第5章 15話
今日で会談はいったん終了となる。まもなく二人のダンジョンが開通するのでダンジョン造りに集中してもらうのと、ちゃんと魔法もスムーズに発動できるようになっているからだ。今日はどちらかというとダンジョン造りの相談とか話し合いの場になる。
ちなみに、ポイントの取得に目処が立ったとかでリナちゃんからミサキさんの『佐賀ダンジョン』にコウモリさんが移動した。コウモリさん、冬眠中にまさかの引っ越し二回。起きても驚かないでもらいたい。
コウジさんの『山形ダンジョン』には『千葉ダンジョン』からまた一グループが旅立った。春からは頑張って繁殖に励んでもらおう。
会議室ではティア先生によるグラスウルフのレベルアップ作戦が映し出されていた。半分以上がモフモフタイムのため、これといって学ぶべきところはない。ちなみに、モフモフ中にキャットフードがなくなるのはデフォだ。まさかとは思うが結果的に撒き餌の役割を果たしているような気がしてならない。ティア先生のことだから絶対計算ではないだろう。この天然具合がティアクオリティなのだ。
「タカシ君、野生の猿はキャットフードも食べるんだね」
コウジさんが低音のモテ声で聞いてくる。メガネ雲ってればいいのに。
「ポイントもそんなに掛からないし野生動物には効果高いですね。ハクビシンやタヌキなんかも来てましたよ」
「山形県はクマやイノシンのような大型の野生動物もいるようだからキャットフードパワーに期待するよ」
「タカシくん、あの可愛らしいブルーの髪の女の子がボスモンスターなの?私が言うのもなんだけど大丈夫なのかな?」
ミサキさんの疑問はごもっともなのだが、あー見えて『千葉ダンジョン』屈指の戦力である。ミサイルが当たっても大丈夫なくらい強いのだが想像するのは難しいよね。
「普段人化していて可愛らしい姿をしているけど、あー見えて水竜なんですよ」
「まぁ! あんなに可愛くて強いなんてうちのブーちゃんと替わってもらいたいわ」
ブーちゃんどんまい。ブヒブヒ。
「『佐賀ダンジョン』はオークがメインモンスターになるんですよね。フロアイメージはどう考えているんですか?」
「そうねぇ。オークは山間部や森林などの足場や見通しのよくないフロアでの集団戦が得意らしいの。どちらのフロアにしようか迷ってるのよねぇ」
「山間部はわからないけど『千葉ダンジョン』で階層状態を大森林にして召喚可能になったモンスターは、『ヘカトンケイル500P』、『エント300P』、『フォレストエイプ200P』でしたよ」
「その中だとエントの能力との組み合わせが面白そうよねぇ」
『エント』は、木の精霊。木に干渉することで複数の木はもちろん大木も手足のように動かすことが出来る。確かにオークの力になりそうなモンスターだね。
「山間部だと『エント』が召喚できそうにない気がするから森林が良さそうですね」
「そうねぇ。森林にしてみるわ」
コウジさんのとこはウォームだから特長を活かすには自然と土のある階層状態にせざるを得ない。
「コウジさんは階層状態どう考えていますか?」
「そうだな。マヒトくんからも話を聞いたんだけど、沼地がいいように思えるんだ。『ジャイアントクラブ300P』と『ロックタートル350P』どちらかでも出てくれたら嬉しいしね。まぁ、どちらも会話は出来そうにないのだけど……」
コウジさん、そんなに話し相手が欲しいのか。意外に寂しがり屋なんですね。
「みんなにも言ってますが、好きなときに遊びに来てくださいね。会談は無料ですから」
「あぁ、そうさせてもらうよ。他のみなさんもよければ『山形ダンジョン』に来てくれたら嬉しい」
そうしてダンジョン造りの話も一段落すると徐々に解散となり、みんな自分のダンジョンへと戻っていった。
「た、タカシ。あなたは近いうち『静岡ダンジョン』に来なさい。約束よ」
「うん。もちろん」
チッ、やはり覚えていやがったか。あまり先延ばしには出来なそうだな。




