第6章 7話
ゆっくりと土煙が晴れていくと透明な板に囲まれたまま無傷の三人が立っていた。
「なっ!無傷だとぉぉ!!!」
「タカシ様の土壁は完璧ですのよ」
「えーっと、では遠慮なく全員に土棘!」
ズシャァァァァ!!
「っぐぁぁぁぁ!!!」
一部生き残りがいるもティア先生とレヴィがあっという間に討伐していく。ほとんど動けない隊員達はあっさりと首を飛ばされたり心臓を踏み抜かれてこと切れていった。
「タカシ様、『ゴーレム』以外はすべて仕留めましたわ」
「ティアもレヴィもありがとう。じゃあ次に進もうか」
先ほどと同じようにこちらに向かってくる『ゴーレム』を無視して次の階層へと進んでいった。
「お兄さま、マヒトさんをどうされますか?」
「そうだね。話が出来れば理由を聞いてみたいけど、一応完全に制圧下においてからね。油断はしないようにしよう」
「もしも裏切りではなく脅されていたとしてもですか?」
「うん。判別出来ないし、まぁその時はいっぱい謝ろっか。マヒトくんから攻撃があったり逃げてくれたらわかりやすいんだけどね」
階段を降りていくと居住区が広がっていた。細かく分かれた扉つきの部屋が見える。うちと同じように寝室や会議室みたいな部屋があるのだろう。ここが最終階層で間違いないようだね。
「お、おい。マヒト君。わ、私も助けてくれ………あっ、アヒィャァァ!!こ、殺されるぅぅぅ」
扉から出てきたおじさんが、人の顔見るなり殺されるぅぅとかひどいよね。おそらく『栃木ダンジョン』に入ってからの僕たちをモニタリングしていたのだろう。とりあえず地面に縫い付けておこうか。いろいろと聞きたいことがある。
「土棘」
「ふぎゃあぁぁぁ!!あ、足が足がぁぁぁ!!」
「今、マヒトくんって言ったかな? 彼はどこにいるのかな? その部屋の中?」
「い、痛い。いたい、痛い!ま、マヒト君は……ぐごふっ……」
土棘が彼の心臓を貫いていた。僕は魔法を放っていない。これはマヒトくんが放ったものか。まさかとは思うが遠隔操作なのだろうか!? 周りを見渡すも姿が見えない。一体どこにいる。
すぐに男が出てきた部屋を確認するも誰もいない。どういうことだ? 彼はマヒトくんを追って部屋から出てきた。ということはすでに部屋の外か。
「ティア! 階層の入口を塞いで!」
「は、はい。氷結」
階段すべてを覆うように氷の壁が入口を塞いだ。これでこの階層からは出られないだろう。さすがに『ダンジョン内転移100万P』を使えるほどポイントは貯まっていないはず。
「ティア、レヴィ、誰も見ていないよね?」
「はい、お兄さま。この階層に降りてから見たのはあの心臓を刺された男だけです」
「よし、じゃあ残りの部屋を探そうか。ティアは念のため入口を見張ってて」
「えぇ。お任せくださいませ」
残りは四部屋。さて、どこにいるのかな?
僕は時計回りにレヴィは逆回りにそれぞれ部屋を確認していった。扉を開けては中を確認していくが、うーん。誰もいない。
「レヴィ、そっちはいた?」
「いえ、お兄さまの方は?」
「あれっ?いない!?」
おかしい。どこに消えた!? レヴィと一緒にティアのいる階層の入口まで戻るが、マヒトくんは勿論のことチャオ太郎もいない。
「ティア、誰も見てないよね?」
「えぇ。見てはいませんわ。ただ、何でしょう。そこはかとなく餃子の香りが漂いながら階層を立ち登っていったような気がしますの」
「お姉さまったらあれだけ『落花せんべい』を召し上がっていらしたのにもうお腹が空いたのですか?」
「ちょっと待って、餃子って! チャオ太郎か!? いやでもどうやって」
「お兄さま! ここはてんとう虫さんの出番なのでは?」
「おー! それだ!」
刺されたのが頭じゃなくて心臓でよかったよ。脳が傷ついてたら記憶を読めなくなるからね。僕は闇の門からてんとう虫さんを取り出すと事情を説明した。血だらけでさすがに気持ち悪いので治癒しておこう。
「じゃあ、てんとう虫さんよろしくね」
しばらくすると体を乗っ取ったてんとう虫さんが立ち上がり記憶を探りながら説明した内容は何とも理解できないものだった。




