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第6章 6話

 ヤバい。ヤバい。ヤバい。


 なんでタカシさんが! なんでうちのダンジョンにタカシさんが来れるんだよ。ミサイル数百発とかで完全封鎖してたんじゃないの? まさか日本政府が嘘をついていたのか。た、大量の罠を仕掛けて時間を稼ぐか。い、いや、時間を稼いでもタカシさん達を倒す方法がまったく思い浮かばない。


 「クソッ!!!」


 「お、おい。マヒト君、あれを早く止めないと隊員が!全滅するぞ」


 「彼は『千葉ダンジョン』のマスターですよ!なんで封鎖されて出れないはずの彼がここにいるんですか!僕に嘘をついていたんですか」


 「いやそんなはずはない。朝に確認した時は封鎖されたままだった。と、とにかく、どうにかして止めるんだ!」


 「無理ですよ。ダンジョンの中で彼より強い奴は現時点でいません」




◇◇◇◆◆



 僕はダンジョンマスターになってから自分のダンジョンが成功するためにはどうしたらいいのかいつも考えていた。最初にタカシさんから会談の連絡があった時。あの時からすでに利用するつもりがあった。


 何の知識や情報もないままダンジョンマスターをやってもきっと長くは続かない。魔法の扱いやダンジョン知識、何よりコウモリ2500匹は本当に助かったし感謝はしている。まさか、なんの見返りもなく手に出来るとは思わなかったけどね。いや、打算はあるか。新しいダンジョンが簡単に攻略されてしまったら困ると言っていた。いいレベル上げの狩場になってしまうからね。


 でもタカシさんはやり過ぎた。いきなり一万人も殺してたら新しいダンジョンは見つかり次第に潰されてしまう。僕だってダンジョンマスターになったからには成功者になりたいし、簡単に死ぬつもりもない。助かりたかったらボスモンスターになれだと!ふざけるな!自分だけ先行の利を享受しやがって。僕だって最初のダンジョンマスターだったらもっと上手くやれたはずだ。もっと慎重にもっと狡猾にな!


 残念なことに『栃木ダンジョン』は開通から三日後に発見されてしまった。僕には運もなかった。すぐに大勢の特侵隊が侵入してきて二階層しかなかった『栃木ダンジョン』はあっという間に攻略されてしまった。ボスモンスターになるつもりがない僕は彼らに交渉を持ちかけることしかできなかった。こうなってしまったからにはポイントさえ貯まればあとはどうでもいい。うちが最初のダンジョンだったらこんなことには……。


 彼らの要求はダンジョンに関する情報の開示と人類のレベルアップ協力、ドロップアイテムの提供、魔法の使い方について知っていることを教えること。最後は強制で僕に爆弾つきの腕輪をはめさせることだった。


 魔法の使い方以外の項目はすべて飲んだ。正確にはダンジョン情報はある程度信頼関係を築けてからになる。ただ、その見返りに僕の命は見逃してもらった。『ゴーレム』についても会話できない人形のようなものだし特に思い入れはなかった。ドロップアイテムの『毒消し草』と合わせて了承した。それ以外についてはこれからの話し合いということになっている。


 ピコン!スキル……………を手に入れました。


 興味深い話はその後に出た『千葉ダンジョン』についてだった。知っていることはすべて教えろとのことだったが、男性のマスターがいることぐらいしか知らないと伝えた。すると『千葉ダンジョン』は最近ドラゴンが外で暴れたらしくかなり警戒されていた。お人好しのタカシさんのことだ。僕とリナちゃんの開通に合わせて自分のダンジョンに注目を集めて自滅したのだろう。


 「ドラゴンは討伐出来たんですか?」


 「あいにく、その時はミサイルの数が足りなかったようだ。当たった箇所の翼はズタズタに引き裂かれてたらしいよ」


 現在は入口を封鎖されており、ミサイルも数百発単位で狙いを定めているらしくほぼ詰んでいる状況といえた。画像や動画を見させてもらったが洞窟内から何か出てきたら自動的にミサイルが発射されるそうだ。冬眠明けのコウモリも外に出た瞬間に全滅するんじゃないかな。言わんこっちゃない。やり過ぎたんだよ。終わってるね。




◇◇◇◆◆



 日本政府と手を組みしばらく経った頃、タカシさんから会談の連絡が入った。新しいダンジョンマスターが現れたのでみんなで会おうと言ってきた。周りを助けている場合じゃないだろう。自分のダンジョンが大変なことになっているというのに。せめて助けを求めるようなら日本政府との仲介役に立ってあげてもいいが『千葉ダンジョン』では印象が悪すぎるな。




◇◇◇◆◆



 日本政府には事情を説明して『千葉ダンジョン』へと向かった。他ダンジョンの情報収集と仲間に誘えそうなマスターを見つけてくるといったら喜んでいた。


 『千葉ダンジョン』に集まるとタカシさんは何事もなかったかのようにいたって普段通りだった。ポイントを出し渋ることもなく『菜の花弁当』も食べ放題で何度おかわりしても眉ひとつ動かさない。新人にはもっと食べろという。いくらポイントが大量にあるからって少しは節約を考えた方がいいんじゃないのか。弱みを見せたくないのだろうか。


 新人マスターのコウジさんと話をしたけど、モンスターに関しての感覚が割りと僕に近いように感じた。まぁ彼の場合は会話が出来ないことへのさみしさが強いのかな。他のダンジョンマスターはモンスターとの仲間意識が強すぎる。コウジさんなら仲間に誘えそうだ。少し脅せば心も折れるだろう。なにせタカシさんは助けてくれないのだからね。日本政府にも良いお土産になるかな。


 それにしてもタカシさんから助けを求めるような素振りは一切見られなかった。残念だ。しかしながら僕ももう後ろには戻れないんだ。


 「さようならタカシさん」


 「うん。マヒトくんまたね!れもん牛乳美味しかったよ」




◇◇◇◆◆



 そして、時は『栃木ダンジョン』二階層。


 「や、やったか(あれっ?デジャヴ?)」


 偉そうな人は土煙が舞う中、確かな感触に口角を上げていた。

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