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第6章 15話

 本日より訪日観光客の脳を乗っ取り完了した『てんとう虫』さん達が各ダンジョンに向けて出発していく。もちろん旅行バッグには『菜の花』さんを連れている。この最強コンビがあらゆる情報を集めていくことになる、はじめの第一歩を踏み出したといってもいいだろう。


 お見送りをしようとダンジョンの入口に向かうと、既に準備を整えた集団が整列していた。僕たちの姿が見えると敬礼する。


 「みんな、毎回の長旅になるけどよろしく頼むよ。渡した麻酔薬を使ってなるべく大型の野生動物を確保してほしい。もちろん無理はしなくていいから」


 「お任せください、マスター。あと、『香川ダンジョン』の偵察に関してですが、予定通り『佐賀ダンジョン』を拠点に活動していきます」


 「うん。『香川ダンジョン』の近隣にダンジョンが出来て協力関係が築けるまでは少し遠いけどよろしく頼むよ」


 「はっ。かしこまりました。では行って参ります」


 「気をつけてね」


 ダンジョンの外にはエディが大型の観光バスとともに待ち構えている。もはや慣れたものだ。バスは東京駅を経由して羽田空港まで。静岡、山形、新潟のチームは東京駅で降り各々新幹線で現地まで向かう。佐賀には羽田から飛行機で福岡まで行き、博多から電車で向かう予定だ。


 「待ちなさい」


 ティア先生が呼び止めた。何か、ダンジョンモンスターならではの注意点があるのかもしれない。その目は真剣そのものだ。


 「ローテーションを組んで情報を持ち帰ると聞いているわ。あなたたち、わかっていると思うけどタカシ様も私たちも地の物を期待しているわ」


 「ティア様、地の物とはいったい?」


 「その土地ならではの特産品よ。その土地に住む人間を知るならまず特産品を知ることよ。情報と共に美味しい特産品を山ほど買ってきなさい」


 ティア先生、それを一般的にパシリという。


 「マスター、ティア様、特産品とやらご期待に沿えるよう厳選して買って参ります。それでは」


 僕もお願いした感じになってるけど訂正するのも面倒だし、もうそのままでいいや。僕も地域特産品って好きだしね。楽しみにしてるよ。




◇◇◇◆◆



 お見送りが終わると、レイコさんと一応ヨルムンガンドちゃんに今回の報告をして情報共有を図る。レイコさんからもエディとの商売関係で話があるかもしれない。とはいえ、ヨルムンガンドちゃんは『グラスウルフ』に跨がって僕とレイコさんの周りをぐるぐるしている。おそらく、話を聞くつもりはないだろう。


 「タカシさん、『栃木ダンジョン』のことレヴィちゃんから一通り聞きましたよ。『透明化』のスキルは変なことに使ったらダメですからね」


 いきなり釘を刺さなくてもいいんじゃないかな。まだ何もやってないのに……。こっそり練習してスキルレベルを上げよう。


 「普段は使わないから安心してよ」


 レイコさんが目を細めてジーっと見てくる。

 わ、話題を変えよう。


 「エディとの商談は順調そうだね。何か困ったこととかない?」


 「そうですね。多少無理を言ってるつもりはあるんですけど、対応が早くてびっくりしてるくらいです。まぁ、オネェ化したのもびっくりしましたけど」


 で、デスヨネー。ボクもビックリシタヨー。


 「他のダンジョンマスターのところに『菜の花』&『てんとう虫』コンビを派遣することになったんだけどそれは知らないよね?」


 「さっきのお見送りで何となく察したところです。どんな経緯があったらそうなるんですか?」


 「『栃木ダンジョン』が早期に攻略されたことでみんな危機感を抱いてたから、このコンビなら野生動物を使って人をダンジョンに近づかせないし、もし入ってしまっても大量の『菜の花』で仕留めやすく出来るよって提案したんだよ」


 「ティア先生が情報と特産品を持ってくるーとか言ってたのはついでの話なんですか?」


 「いや、そっちがメインだよ。マヒトくんの二の舞はゴメンだからね。しっかり監視させてもらおうと思ってね」


 「何というか流石ですね。気がついていたとしても断りづらいし、実際に助かるんですからね」


 「マスター、『グラスウルフ』を連れていった方が間違いないぞ!」


 ヨルムンガンドちゃん、残念ながら日本にはもう野生の狼はいないし、緑色のウルフは世界中探してもいないんだ。


 「うん。今度ねー」


 「また、適当なこと言って。良くないですよ」


 「だ、ダメなのか!」


 自信があったみたいだ。意外にショックを受けている。


 「違うの、ヨルムンガンドちゃん。『グラスウルフ』の方が強いし頼りになるんだけど、人間が見たら緑の毛はダンジョンモンスターだってすぐにバレちゃうの」


 「わ、わかったぞ! 養鶏場で塗ってた茶色いペンキがまだ余ってたよな!」


 「あっ、そ、それもダメー!!」


 「だ、ダメなのか!」


 ダメだろう。


 「『グラスウルフ』が可哀想でしょ」


 「わ、わかったよ」


 二人のやりとりを見てレイコさんの気苦労が少しわかった気がした。僕もたまにはパパやらないとね。『グラスウルフ』もよろしくな。


 「オォーン(やれやれ)

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