第6章 5話
洞窟の中に入ると魔素を感じ始めた。ダンジョンだね。魔力が回復していくのがわかる。岩壁でできた広めの通路が続いており、その影からは何かが動く気配を感じる。特侵隊かな?
「マーヒートーくん。遊びにきたよ」
さて、どんな反応をするのかな。楽しみだ。ティアとレヴィが僕の両脇に並び周囲を警戒している。
「お兄さま、やはり人が結構いますね」
「これはマヒトくんのためにも隠れている人を全員殺した方がいいかな?」
僕はわざと聞こえるように大きめな声で喋った。すると装備をかためた特侵隊と外人の隊員の二名がサブマシンガンをこちらに向けたまま叫んだ。
「誰だぁぁ!!そこで止まれぇぇ!」
外人さんは米軍かな。他にもバラバラと姿を表して銃口を向けている。
「動くな!それ以上進むなら撃つぞぉぉぉ!!」
僕たちは歩みをとめず周囲を眺めながら進んでいくと、その周りを包囲するようにたくさんの隊員が出てきた。撃たないのかな。
「お兄さま、この付近にいるのは全員出てきたようですね」
「そっか。じゃあ先に進もうか」
稲妻
ズタァァァン!!バリバリバリッ!!
「ぐぁぁぁぁ!!!!!」
通路の奥には予想通り『沼地フィールド』が広がっており、さらに多くの特侵隊員と米軍兵の姿があった。
ズバババッバババババッ!ズバババッバババババッ!
彼らの銃口は沼地に向いており、沼地から『ゴーレム』がリポップすると撃つ。また『ゴーレム』がリポップすると撃つを繰り返していた。
ズバババッバババババッ!ズバババッバババババッ!
射撃音が激しく続いており、後ろから僕らが近づいても誰も気づいていないようだった。このフィールドには相当な数の『ゴーレム』がいるのだろう。次々とリポップしては討伐されていく。まるで射撃訓練のように撃たれては『ゴーレム』は消えていく。
まるでゲームでもしているような感覚なんだろう。『ゴーレム』達の悲しい悲鳴が聞こえたような気がした。
僕はティアとレヴィに攻撃を命じると二人はかなり大きい水弾をいくつも作り出していった。
シュルシュルシュル……シュルシュルシュル……
「あれっ?何か変な音がしないか?う、うわぁ後ろ見ろ!後ろぉぉぉ!」
「はぁぁ?後ろぉ…………!?に、逃げ」
ズシャァァァァァァン!!!!
至るところで水弾が炸裂し、水圧による圧死がほとんどで残りは溺死していた。水弾は回転させながらぶつけると威力が高まるね。
しばらくすると『ゴーレム』がまたリポップし始め、僕たちを見つけるとすぐさま攻撃体制を整え進んできた。
うーん。『ゴーレム』とは何か戦いたくないなぁ。
「『ゴーレム』の数は少ないし動きも遅い。相手にしないで先に進もう。」
「はい。タカシ様」
「はい。お兄さま」
『ゴーレム』の脇を通り抜け、奥に見える階段に向かってスピードを上げて進んでいった。『栃木ダンジョン』は何階層なんだろう。
階段を降りていくとまたしても『沼地フィールド』が広がっている。あっ、隊員と目があった。またしてもいっぱいいるな。
「こんにちはー」
「おう、こんにちは。ってお前ら何者だ?お嬢ちゃん髪の色がエキセントリックだなぁ」
「通りすがりのダンジョンマスターです」
「「双子の水竜です」」
「なんだダンジョンマスターに水竜か。だ、ダンジョンマスターに水竜ぅ!?」
声が大きい。もう少し静かに会話してもらいたいものだ。騒がしいのに気がついたのだろう。偉そうな人が近づいてきた。
「今ダンジョンマスターと聞こえたんだが。お前らがダンジョンマスターなのか?」
「ダンジョンマスターは僕だけだよ。『栃木ダンジョン』は何階層なんだっけ?」
「教えるとでも思ったか。一応、聞くが何しにきた」
「マヒトくんと遊びに来たんだけど」
「そうか。上の階層にいた隊員はどうした」
「もちろん、全員殺したよ」
「全員構えろぉぉぉ!!!撃てぇぇぇ!!」
ズバババッバババババッ!ズバババッバババババッ!ズバババッバババババッ!ズバババッバババババッ!
「や、やったか」
偉そうな人は土煙が舞う中、確かな感触に口角を上げていた。




