第6章 13話
「あーピースケ。他のダンジョンマスターの人と会談の準備を進めて欲しいんだ」
「マスター帰ってたっすか。そういえば新潟もようやく準備期間に入ったっすが呼ぶっすか?」
「呼んでよ。柿の種お兄さんにも挨拶させてよね」
「わかったっす」
さて、みんな集まったらどう説明しようかな。マヒトくんが日本政府に漏らした情報の共有がメインだよね。
柿の種お兄さんには何か渡した方がいいのかな。いつもピースケにお世話になっておりますてきなやつ。米どころ新潟だからね。日本酒とか好きかもね。
「ピースケ、お兄さんは何か好物とかある?」
「そうっすね。しょっぱい物が好きっすね。塩舐めながら日本酒飲んでるイメージっす。酒に合うアテなら何でも喜ぶっす」
なるほど。予想通りだな。あれっ? つ、つまり、柿の種そのものでもいけるということか。いや、さすがにどうだろう。ピースケだったら落花生もらったら……喜びそうだな。いやいや、初対面で失礼があったらまずい。ここは無難に『焼き蛤あさり串セット』にしておこう。これは浦安のネズミーシー沿岸で採れる人気のおつまみだ。これなら日本酒に合うだろう。
「了解。おつまみ系で準備しとくよ。それにしてもなんだか一気にダンジョンマスターの女性比率がアップした?」
「『新潟ダンジョン』が女子の三人一組っすから増えた気がするっすよ」
男性のマスターは千葉、山形、香川、そして消滅予定の栃木は消すとして。女性マスターのとこは静岡、佐賀、新潟。なんとなく半々ぐらいなんだね。リナちゃんとかモンスタードールズとかキャラの濃い女の子がいるせいでそう感じるのかもしれない。コウジさん一緒に頑張っていこう。
「マスター、みんな気にしていたみたいで新潟以外はすぐに来れるようっす。新潟も三人に伝えたらすぐ来ると言ってるっす」
「そっか。じゃあ会議室に集まってもらおう。女性が多いからスイーツ『プレミアム枇杷ソフト』を用意しておこうかな。あとは新潟の三人組用に『菜の花弁当』もね」
◇◇◇◆◆
「ど、どど、どうだったのよ!」
「やはり日本政府と組んでいたのか!」
「ちょっとー、二人とも落ち着いてよ。タカシ君も困ってるでしょ」
ミサキさんだけ落ち着いてらっしゃる。みんなにも冷静に話を聞いてもらいたいかな。
「とりあえず、『プレミアム枇杷ソフト』を用意したから召し上がってよ」
枇杷の果肉が上品な味わいと香りで爽やかな甘みを味わえる南房総市の逸品だ。
「あらぁー。スイーツを用意してるなんてタカシ君ポイント高いわぁ」
「あ、あまーい!! た、タカシ! アオイのお土産にいくつかもらっていくわ。あの娘甘い物も好きだから」
コウジさんも無言で召し上がっている。嫌いではなさそうだね。反応がいいと嬉しいな。あとでティア達にも出してあげよう。
「溶けちゃうから持って帰る量は気をつけてよ」
さて、そろそろ話を始めるか。
「えーっと、マヒトくんのことだけど。最初に言っておくけど彼のことは僕が殺した」
「そ、そうなのね」
「彼が日本政府と手を組んでいたのは本当のことだった。どうやら開通して三日後にダンジョンが発見され、成す術もなく特侵隊に攻略されてしまったらしいんだ」
「ちょっと待ってぇー。ダンジョンの管理権限を移行してボスモンスターになるという選択肢があるのよねぇ?」
「ミサキさんの言う通りなんだけど、マヒトくんにはその選択肢は最初から無かったんだ」
「な、なんでよ!」
「マヒトくんは僕のやり方が許せなかったんだ。彼が言うには、少しだけ早くダンジョンマスターになっただけなのに、運良くポイントを稼ぎ、凄い勢いで人類を敵にまわしていく。これじゃあ、後発のダンジョンマスターは潰されるだけじゃないか! とね」
「そ、そんな素振り……全然無かったじゃない」
「手を貸してくれたタカシ君に対する明確な裏切りだ。何より彼はみんなの情報を日本政府に渡しているかもしれない」
コウジさんが熱い。まぁ、脅されていた訳だからね。
「コウジさんが心配するような他ダンジョンの情報はまだ漏らしていなかったよ。今後の交渉のカードにしようとしていたみたい。危なかったけどセーフだった」
「それは本当なのかい?」
「あー、うちの『てんとう虫』さんも一緒に行っててね、マヒトくんの脳を覗いてみたから間違いないよ」
「べ、便利だね。それなら間違いないか」
「マヒトくんが日本政府に伝えた情報は主にダンジョンポイントのこと。滞在ポイント、討伐ポイント、ポイントでモンスター召喚や交換可能な物を生み出せること。あとは『ゴーレム』を隊員のレベルアップのために殺されることを了承したことかな」
「彼は魔法のことも話してなかったんだね」
「うん、コウジさん。結果的に、僕らの行動が早かったってのもあるけど、マヒトくんも日本政府を上手く利用しようと考えていたんだろうね」
「何というか、さみしいわね」
うん。本当にね。みんなのダンジョンもそうならないようにポイントを増やす作戦を話し合っていこうじゃないか。前向きに行こう。
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