書けないノベリストと偉大な農家。
新しいノベルの開拓点となる小説。
俺の名は山崎 聡太。日本の都、奈良県の橿原市で
小説を書いている。この橿原市は仏壇は勿論、さくらんぼの
名産地でもある。俺には父に吉道と言う名の
父がいる。いつも、畑の土壌管理を怠っているが、
大地主で敬虔深い仏教徒である。叔父さんは
「いつもありがとう」と母である久美に
世話をする父に感謝している。吉道父さんは久美の介護に
疲れるなあと言いもせず、一生懸命である。
俺は、父に代わり農家をしている。父は野菜を育てる
才能を俺に見出し、土地を譲ってくれた。父は
もっと家族サービスとして色んな酪農の楽しさを
広めたいようである。俺は、土地神様がいるという
龍尾神社と言うところへ行った。龍尾神社は農家の
間では有数の土壌開発の神様、「泥蚯蚓様」を祀っている。
蚯蚓の親玉である泥蚯蚓様はある日、
恵比寿の髭から生まれた神様だと神社の立て看板に書かれて
いた。僕は父さんが疲れているから農業が出来ないんだと
思った。思えば父さんも俺もお爺さんと中年である。
これ以上、農業はできない身体だと思った。
知り合いには、父さんは牛の如くのんびり生きたい人だと
語った。知り合いもいつまで農家ができるか分からない。
俺はその日(泥蚯蚓様を訪ねた日)、美しい女性を見かけた。
俺は独身だが、彼女も独身だった。指輪は付けていなかった。
父吉道の通う病院の帰り道、俺はその女性がヘルパーを
しているのだと知った。母である久美はそのヘルパーさんと
俺を会わせ、恋仲にしたいらしい、
俺は当然良かった。女性の名は財部 美代といった。
美代さんは、家の父と母に優しかった。
龍尾神社に行って、よく祈祷をしていた。
水かけの禊で、身体を冷やしこうも言ってくれた。
「どうか、山崎家の方々をお救い下さい…」
何度も、恵比寿の使いである泥蚯蚓様にお願い
してくれた。それから、暫くの後、俺は美代さんに
告白した。精一杯、介護した父と母の姿は
子供の頃に戻ったかのようだった。俺は一人の子をもうけ、
倫子と名付けた。倫子は働き者の女の子になってくれた。
いまでも時々、美代は龍尾神社に梅の花を献花している。
農業の方に集中したい。