表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

第四幕

<第四幕>


   申の刻 


   老女、浪人、虚無僧、薬売り、四人には各自銘々暇を持て余す。だが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のが気がかりになっている。

虚無「何か嫌な予感がする。ちょっと、その辺を見回ってくる」

浪人「俺は厠じゃ」

薬売「どっちかは、居てくれまへんか。わては婆さんをよう守らんで」

浪人「商人(あきんど)、ここでしろと言うんかぇ」

虚無「すぐに戻るから心配するな」

薬売「へいへい、お侍様もお坊様も、はよう帰ってきてや」

   浪人と虚無僧、()()()()()()、この場を離れる。

薬売「婆さん」

(声)「ぎゃあ」

   耳をつんざくような悲鳴が境内に響き渡る。

   虚無僧がこの場に急いで戻ってくると、老女が首のない状態で倒れ込んでいる。

薬売「化け狐や九尾の狐や」

   ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

浪人「何事じゃ。婆様が死んどるやないか。誰やったんじゃ。化け狐か、殺しちゃやる」

薬売「()()()()()()()()でおま」

虚無「薬売り、貴様の()()についている血は、どういう事なんだ」

   薬売り、慌てて口許を拭う。

浪人「商人、てめえがやっぱ化け狐か。()()()()()()()()()()()()()()()。誰も銭なんぞあるか」

薬売「わて、化け狐なんかちゃいまっせ。堪忍してや」

浪人「問答無用じゃ、婆様の仇、死ねや」

   浪人の刀が薬売りの体を引き裂く。薬売り、即死する。

浪人「どういうことや、()()()()()()()()()()()()()()()()んちゃうんか」

虚無「薬売りは人間……」

   虚無僧、額に両手を当て考えこむ。

虚無「お侍様、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、と言ってた。それに、お侍様は()()()()()()()()()()()()()()、とも言った。()()()()()()()()()()()()()()()()に、九尾の狐を退治するの、やね」

浪人「なんや、クソ坊主、俺が化け狐とでも言うんか。クソ坊主、てめえ、俺を嵌めたつもりかもしれんが、甘いんじゃ。なぜ婆様の為に経を詠んでやらんかったんじゃ。()()()()()()()()()。それにほんまに商人の()に血があったんか。俺はてめえの言葉を信じて商人を斬った。けどなあ、俺が見た時、商人の()に血はなかったんじゃ。てめえこそが化け狐じゃろが」

   浪人、虚無僧に刀を向ける。そして虚無僧は懐刀を出し対抗する。

虚無「愚かな」

浪人「くそ坊主、やっぱてめえが化け狐じゃねーか」

   肉を斬る音、ダンと何かが倒れる音がふたつ。



<終幕>


   廃寺にて   

 

   マタギの独白。

又鬼「可哀想にのう。()()()()()()()()()()()()()()。南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏。()()()()()()()()()()(・や)()()()んやな。どれ、わいが葬ったるさかい、成仏しいや」


  了

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言]  とても短くて読みやすかったです。  物体Xが誰なのか、疑念が疑念を呼ぶ怖さがありましたね。  疑い始めると何でもないことが疑わしくなる。  ほぼセリフで勧められて、狐は誰なのかがこのお話の…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ