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ねこねこパニック!

作者: ごごまる
掲載日:2020/02/22

 猫の日ということで勢いに任せて書きました!

 猫――。

 それは人を殺すほどの力を持つ極悪な生物。

 今までに何人が殺されたか、何人を犠牲にしたか。

 俺もその被害者だ。


 だってこのかわいさ。殺しにかかってんだろ――。


「かわいいなぁ、かわいいにゃぁ。マジで猫いいなぁ」


 猫宮(ねこみや)文人(あやと)は猫が大好きだった。

 休日は猫の写真や動画を漁り、頬を緩ませるのが楽しみ。

 猫宮なんて姓が関係しなくとも、多分猫好きになるような性格だっただろう。


 しかし、大の猫好きなのに文人は猫を飼っていない。

 その理由は妹、文香(あやか)にあった。


 彼女が猫アレルギーで、飼うに飼えないのだ。

 それに猫を見てデレデレする兄のことを冷たい目で見ている。


「ただのいち生物を見てるじゃん。ト兄(とにぃ)が語尾に『にゃぁ』とかキモ……」


 この前はそんなことを言われた。

 ちなみに、そんな彼女自身が好きな生物はヘビらしい。

 うーん、理解できん。


「ま、今日くらいは楽しんでいいだろ。なんてったって、猫の日なんだし!」


 2月の22日。

 にゃんにゃんにゃんの日だ。


 SNSには猫の話題で持ちきり。

 写真や動画もいつもより多く供給されてくる最高の日。

 朝早くに目が覚めたのは、本能で猫の気配を感じたからかもしれない。


「あーあ、アヤカが起きなきゃいいんだけどな……」


 午前8時――。

 休日と言えど、そろそろ妹が起きそうな時間だ。

 至福の時間もキモいだの何だの言って邪魔するに違いない。

 アイツ自身、猫目なクセによ……。


「いやぁ、それにしても猫ちゃんかわいいなぁ。にゃぁ、にゃぁ」


 思考が溶けていた、その時――。


「ト兄! 起きてる!? どこにいるの!」

「リビングだぞー」


 妹がやけに慌てた声で呼んできた。


 あぁ、もうおしまいかな。

 いいや、何を言われても今日は猫を愛でるが。

 猫カフェに行ってもいいかもしれない。


「ト兄! 見て、これ!」

「あぁん? 今日は学校ないから遅刻してねぇぞ、って……」


 なんじゃこりゃ――。

 いやもう、ホント。その一言に尽きる。


 妹の頭部には絶対にないはずのものが生えていた。

 これは、まるで……。


「猫耳じゃねぇか!」

「だよね! やっぱりそうだよね! どうしよう、病院行ったほうが――」

「触らせてくれ! モフりたい、今日はすっごいモフりたいんだ!」

「はぁ!? こっちは本気で相談してるんですけど!」


 文人は文香に飛びつき、髪を撫でた。

 耳の付け根を撫でたりすると、ある変化に気がつく。


「やめ、やめてよ! 気持ち悪い!」

「……待て。お前、ちょっと丸まってないか?」


 撫でられてリラックスした猫が体を丸めるように、文香の体も無意識に曲がっていたのだ。


「じゃあ、ここを触ると……」


 文人が撫でたのは顎の下。

 下から上へと指先でくすぐるように撫でた。

 すると、ゴロゴロと――。


「お前、気持ち良さそうな顔するなぁ……」

「はぇ? ……バッ! 何触ってんの、キモい!」


 やはり無意識。

 文香は我に返るとすぐに距離をとった。


 しかし撫でられてリラックスしたり、思わず喉を鳴らしたり。

 見た目だけじゃなく、仕草も猫になったかのようだ。


「そうか、これは神が俺に与えた褒美なんだ。猫の日くらい、猫を愛で放題にしていいと」

「待ってよ! 私、猫じゃなくて人間なんですけど!」

「いいや、今日だけは猫だ! おとなしく撫でられやがれ!」


 文香を押し倒し、顎の下を撫でまくった。

 猫動画を見たおかげで、文人は猫の気持ちいいスポットを熟知しているのだ。


「ほぉら、なでなで……」

「うぅん。うにゃぁ」

「えっ、今鳴いたのか?」


 さらにこしょこしょとくすぐってみると、文香は手を丸めて頬に寄せた。

 まるで猫が自分の顔をいじっているみたいだ。

 耳も揺れている。


「ふにゃぁ……。 うぅ……」


 またもや喉の奥でゴロゴロと音がし、完全に無防備な状態だった。

 かわいい――。

 あ、いや、いつもの妹がかわいいんじゃなくて。

 この、猫としての妹がかわいいのだ。


 調子に乗って、さらに撫でていると不意に妹が冷め始めた。

 少しずつ触る手を鬱陶しそうにしているのである。


「ト兄、もういらないにゃぁ……。って、え、私、何してたんだ」


 ハッと前を見るとどうだろう。

 兄に押し倒され、顎の下をくすぐったい手つきで攻められているではないか。


「キモいってば! どいて!」

「ふごっ!」


 猫パンチが飛んできた。

 まさに電光石火の早ワザ。

 早さが勢いに加算され、それなりに痛い。

 だが、文人の猫好きも甘くなかった。


「俺、猫パンチされるの夢だったんだよな〜。かわいいなぁ、もっとやって――」

「ひっ! 耳、撫でられると――」


 耳の付け根は敏感だった。

 だらしない顔で身をよじらせている。


「ふにゃぁぁ……。ト兄ぃ、気持ちぃよぉ……」

「ごぶっ――。かわいすぎて吐血するところだったぜ……」


 なんだか絵面がアウトな気もするが、これは猫を愛でているだけだ。

 何もいやらしくはない。


 文人が視線を落とすと、めくれた服から文香のへそが見えた。


「お腹、撫でてみたいな……」


 耳のふにふにとした感触もいいが、お腹もほどよい肉付きでぷにぷにしていそうだ。

 おや、それは猫と関係ない気もするが……。まぁいいか。


 ゆっくりと服の中に手を入れ、すべすべとした腹を撫でてみた。


「うぅん……。そこは、あんまり……」

「気持ちよくないのか? へそは?」

「うにゃん!」


 スポッ――と指をへそに突っ込んだ瞬間、文香が跳ね起きた。

 またもや猫パンチが飛んできて、人間としての人格が戻ってくる。


「も、もう近づかないで! この体、なんか変だよ!」


 そう言う妹はフシャー、と猫のように警戒心を露わにする。

 だが、そんな猫もメロメロになるグッズを文人は知っていた。


「猫じゃらし! さぁ、この誘惑に勝てるかな!」

「ふにゃ!? そんにゃ物、私に効くわけにゃい……」

「おや? 猫になりかけてるけど?」

「うっさい! そんにゃ、ゆらゆらさせにゃいでよ……」


 どうやら猫じゃらしの真価は揺らすことで発揮されるらしい。

 文人は妹の眼前で、小刻みに猫じゃらしを揺らした。

 口をボケーッと開けたまま、文香は猫じゃらしを目で追いかけてしまっている。


「はぇ……。うにゃにゃ……」

「強情だなー。さっさと飛びついちまえよ」

「にゃあ……。ふにゃあ……」


 丸めた手を出そうとして、引っ込める。追いかけようとして、思いとどまるの繰り返しだった。

 人間としての理性がまだ邪魔をしているらしい。


「ったく、しょうがないな。じゃあ、最終兵器だ!」


 野良猫と戯れたいがために文人が持っていた最終兵器。

 それは――。


「ほら、大好きなマタタビだぞぉ。匂い、嗅いでみろよ」

「ふぎゃん!」


 マタタビを吸い込んだ瞬間、文香の顔はみるみる紅潮した。

 動きものらりくらりとふらついて、まるで酔っているようだ。


「よしよし、おとなしくなったな。さて、また撫でさせてもらおうか」

「んにゃぁぁぁぁ……」

「はは。なんだよ、その情けない声」


 恍惚とした表情でぐったりと倒れる妹。

 文人はその姿をなんとも思っていなかった。

 ――はずなのに、突如魔が差した。


「……なんかエロいな」


 マタタビは猫を興奮させるグッズだとは聞いていた。

 しかし、まさかコレ、性的に興奮させるものなのだろうか。

 人間としての部分が残っている――いいや、むしろ人間のほうが多い彼女が性的に興奮してしまっては、猫ではありえない間違いが起こるかもしれない。


「やっべ……。何考えてんだ、俺」


 目の前にいるのは妹だ。それか猫。

 どちらも愛すべきものであるが、愛し方のベクトルが性的なものとは違う。

 いかんいかん……。


 そんな葛藤をよそに、文香は猫らしく伸びをしていた。

 尻を突き出し、うんと伸びを堪能しているようだ。


「って、尻尾も生えてんのかよ! うわぁ、触りてぇ……」


 願望を口にするが否や、文人は尻尾の付け根を触った。

 トントンと軽く叩くと、気持ちいいのかさらに尻を持ち上げてきて――。


「アウトだろ、このポーズ!」


 文人の前にあるのは文香の四つん這いな姿。

 尻をこれでもかと主張し、触ってアピールだ。

 猫ならよかったものの、人間の女性であるから余計な魅力が入ってしまう。


 今なら何しても許されるのではないか――。


 邪な気持ちが脳にへばりつき、離れない。

 それを解消するように尻尾を触って、また文香が尻を突き上げて。

 負のスパイラルであった。


「にゃぁん……。ト兄ぃ、もっとぉ……」

「その声やめろぉ! クソっ、今日は猫の日だろ! 猫として見ろ、猫として……」


 尻尾の下にある丸い肉。

 またその下に位置する股。

 見ると、グレーのズボンが少し黒ずんでいるではないか。

 何か水でもこぼしたか。


「いや、()()()()()()のか……? なんで?」


 性的に興奮しているから……?


 真実にたどり着いた瞬間、文人は猫カフェに向かって走り出した。

 このまま妹と対峙しては、間違いなく事件が起こっていただろう。


――――――――――――


「ただいま……」

「お、おかえり……」


 夕方になっても妹の猫化は治っていなかった。

 そのかわり服が着替えられていたのと、ゴミ箱に大量のティッシュ――。


「ト兄のせいで大変だったんだからね。ホントに」

「あぁ。()()、ご苦労」

「サイッテー! 何回したと思って――じゃなくて。ああもう、ト兄のバカ!」

「へぇ、何回?」


 猫パンチ。

 いいや、人間としての本気パンチかもしれない。

 顔からメリッと音がした気がする。


「いってぇな! へん、ティッシュの量で推測してやるよ! 後始末が雑だなぁ!」

「イヤぁ! マジで最低! キモい、死ね!」

「えっと、5? いや、10超えてねぇか? お前、どんだけ欲望盛んなんだ――」

「マ、マタタビのせいだから! 全部ト兄が悪いんだよ!」


 マタタビはとても恐ろしいアイテム。

 とにかくそれだけは学べた。

 あと猫カフェは最高だった。


「それにしても、なんでアヤカが猫になったんだろうな……」

「本当だよ! 太ももジンジンするし」

「え、その話、終わっただろ」

「ふん! 一生引きずってやるから!」


 フシャー、と文香。

 やはり猫。

 ずっと猫のままだったら、いつか理性がぶっ飛んでマタタビを――。


「妹と関係持つのは人間として終わってるよなぁ……」

「にゃんか言った?」

「おい、人間を思い出せ!」

「うにゃ、無意識のうちに……」


 結局、手がかりがあるわけでもなく、猫になった原因はわからず。

 猫の日の奇跡、と文人は思うことにした。


「あぁ……。明日になったら生意気なアヤカに戻っちまうんだ……」

「キモ。早く戻りたいわ、清々する」

「あぁもう! 猫を堪能したかったのに! おい、マタタビリベンジだ!」

「はぁ!? やめ、嗅がさないで、ひぎゃ!」


 猫の日の由来はその鳴き声から。

 にゃんにゃんにゃん、と。


 おや、にゃんにゃんの日にニャンニャンする兄妹が――。

 この話はもう猫と関係ありませんね、割愛。

 お読みいただきありがとうございます!


「ニャンニャンする」の内容は皆さんで考えてください。

 もしかしていかがわしいものを想像しましたか?

 いやだなぁ、大正解です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 記念日ネタがうまく物語に落とし込んであり、おまけに会話劇が軽妙。二人の関係性は微笑ましくも程々にエロティックで、塩梅もGOOD!面白く読み進められます。 [一言] はじめまして。とても楽し…
2020/02/23 01:21 退会済み
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