#恋って⑤
りなと別れてから2週間くらいたって
月も変わって、ゴールデンウィークに入った。
とは言ってもバスケ部もそこそこあるし、
長期休みだからって
家族旅行したりとかする家でもないので、
授業が無いだけのダラダラした休みを過ごす
…はずだったのに。
なぜか、こうして学校に来て補習を受けてる。
4月末の小テストそんなに悪かったっけ、
と思い返してみるけど、まあまあその通りで、
相澤にでも勉強教えてもらえばよかったなと
後悔しながら、学年の補習組10人くらいで教室に残され
俺は英語と世界史の問題を解かされてる。
こういう時に、純平は居なくて
あいつは補習受けないギリギリのラインを
うまーくとって生きていて、
めちゃくちゃ勉強ができる訳じゃないけど
人生のさじ加減が上手いやつだなといつも思う。
数時間たち、この日の補習が終わって
帰り支度をする。
昇降口に向かって歩いていると、
階段で相澤と遭遇する。
「翼だ、まさか補習?」
と笑いながら聞いてくるからちょっとムカついて
「お前はなんでいんの?」と聞いたら
「図書委員の仕事で」と返される。
こいつ図書委員か、
委員会って休みも働いてて大変だな。
ブラック企業みたい。
相澤は俺に、がんばってね、と声をかけて
自分の目的地に向かおうとするけど
休み前に出されたそこそこの量の課題を思い出して
そのまま相澤を呼び止め、
「なあ、勉強教えて」
って頼んでみると
「え、別にいいけど」
とあっさり返されて ちょっと意外だなと思う。
あんまり人と関わりたくないタイプかと思ってた
こいつひとりでいることの方が多いし。
委員会終わるまで待ってて、と言われたので
コンビニ行ってお菓子と飲み物を買う。
あいつなに飲むんだろ、
ジュースとかあまり飲まなそうだけど。
分かんないからとりあえず
無糖のストレートティーを買って
大人しく自分の教室で待っていた。
しばらくして、相澤が教室にくる。
「先始めててくれてよかったのに」
「やる気起きねえもん」
「え、自分から誘ったのに?」
ちょっと笑って俺の横の席に座る。
「これお礼ね」
ストレートティーを渡すと、
目を丸くして驚いてる。
そんなびっくりするか?
「ありがと、さすがイケメン」
って煽ってくるから
こいつよく分かんねえな。
そこから2人で勉強を始めた。
俺は課題をやって、
相澤は横で違う勉強をしてた。
聞いたら授業の課題はもう全部やったらしくて、
数学の問題集を解いてるらしい。
「分かんないとこあったら聞いてね」
と言われたので、とりあえず補習くらってる
英語から手をつけるけど全然わからん。
「…読めん。」
「英語? 俺も苦手なんだよねー」
「お前苦手な教科とかあんの?」
「あるよ、そりゃ(笑)
理系だから文系科目は比較的苦手かな」
「へえ」
でも、それで学年首席ってことは、
それだけめっちゃ勉強してるってことか。
ここはこの構文だから、こうで と言って
教科書と合わせながら説明してくれる。
頭いい奴って教えるのも上手くて、
すごく分かりやすかった。
夕日が傾いていた。
気づくともう夕方の5時で、
課題もけっこう進んで英語は全部終わったし
数学も半分くらい片付いた。
いい時間だし、ここらで切り上げて帰ることにした。
「今日はありがとな」
「いえいえ、分かりやすかったならよかった」
帰り道、色んなこと話した。
電車で3駅くらいのとこに住んでるとか、
弟にもよく勉強教えてるけど
高校受験だから今年は大変になりそうとか。
このあとは図書館に寄ってまた勉強するらしい。
努力もあるけど好きで勉強してんのかな。
相澤も俺も、お互いすごい話すタイプではないけど、
聞き上手で、純平とは違った雰囲気が
心地良いやつだなと思った。
「じゃあ、駅こっちだから」
「おう、また」
相澤と別れて
今日はすげえ勉強したな、と
自分にちょっと感心。
とはいえまだ補習も2日くらいあるし
課題も全て終わったわけじゃないけど、
自分にご褒美ってことで
なんかケーキでも食べたい気分になった。
相澤の連絡先も聞いたし
また勉強でも教えてもらおうかな、
なんて考えながらコンビニに入ると
「あ」
という声。
目線を合わせると
あの、ミルクティーの女の子がいた。