第4章 8話
「お姉さま来てます!」
「えぇ、わかってるわ」
水弾
ズガーン!バリバリバリバリッ!ドッカーン!!
ミサイルががっつり民家に突っ込んでいった。うわぁーめっちゃ爆発している。きっと私のせいではない。私は魔法で少しだけ軌道をずらしただけだもん。
ダンジョンを出てから数分。戦闘機が四機、私たちを追いかけてきた。一定の距離をあけたまま近づいてこないので南側へ向かうと後ろからミサイルを撃ってきたのだ。
レディの後ろからいきなり攻撃してくるとか全く礼儀がなってないわよね。あなた絶対モテないわよ。
「お姉さま大丈夫ですか?」
「えぇ、あたってないわ。軌道をずらしたから大丈夫よ」
「ミサイルって追っかけてくるのですね」
「次からは避けずに片っ端から落とそうかしら」
「もう戦闘機ごと落としちゃいましょう」
私たちは再び水竜の姿になって飛びまわっている。目標は特にないけど南東方面で暴れてほしいとお兄さまに言われている。
私たちは陽動。つまりお兄さま達が目立たないように注目を集めなければならない。
「お姉さま、あの辺りで迎え撃ちましょうか」
逃げるだけっていうのもつまらないですからね。私は半島の最南端に大きめな公園を見つけると高度を落としていった。
「了解よ!レヴィ」
タカシ様がダンジョンから無事出発なさるまで三十分も引きつけておけば大丈夫でしょう。
公園に降り立つと家族連れが慌てたように逃げ出すのが見えた。なんかごめんなさいね。でも昨日の今日で近くの公園にお出掛けしちゃってるあたり危機感が無いわね。お気楽なのかしら。戦闘機も人間が近くにいるからなのかミサイルは撃ってこない。とことん甘いわね。
「お姉さま今度は私が撃ちますね絶対零度!」
レヴィが上空に向けて氷属性魔法を放つと上空を通過した戦闘機が三機そのまま海上へ墜落していった。お、お見事ね。
「やりました!お姉さま」
「ま、まぁまぁね。もっと精進なさい」
それを見た残り一機となった戦闘機は少し離れた上空から様子を窺っている。来ないのかしら。
「レヴィ、あの戦闘機はこっちから追いかけようかしら」
「そうですね。あっ、向こうから来そうですよ」
戦闘機は少しだけ近づくとまたミサイルを撃ってきた。
「全く懲りもせず……」
ズガーン!!!んなっ海から!
「お、お姉さま!」
ドカーン!!!!!!
上空を気にしすぎたせいで海からのミサイルに気づけなかった。続いて上空からのミサイルも突っ込んでいく。凄まじい爆風と土煙が一帯を襲った。
◇◇◇◆◆
ティア達が出てから数分後、僕たちはダンジョンを出発した。入口周辺は誰もいない。上手く暴れてくれたのだろう。
「まずは下山して車を探そうか。じゃあ、しっかりつかまっててね!」
身体強化!
僕は、レイコさんをおんぶ、ヨルムンガンドちゃんを抱えてダッシュした。
「キャッ、は、はいっ!」
「はえー!マスターこれ楽しいぞ!」
スピードのアップ、ダウンを繰り返しながら背中の感触を楽しむ。右に急カーブをすれば左乳があたり、左にステップを刻めば右乳があたる。
なんだこのご褒美は!公然わいせつプレイか!レイコさんの慎ましい胸の感触が動力となり僕たちは崖を駆け降りていく。なんだかこのまま走って山梨まで行ける自信が出てきた。うむ、作戦通りだ。
下山してしばらく浜金谷駅の方に向かっていくと、特侵隊の包囲を抜けたのだろう。ちらほらと民間人やらマスコミ関係と思われる人達が目につくようになった。
「あ、あのタカシさん。そろそろ大丈夫かと」
残念ではあるが、レイコさんとヨルムンガンドちゃんを降ろして歩くことにした。夢の時間は唐突に終わりを告げる。またいつかやろう。これはすごくいいものだった。
「えー、もう終わりなのかよ」
ヨルムンガンドちゃん気が合うじゃないか。
「よし、じゃあ車を探さないとね」
「どこで手に入れるんですか?」
「どこか駐車場のあるお店で車から降りてくる人を狙おう」
「タカシさん、あそこにホームセンターが見えますよ」
それにしても昨日今日と暴れ水竜が出たばかりだというのに普通にお店開いてるのかよ。いや、助かるんだけどさ。
お店を見ると予想外に激混みしていた。どうやら食料や水を買い求める人達で溢れかえっているようだ。
備蓄より疎開をおすすめしたいが、ダンジョンマスター的には逃げないでいてくれるのとてもありがたい。
車はあっさりと手に入れられた。ワンボックスカーから一人で降りてきた若者を僕が氷結して、すぐさまレイコさんが闇の門した。やばい。完全犯罪できそうだよ。
いざ山梨へ。




