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第4章 14話

 樹海の中を走りながら来た道を戻っているが、どうやら本当に追っては来ないようだ。賢明な判断と言っておこう。僕もダンジョンの外で無意味に殺人するつもりはない。どうせ殺すならダンジョンで殺る。


 「タカシさん、もう大丈夫ですよ」


 し、しまった。後ろを気にしていたらあっという間に樹海を抜けてしまったじゃないか。


 「うん。そうだね」


 僕はレイコさんとヨルムンガンドちゃんをおろしてコンビニの駐車場へ向かって歩く。自然とヨルムンガンドちゃんを真ん中にして手を繋ぐ。そういえば、ダンジョンで散歩したときもこんな感じだったな。


 駐車場に辿り着くと無事ワンボックスカーはコンビニの前に停まっていた。よし、帰ろうか『千葉ダンジョン』へ。


 車に乗り込むとすぐに河口湖I.Cへ向かう。レイコさんとヨルムンガンドちゃんはもちろん後部座席だ。


 せっかくだから『ほうとう』とか『吉田うどん』とか食べようかと思ったけど、なんとなく留守番組みやゴブリン達のことを考えるとやめておいた。のんびりしてて高速道路がもしも封鎖とかされちゃったら面倒くさいしね。そういえば、てんとう虫さん達にも連絡を入れておかないとな。


 「あっタカシです。こちらは予定通り『山梨ダンジョン』を出て中央自動車道に向かっています。はい。いいタイミングで抜け出してください」


 「てんとう虫さん達は大丈夫なんですか?」


 「うん。百貨店の食堂にバリケードを立てて上手く立て籠ったらしく順調に時間を稼げたそうだよ」


 「さすがですね」


 高速道路に入り、しばらく進んでいると後方上空にヘリコプターが飛んでいるのが見えた。まさかと思うけどやっぱりそうなのかな。


 「マスター。つけられてるかも」


 うーん。ヨルムンガンドちゃんもそう思うか。


 「えっ、ヨルムンガンドちゃんどの車?」


 「レイコさん空からだよ。ヘリコプターが追ってきてるかもしれない」


 「うん、そう。あの空にいるやつ」


 空からなら大丈夫だろうとか、残念だけどそういうのはあんまり好きじゃないんだよね。その場所は安全だとでも思っているのかな。


 稲妻(サンダーボルト)!!


 ズダーン!!バリバリバリッ!


 もう一ついっとくか。結構離れてるからざっくりだけど、その分範囲は広くしよう。


 絶対零度(アブソリュートゼロ)


 『山梨ダンジョン』を目標にして周辺を凍らせたはず。これでレベルアップした隊員も全員逝ってくれたことだろう。


 「マスター。ヘリコプター落とした後にまた魔法使った?なんかものすごい悪寒がしたんだけど」


 「私もです。冷や汗が止まらないのですが、何が起きたんですか?」


 「い、いや。僕、何もしてないヨ」


 「嘘つけよー。だって、あのでけー山が下から凍ってるぞ」


 あっ、本当だ。富士山凍っちゃった。


 「『山梨ダンジョン』周辺を凍らせたんですね。全くどんだけの距離を遠隔操作できるんですか」


 理由がわかって安心したのだろう。五歳児は車の心地よい揺れに抗えるはずもなく、レイコさんの慎ましい胸に顔をうずめてスピースピー鼻を鳴らし始めた。


 枕はあまり高くない方が安眠出来るとか聞いたことがあるがレイコ枕匂い付きを試してみたいところである。レイコさんが迂闊にもお礼がしたいとか口走ったら即お願いしようと思う。


 しかしながら膝枕は頼みやすいけど胸枕となると途端に変態臭がキツくなる。しかもヨルムンガンドちゃん同様に前からいかせてもらいたいのだ。おかしいな、更にレベルが上がった気がする。


 更に少し時間が経った頃に言うんだ。「あれっ、顔がちょっと痛いかな。下のこれちょっとはずしてくれない?」あくまでも自然に。そう。ナチュラルにブラ外しを要求するのだ。


 そんな妄想をしていたら車は首都高に入っていた。中央自動車道あっという間だな。後部座席ではレイコさんもヨルムンガンドちゃんを抱きしめたままお休みである。なんだかんだ気を張っていたのだろう。お疲れさま。

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