第1章 8話
ティアの服をそっとつまみながら、やや後ろに立つレヴィ。やっぱり、姉に会えて嬉しいのだろう。頬はゆるんでいる。
第一印象としては、天然のティア先生に、しっかり者だけど甘えん坊のレヴィ。といった感じだろうか。
「まさか、ティアに双子の妹がいたとはね。二人が同じ場所に喚ばれてよかったよ。レヴィ、これからよろしくね。僕はこのダンジョンのマスターでタカシだよ」
「タカシ様ありがとうございます。姉と共にこのダンジョンを盛り上げて参ります」
レヴィ(水竜)
レベル1
体力280
魔力240
攻撃力180
守備力250
素早さ300
レヴィもレベル1にして、この迫力あるステータス。ティアと比べると素早さが高い。スピードタイプだね。
「水竜が連続で2体とか、マスターの運がゴリゴリ持ってかれてるっすね!」
おい、そこの落花生!若干気になるようなこと言うなよな。不安になるだろうが。実は、水竜が増えててインフレ起こしてるとかかもしれないだろ。
「まぁ、マスターなら運が尽きても、どこかしらから持ってきちゃいそうっすけどね」
何はともあれ大幅な戦力アップになったのは間違いない。次は、『賢者の杖』の検証かな。
「ティア、レヴィ早速で悪いんだけど『賢者の杖』の検証をしたい。『水の神殿』に付き合ってもらっていいかな」
「はい。かしこまりましたタカシ様」
では、検証開始だね。
まずは普通に撃ってみよう。
「『水弾!』」
キュルキュル~ドッゴーン!
あれっ、大きさは前回と同じくらいなのに、壁に回転しながらめりこんでいって弾けた。
「す、すごい。タカシ様はすでに水の究極魔法を習得されているのですね」
ティア!そこ頷かない!あとレヴィ、違う。これ、水弾っていう初級魔法。
それにしても、この『賢者の杖』魔力操作もよりスムーズにしてくれるし、威力は見ての通り。これならもっと細かいことが可能かもしれない。
「よし、二人とも、僕の後ろに下がって。『水弾!』」
イメージしたのは水溶性の強酸。
シュルシュルシュル……ジュワッシャー!!
壁を抉りながら刺激臭を伴った液体がぶつかって散らばる。
思ったより強烈だった。そう。僕が撃ったのは強酸。水弾最強説が生まれた瞬間である。
匂いが強烈なため、普通の水弾を撃って薄くさせました。あとはダンジョンが吸収してくれるだろう。
「あれっ、この魔法はいったい!?この強烈な刺激臭は!いったいなんなんですかっ!」
さすがにレヴィも違和感に気づいた模様。お願いだから気味悪がらないでください。あまり僕のライフを削らないでくださいね。
「二人とも、あの液体に近づいたらダメだよ。あれは害のあるものだから触ったら手が溶けちゃうからね。」
「ふ、ふぇーっ!?」
ティアもレヴィも僕の足にしがみついて震えている。
なんだろう。とっても心地よいです。美少女二人にいけないことしちゃっているような背徳感、とっても甘美です。
さて、科学と魔法の融合実験はこのくらいにしとこう。
僕は怯えている二人の頭をゆっくり撫でてあげる。安心するように、優しく。ただ二人とも元に戻るまで、まだ時間がかかりそうなので、もうひとつの検証を行う。
心の中で念じる「『水弾』」
『水の神殿』には、水の回廊が神殿のまわりをお堀のように流れている。僕が指定したのはそこ。
イメージは噴水。踊るように、順番に高さを変えてアートを描く。
「ふぁー!キレイ」
「水が楽しそうに踊っています!水の精霊がいるみたいです」
レヴィもティアも少しは落ち着いたみたいだ。
よかったよかった。