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狂笑の召喚士  作者: 童慈
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5話

ヴェルトさんに連れられ訓練場にやってきた。


訓練場はかなりの広さがあり、動く的に魔法又は矢を撃ち込む者。訓練用の木剣で切り合う者。拳を打ちつけ合う者。様々な冒険者が各々の実力を高めんとしていた。


「訓練場ってもっと人がいないイメージだったんですけど、実際はこんなに熱気ある場所なんですね。」


思っていた訓練場との差異に驚いた。しかしよく考えてみると、この世界では魔物と言う脅威が当たり前に存在する。すなわち力ない者は淘汰される事が当たり前の世界。実力をつけようとするのは冒険者なら当たり前なのかもしれないと思った。


「いや、ここが特殊なだけで実際はお前が言う通りだぞ。」


だがその考えはギルド長に正面から否定された。


「この辺境都市アルボルは広大な樹海型ダンジョン『万魔樹海』から湧いてくる魔物の襲撃とリヒトゥ教国の狂信者供の布教《戦争》を抑えるボーデン王国の最前線だからな。」


「え、この街そんな物騒な街なんですか?」


「おうよ!数年に1回はダンジョンから溢れた魔物の大規模襲撃スタンピードがあるし定期的にリヒトゥ教国の狂信者共が「穢らわしい王国民め!浄化《殺》してくれるわ!!」と宣いながら布教にくる世界で一番暇をしない街だぜ!」


なんてこった。始まりの街は世界有数の危険地帯とは…。


「推薦状にお前さんが転生者って事と珍しい召喚士であること、まだこの世界の事をよく知らねえから教えてやってくれって事が書いてあった。だから今からお前を鍛える。」


「いや待て。なんでそうなる?」


普通そうゆう事が書いてあったら一般常識とか暗黙のルールとか教えてくれるもんじゃないの?


「冒険者になるお前に先達としてアドバイスをやろう。冒険者は実力が全てだ。いくら教養があろうと戦闘能力がありませんじゃ話にならねえ。それとお前この街に来た時にゴブリンに襲われたらしいな。」


「確かに襲われましたけどそれが何か?」


「さっき言った大規模襲撃スタンピードなんだがな一番多いのが鬼種の魔物によるものだ。これが起こると斥候として数百規模のゴブリンが街に襲撃をかけてくる。それの約1月後に本命がこの街に来るんだ。」


おっふ。転生してすぐにそんな重大なイベントがあるのは物語の勇者ぐらいなものだと思っていたのに、まさか自分が同じ目に遭うとは…


「鬼種の魔物の大規模襲撃で厄介なのはまず数が多い事だ。最低でも1万は来る上に、やつら武器も使うしスキルも使う。上位の奴になると知恵も回りやがる。そんな時に戦力を遊ばせておく余裕なんざねえ。」


真面目な顔から一変獲物を見つけた捕食者の顔をするギルド長。


「貴重な召喚士を遊ばせておく余裕なんざねえ。大規模襲撃の本命が来るまでの間に可能な限りシゴイてやるから期待しておけ。」


壮絶な笑みを俺に向けて来るギルド長。笑うだけで人の数人なら殺せるんじゃないかなこの人。


「さてシュバルツ。お前は何ができる?」


この状況でこの質問って事は戦闘手段か。


「闇・水・風の魔法と召喚魔法ぐらいですかね。」


「召喚魔法は想定内だが、3属性持ちとは驚いた。しかも闇持ちか…早速だがあの的に向かって魔法打ってみろ。」


「えっ?説明とかないんですか。」


このマフィアの首領は異世界に来たばかりのまだ魔法を理解できていない俺に魔法を使えと言うのか。


「安心しろ。俺の知り合いの魔法使いは「魔法は理論じゃない。感覚で使うものだ。」て言ってたからな。とりあえずやってみろ、全力でな。」


「はぁ、まあやってみます。」


ギルド長が顎で示した方を見ると100メートル先に的当てでよく見るような円状の的が設置してあった。


俺はロックさんから貰った腰にあるブックホルダーから本を取り出す。


この本はカラドリオスが俺に渡して来たものだ。


あの後本を開けてみると、紙が挟んであった。紙にはこの本を使えば魔法の威力向上・消費魔力の軽減ができる素晴らしい物だと書いてあった。これだけでもロックさん曰く、とんでもない代物らしいが、前二つはタダのおまけでこの本の本質は召喚魔法で呼び出せる物の制限の解除と召喚した物を本に記録する事で記録した個体を常に召喚することができ召喚中の魔力の消費をほぼ0にできることである。


それの何が凄いのかと言うと、召喚魔法は召喚時に一番魔力を消費するが、召喚中も召喚した物の格によって異なるが常に魔力を消費する。そして呼び出す個体は常に同一とは限らない。例えばスライムを召喚するとして、その時召喚されるのはスライムと呼ばれる種の中からランダムで召喚される。そしてこの世界では経験を積んだ魔物は成長しスキルを覚え進化する。


この本を使うことで召喚した物は敵に倒されるか召喚を解除、又は召喚主が死亡しない限り存在し続け戦うたびに強くなる。そしてこの本は決して壊れず決して奪われず決して朽ちない魔道具でもあるらしい。因みに送り主はハスターである。


紙の裏に『祝、ハスター召喚祝い。』と書いてあった。意外と愉快な邪神様である。


今はその力ではなくおまけの能力を使うつもりで手に持った。左手に本を持ち右手には魔力を集めるイメージをする。


左手に集まった感覚が強くなり魔力が集まったのがわかる。


次に左手の掌の中に全てを貫く漆黒の槍をイメージする。すると掌の中に全長1メートルほどの漆黒の槍が形成されていた。その槍に更に魔力を注いでいく。


魔槍は魔力を吸って大きくなっていき形も変形していき数秒程で全長が倍になった。そのぐらいでいいかと思ったがギルド長が全力でといったし、自分の限界を知るいい機会であるし限界までやってみよう。


時間が経つにつれ巨大化していく漆黒の魔槍。それを眺めるギルド長と、新顔に興味を持ち訓練の途中で集まってきたギャラリー。


「ギルド長、あれ新人ですか?」


「おう、今日来たばっかだ。魔法型だからとりあえず打ってみろっつったんだが…」


ギルド長と古参の冒険者が話をしている目の前で巨大化していく魔槍。


「あ、あの、ギルド長。」


「どうしたミリ、お前から話しかけて来るなんて珍しい。」


人見知りが激しく、パーティ以外の人間に自分から人に話かけることが殆どない凄腕コミュ症魔法使い、ミリが珍しくギルド長に話しかけた。珍しい事に顔をそちらに向ける。


「あ、あれ闇魔法で、ですよね。あ、あの魔力量の魔法で、や、闇魔法だといくらアダマンタイト製の的でも、あ、危ういと思うのですが…」


「ミリ心配しすぎじゃないか?いくら全属性の中で最も威力に優れた闇魔法といえどもオリハルコンの破壊は不可能だと思うのだが。」


ミリと一緒に見に来ていたパーティメンバーのアランが疑問を呈する。


「ま、的は大丈夫だと思うけど、ま、的で炸裂した魔力で、へ、へたすると訓練場にいる皆が、ふ、吹き飛ぶかも…」


ミリの意見を聞いてシュバルツに打つよう声を掛けようとして今までそらしていた顔をシュバルツの方に向ける。


するとそこには全長10メートル程に巨大化し穂先が複数に枝分かれした魔槍を構え的を見据えるシュバルツがいた。


「おい!シュバルツその辺で投げとけ!」


流石にやばいと思ったギルド長はシュバルツに声をかける。


ギルド長の声に集中がとけハッとする。集中している間にとんでもなくデカくなった槍に驚きつつも、魔法名を唱え的に向かって投擲する。


万物引き裂く(ゲイ・)黒の魔棘(ボルク)


投擲した槍は的までの距離を一瞬で食い潰し、的に当たるととてつもない衝撃を撒き散らし破裂した。


「うおおおおぉぉぉぉぉ!?」


衝撃をモロに食らった俺は風に舞う塵のように空を舞った。

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