第4章 3話
『千葉ダンジョン』周辺が一面氷の世界になっているなか、いつものようにダンジョンに入ろうと集まっていた自称探索者達がいる周辺は一部を除いて被害を免れた者がかなりの数いた。
「ドラゴンとか本当に存在するんですね……」
「いやいやいや、あれはヤバイだろ。生きてるー。俺達生きてるよー」
「お、おい。今ならダンジョン入れるぞ。警備が手薄になってる」
「お前ドラゴンがいるダンジョンに入るつもりかよ!」
「こんなチャンス二度とねぇ。俺は行く」
「ムリムリムリ。あの魔法見ただろバカなの?」
「ほら、外人さんチームが向かったぞ」
「いいか、何もドラゴンと戦うほど頭イカれてねぇよ。外人さんチームにドラゴンの相手させてるうちに少しでも雑魚を倒すんだ。しかも入口周辺には使える武器もあるかもしれねぇ」
「よ、よし。わかった。いや、ちょっと待て、やっぱ無理!俺、待ってる」
「お、俺は行くよ!」
「よし、じゃあ行くぞ!」
二人は他の探索者達の後ろに続いてダンジョンに向かって走っていった。
「お前ら…………絶対死ぬって。リアルドラゴン半端ねぇもん」
◇◇◇◆◆
僕は二人が心配で入口の前で待っていた。時間にして五分くらいだろうか。それでも長く感じていた。
「ティア、レヴィ、怪我は……ない?」
「タカシ様心配し過ぎですわ」
「ただいまです。お兄さま何も問題ございません」
ティアが少しふらついているが、魔力が少なくなっているからだと聞いて少し安心した。
「タカシ様にも見せたかったですわ。私の絶対零度」
魔法を放つ決めポーズを披露しながら、とっても得意気だ。テンション高めのティア先生ラブリー。
「ははっ、カッコよく決まったようだね」
「このあとはどう出てくるのでしょうね」
「外はどんな感じだったの?」
「ダンジョン入口周辺には武器を持った人がたくさんいました。バリケードや建物なんかもありましたが、お姉さまが水弾で流しちゃいました」
「カメラで撮っている人達も少し離れたところにいましたが、絶対零度で凍りつきましたわ」
「じゃあダンジョン周辺に人はいない感じ?」
「いえお兄さま、さらに離れた場所にかなりの数の人の気配がありました。おそらくですが、ダンジョンでレベルアップを狙うやからかと」
「なるほど。じゃあ、一階層の菜の花広場でレイコさんとヨルムンガンドちゃんに迎え撃ってもらおうか。レヴィも念のためフォローしてあげて」
ヨルムンガンドちゃん起きてるかなぁ。
「はい。お兄さま」
「タカシ様!私は?」
「ティアは魔力回復するまで僕と会議室待機ね」
「はいっ!」
レヴィに二人を呼びに行ってもらい、僕とティアは会議室へと向かった。
「お疲れっす!お茶を用意しといたっすよ」
「ありがとうございます。ピースケ様」
「お茶受けに『落花せんべい』もあるっす」
ま、またしても共食いですわね。さ、さすが食の探求者様でございます。まっすぐに芯がぶれませんわ。
「あれっ、いらないっすか?」
「20枚くださいませ!」
「ティア、『落花せんべい』そんなに好きだったんだね。僕もあの素朴な味が好きなんだ。お茶に合うよね」
「えぇ。食の探求ですわ」
食の探求が何なのかはわからないけど、とりあえず『千葉ダンジョン』に注目を集めることは出来たのではないだろうか。映像が流されていればゴブリンとは比べようもないインパクトを与えたことだろう。
あとは二人のダンジョンがすぐに見つからないことを祈るしかない。
「レベルアップ志願者達は何名ぐらいダンジョンに来てくれるかな」
水竜二体の無双を見ても来てくれるのだから本当ありがたい。
ボリボリボリボリ。ズズー。ボリボリ。
そ、そんなに好きなのか『落花せんべい』。
まぁ、何人来ようがちゃんとしっかりまるっと養分にしてあげようじゃないか。




