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Not Found  作者: れい
高校生編Ⅰ -出会いと始まり-
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新学期、新しい風①


桜が舞う4月。今年の春は少し暖かく、僕らの新たな1年の始まりを祝福しているかのようだった。


新しい季節に浮き足立っている同級生を横目に昇降口のクラス表を確認する。

苗字が相澤である自分は表の1番上を順に見ていけばいいので、分かりやすくてありがたいと思う。

今年は2-Bか。

ざっとそのほかの名前を確認すると1年の時に仲の良かった人達は皆別クラスに散ってしまっていて、また一から人間関係を築くのかと思うと、楽しみなようで少し億劫なようで。

そんなことをぼんやり思いながら、体育館に向かう。

半分くらいの生徒は既に集まっており、一緒のクラスだ、別れた、やらなんやらの会話でがやがやしている人波の中を抜けて、2-Bと書かれた紙の一番前の席に座った。


始業式。

この学校では新入生も含めた全生徒が広い体育館に集められ、校長の挨拶や教師の紹介など定番の流れが続く。

僕ら2-Bの担当は今年赴任してきた女性の方で、担当教科は英語らしい。少し背が低くて、おそらく20代半ばくらいであろうか。世間では可愛らしいと表現される容姿をしていて、男子生徒から人気になるんだろうな、と予想がついた。


続けて学年首席の発表があり、1年の首席は新入生代表の言葉をご丁寧に述べる。

去年の始業式では自分が新入生代表の言葉を言う羽目になったので、よく覚えているがこれって何か意味があるのか、甚だ疑問であった。

そしてまだ式は終わらず、その後に総代の挨拶が続く。

この学校は特殊で、始業式の2週間前に全学年の統一テストが行われ、そこで成績の最も優秀だった者が総代、各学年の成績最優秀者が学年首席になる仕組みだ。実際、総代と言うのは3年の首席とほぼイコールであるので、この長い式で挨拶をしなくて済むのは2学年首席のみである。

「第2学年首席、相澤流星」

起立し、その場で「はい」とだけ返事をする。

これだけで、あとはぼーっと過ごせる始業式に少し嬉しくなり、来年はこうはいかないな、なんて考えてみる。


「…第1学年首席、隼瀬はるか」

続けて1年の首席の名前が呼ばれるが返事がない。

「隼瀬、返事をしなさい」

司会の教頭がマイクを通してそう伝えるが反応がない。

周りにいる教師陣、新入生達もきょろきょろして隼瀬という人物を探すのだが見つからないらしい。

「えー…、隼瀬は欠席のようなので…新入生代表の言葉は割愛します。」

珍しい年もあるものだ、自分もそうやって逃げればよかったのか、とも思うが逆にその後の学校生活で目立ちすぎるか、という懸念にかき消された。

このあまり見ない展開に、会場後方の新入生が座っている辺りは少しのざわめきと、なかなか感じない空気が漂っていた。


教頭は、場を正すためにひとつ咳払いをしたあと、マイクにのせて大きなため息をついた。

「えー、今年度の総代は、第1学年首席隼瀬はるか。…ですが欠席のため、総代の挨拶も割愛します。」


これにはさすがに会場全体がどよめいた。

ソワソワしていたであろう3年、あまり見ない展開を面白がる2年、新しい学校生活の始まりに不安を感じる1年、などどよめきの正体は様々だった。

1年で総代をとった挙句、高校生活の初日に欠席し全校生徒に強い印象と衝撃を残した、その新入生に自分自身もとても興味が湧いた。

だって、どこかのラノベでありそうなチート展開みたいだなって。俺はそんな目立つことしたくないけど。

しかしただ純粋に、そんな人と同じ学校で会えるかもしれないと思うと、高校2年の始まりがすごく楽しみに思えて、自分が入学した時よりもずっとこの新しい季節にわくわくしていた。

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