵の飲み物よね。経営者にとっては神の雫。案外侵略されても押し付けたら嬉々として帰っていくんじゃない?」

「そうであったら笑い話ですけど、それもそれで地獄絵図ですね……」


 特に帰還後が。それこそゾンビ映画みたいになりそうだ。

 世界って、割と微妙なラインで保ってるんだな。もしくはこの世界の善性が強いのか。


「魔法自体もあんまり使い勝手よくないよね。回復魔法くらいは覚えたいと思ったけど適性の問題があるし。解明されてないだけかな」

「かもしれないですね。四大属性を検証することはできても他の属性は難しいですから」

「だよね。ポーション残業もだけどその辺り割と人権はキッチリしてるのよねこの世界。アングラな部分ではわからないけど表向き奴隷はいないし。その点しっかりした世界で良かったかな」


 そうなんだよな。世界が平和だっていうことが大きいんだろうけど。あと、各国の一番上がちゃんと真っ当だっていうのもあるのか。

 労働のいくらかの部分を冒険者が担っているというのもあるのかもな。一般クエストの話もあったわけだし、フレイアみたいな出世は戦闘職に限らずあるんだろうし、職業適性診断としても有用なのかもしれない。

 あとは、隷属させるような魔法や魔道具が今の所ないのと、武器がなくても魔法で誰でも容易に反撃できるからだろうか。下手したら一般市民の方が細かい魔法の扱いに長けている可能性もあるからな。


「でもほんとにちょっとくらいはスキルみたいなのが欲しかったなぁ。カッコよく呪文を唱えるくらいしか無理なんだよねー。それもほぼ決り文句で決め台詞じゃないし」

「カッコいい呪文ですか? 詠唱してるフリだけすればいいのでは?」

「え? フリ?」

「です。『くらえ、神の雷!』」


 そう言いながら、取り出したハンカチを風魔法で操る。とっさに思いついた文句だが、雷要素は一切ない。


「みたいな」

「いや、『みたいな』じゃなくて。詠唱として成り立ってたの今の?」

「魔法を使うのに要らないですよ、詠唱」


 ハンカチを片付けながらそう言ったら、レインノーティアさんは口と目をカッ開いてフリーズした。乙女がする顔じゃない。


「ちょ、ま! どういうこと!?」

「さっき自分でおっしゃってたように抑揚や息継ぎもいじれるし、みんなそれぞれ文言も違う上に変わったり変えたりしていくわけですよ? 必須のものじゃないでしょ? 一般的には安全装置みたいなものでしかないそうです」

「うわああああ、言われてみればそうだああああ!」


 絶叫。

 なんだろう、そんな恥ずかしい呪文とかだったんだろうか。たしかに、文言と人によっては赤面ポエムになるのかもしれないが。


「待った待った。わたしひょっとして超絶遅れてるかもしれない。転生のアドバンテージすらほとんどないかも」

「そうですか? たぶん超回復みたいなのは試してみてるでしょう? レインノーティアさん、普通の人より魔力多いですし」

「それはうん。そういうのはテンプレっていうか。レベルが上がらないなら生まれたときからある程度決まってるだろうけど、そういう定説もないから筋力みたいに成長するんだろうなって試したらそうだったから……いや待って。魔力量がなんでわかるの」

「オレも魔力を探知できるからですよ」

「えちょっと待ってすごいことサラッと言わないでどういうこと待って」


 手で制された。何かおかしなことを言っただろうか。


「魔力を探知って、ナニ? “オレも”って、わたしはできないんですけど? 転生もそうだけどそんな魔法この世界にはないんじゃ?」

「そうなんですか? 魔力が増えてることがわかったって言ったのでできるものかと」

「ホントにサラッと言うー。それは魔法の持続時間とか威力で把握しただけ。どうやったらそんなことできるの」

「探知は魔力でやるソナーみたいなものですかね。そもそもの魔力を見るのについては、オーラみたいなものなんだろうなって思ったら見えた感じですか」

「なるほどね。たしかに、使いすぎると気持ち悪くなったりするからそうなのかもね。って、ユリフィアスくんってこっちに来る前からオーラとか霊とか見える人だったりしたの?」


 よくテレビに出てたなそういう人。転生前ごろにはそういう番組ほとんどなくなってたけど。


「まさか。魔法が使えるとわかったら自分の中の魔力を把握できたほうがいいだろうなと思ったんです。遊びで座禅とか瞑想とかしたことはありましたから、そのノリでですね」


 オーラなんかと違って、魔法の元としてそこにあるとわかってるものだからな。武芸とかやってなくても掴むのは難しくなかった。


「ついでに、当然ですけど霊視もできませんよ。一般人でしたから」

「それはなんか安心する」


 この世界にも、死しても魔力で動き続けているアンデッド系の魔物はいる。だが、幽霊についてはそもそもいるのかもわからないし聞いたこともない。見たことないって意味だけなら精霊はいるし話してみたいと思うけど。


「はあ。わたし考えが甘かったわー。もっと魔法に興味持つべきだったかも。ついでだけど、物を異空間に収納するような魔法とか使えたりしないよね?」

「それは無理ですね。異空間がどこなのかって問題もあるでしょうから」

「そうだよね。この世界だとさすがにそれは無理だよね」

「魔法が発達すればできるようになるのかもしれないですけどね」


 空間圧縮を解除してポーションバッグを取り出す。


「現状だと、空間領域を圧縮して体積を可能な限りゼロにすることなら」



「チートじゃんチートじゃんチートじゃんユリフィアスくんチート野郎じゃん!」



 襟首を掴まれて揺さぶられた。掴んだ鞄の中のポーション瓶がガチャガチャと音を立てる。


「れれれれいんのーてぃあさんすとっぷすとっぷ」


 世界が何重にも見える。このどこかに異空間があったりするかもってそんなわけ無いか。

 オレの首から手を離したレインノーティアさんは、床に崩れ落ちた。


「ああ、やっぱり若さと柔軟さか……三十代は駄目か……」

「……大丈夫ですか?」

「ごめん。ちょっと放っておいて」


 うーん。発想がおかしいとは言われ続けてきたが、やっぱり気軽に口にしないほうがいいのかこういうのは。

 しばらく待っていたら、レインノーティアさんが立ち上がって拳を突き上げた。


「ユリフィアスくん。こうなったらわたしもがんばるよ。そういうアイディアいっぱい考えておく。で、お仲間さんと話して実用化できないか試させて」

「わかりました」


 オレには無い発想もあるだろうし、知識もあるだろう。きっと役立つものが出来上がるはずで、



「魔法家電で生活を豊かにして、プールサイドで水着とグラサン装備でキンキンのトロピカルドリンク飲むんだ!」



 ……正直なところ。

 拳を突き上げてしたその発言が一番恥ずかしいと思ったのは、黙っておいた方がいいのだろう。目を輝かせている彼女のためにも。

 マンガなら、その妄想図にキラキラ描写と「バブリー」とか「ブルジョワー」みたいなアオリが入ってるのかね。まあ、楽しそうではあるからオレも手を貸そうか。状況が整ったら。

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