第4章 10話
僕たちはダンジョンから一番近いだろうコンビニに車を停めた。ここからは徒歩で『山梨ダンジョン』へと向かう。
樹海周辺は予想通り立入禁止となっており一帯は囲うように金網で仕切られていた。壊したらなんだかセンサーとかで警報が鳴りそうな雰囲気。
「また、あれでいくのか!なぁマスター!」
「それが無難かなぁ。レイコさん構わない?」
「はい。お願いします」
ふぅ。断られなくてよかった。どうやら僕のエロい感情はまだ見破られていないようだ。
ゴブリン達の状況にもよるが、殺されたばかりだとするとリポップまでかなり時間がかかるだろう。それまで『山梨ダンジョン』内で防衛。そして全員リポップ後は完全包囲の中を脱出しなければならない。
応援を呼ばれるのも面倒なため、てんとう虫さんに山梨近郊での無差別テロをお願いしている。彼らはサブマシンガンをバッグに入れて電車移動で山梨に入っているのだが、うまい具合に戦力が分散してくれるとありがたい。
そんなことを考えていたらてんとう虫さん達から連絡が入った。
「はい。タカシです。甲府駅の山島百貨店ですね。わかりました。なるべく立て籠る方向でお願いします。では、13:00スタートで」
「てんとう虫さん達ですか?」
「うん。10分後に派手に暴れてもらいますので僕たちも行きましょうか」
「はい!しっかりつかまってます」
是非そうしていただきたい。
軽く助走をとって金網を飛び越えるとスピードを上げてダンジョンに向かって走る。
予想通り樹海の警備は薄い。なぜなら彼らは自分達で整えたダンジョンまでの道と門周辺にその人員の殆どを割いている。
普通の人間は三メートルの金網をノータッチで越えられないだろうから、どんなセンサーを仕掛けていたとしても僕たちには関係ない。
そう思っていた時期が僕にもありました。そこらじゅうでビービー音が鳴りまくっている。罠線というのだろうか、あっちこっちに仕掛けてある。どおりで警備が薄いというか必要がなかったのだね。
「マスター。作戦失敗か」
知ってる。
「ヨルムンガンドちゃん、タカシさんも完璧じゃないの」
くっ、背中の感触を楽しむ余裕がない。
「敵襲ー!敵襲ー!こっちにいるぞ!」
「マスター。みつかったな」
知ってる。
「ヨルムンガンドちゃん、タカシさんだって見つかることはあるの」
そんな、かくれんぼの達人みたいに言わないでください。
とりあえず、足音の聞こえた方へ無差別土棘!!
「っぐぁー!」
足音が聞こえたらその方角へ無差別土棘
「っぐぁー!」
「マスターの魔法は相変わらず気持ち悪いなぁ。なんで見えない場所に魔法撃てるんだよ」
五歳児の容赦ない言葉がささる。
「ヨルムンガンドちゃんも魔力操作勉強中でしょ。気持ち悪いなんて言ったらダメよ」
特侵隊のみなさんには狙いを定める前に退席いただく。そもそも樹海をこのスピードで動いている僕らに照準を合わせるのは無理があるだろう。
影盾
流れ弾が飛んできた。な、ナイスショット。敵ながらお見事だよ。ヨルムンガンドちゃんが防いでくれたおかげで助かった。
「マスター。今の危なかったんじゃね?」
「ヨルムンガンドちゃんを試してみたのさ。一応見えているようだね」
「タカシさんさっき、ビクッてなったのも演技だったんですか?」
「ご、ごめんなさい」
「もう!私たちが影盾で守りますからタカシさんは攻撃をお願いしますね」
「はい……」
「マスター怒られてやんの」
身体強化に土棘の重ね掛けは無理があったようで隙を生んでしまったようだ。慣れないことを実戦でやるべきではないね。もっと二人を頼ろう。
ようやく『山梨ダンジョン』が見えてきた。




