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閑話 4

 これはミクとサクラとリノ三人の物語。


 私たち三人には前世の記憶がある。転生と言うらしい。この世界に送られてくるときに神様がそう話してくれた。


 私たちの願いはマスターが生まれた世界で生きること。争いのない幸せな国だとマスターはいつも話してくれた。その幸せの国で生まれ変わりたかったのです。


 前世ではこの世界とは異なる場所でダンジョンのボスモンスターをしていた。私たちは『ゲリュオン』というモンスターで顔が三つ手足も三対あり、三面六臂の怪物と言われ一目おかれていた。私たちは三人で一つ。いつも一緒だった。


 配下には『オルトロス』という双頭のモンスターがいていつも一緒に戦ってくれた。そういえばリノはオルトロスの面倒をよくみてあげてモフモフしていた。オルトロスが私たちを助けてくれたのはリノのお陰なのかもしれない。


 毎日のようにダンジョンに訪れる侵入者達。何度も殺されそうになった。何度も何度も返り討ちにした。いつしかレベルも上がり強くなったと勘違いしていた私たちの前に奴等は現れた。


 私たちはある日突然現れた勇者一行にあっさりと殺されてしまった。


 マスターがどうなったのかはわからない。けど、厳しいだろうな。奴等の強さは私たちのレベルでどうにか出来るものではなかった。マスターは転生されなかったのかな……。また会いたいな……。




◇◇◇◆◆



 私たちが転生して中学生になった頃、この世界にもダンジョンが現れた。この安全で幸せな国は終わってしまうのだろうか。でも、ひょっとしたらダンジョンに私たちのマスターがいたりしないだろうか。そんなことはあり得ないと思うけど淡い期待をしてしまう。あの優しくて頼りないマスターにまた会いたい。


 それからの行動は早かった。私たち三人はダンジョンに通いつめた。『山梨ダンジョン』は攻略されダンジョンマスターが討伐されていると聞いた。だから毎日『千葉ダンジョン』に向かう。


 「マスターは千葉にいるかな」


 「いなくても案内人なら何かわかるかもしれないわ」


 「モフモフいるかな……」


 「オルトロスちゃんもいたらいいね」


 毎日のように『千葉ダンジョン』に通う私たちは、ちょっとした有名人になっていた。まわりはがたいのいい男ばかりの自称探索者達。女子中学生三人組は目立っていたのだ。


 いつしかダンジョン中継コーナーの浅川というリポーターの目に留まり、現地のアシスタントをしながらお小遣いを稼いだ。交通費もばかにならないのです。


 「ミク、アシスタントは儲かるわね」


 「サクラ、目的を忘れてない?私たちは『千葉ダンジョン』の案内人に会うためにここに来ているのよ」


 「それはわかってるけどダンジョンには近づけないし、お金がないからここに来るのも大変だったじゃない」


 「まぁ、助かったといえば助かったけどね。あれっ、リノは?」


 「知らなーい。また野生のキョンを餌付けでもしてるんじゃない?」


 「あの子はぶれないというか欲望に忠実よね」




◇◇◇◆◆



 アシスタントから人気に火がついた私たちは所属事務所も決まりアイドルデビューすることになった。


 この世界は生きるために何かとお金がかかる。特に中学生のお小遣いなんて月に数千円程度とたかが知れている。私たちは月額16万円の契約をして安定的な収入源を確保した。


 デビューの日が決まり頑張って歌詞と踊りも覚えた。番宣のためテレビ局をまわっていた。


 その時、チャンスが急に訪れた。


 綺麗なブルードラゴンがダンジョンから出てきたのだ。通常、モンスターがダンジョンから出てくることは考えづらい。何か理由があるのかもしれない。


 中継のカメラがダンジョンに向かう人の群れを映し出していた。


 「ずるいわ!私だって入りたいのに!」


 あらっ、つい本音が出てしまったわ。でもこれはチャンスかもしれない。目配せすると二人とも頷いた。可能性があるなら向かう。私たちは走り出した。

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