第3章 15話
会議室の画面はヨルムンガンドちゃん無双を映していた。ボスモンスターらしい真正面からの力押し。相手が弱いからまだ大丈夫だけど、少々不安になる戦い方だ。
とはいえ、彼に戦術とか教えても意味無いから特に何もしないけどね。まぁ、今回の無双で少しはレベルも上がっているだろうから大丈夫かな。本当に危ない時には甘味で釣ろう。
「か、かわいい!」
あの鮮血ブシャーのシーンを見ての一言目がそれでいいのだろうか。リナちゃんがローパーを語る時の目になっている。完全にヤバイやつだ。
女子はみんなヨルムンガンドちゃんに弱い。ちみっこの特権といってもいいだろう。抱きついてもチューしても夜一緒に寝たって全然怒られないのだ。まったくけしからん。あぁ、ヨルムンガンドちゃんになりたい。どうにか代われないものだろうか。
「あのー、ボスモンスター交換出来ないんでしょうか」
マヒト君は欲望に忠実だ。隠さないのが彼のいいところ。思い切りがよく行動も早い。おそらく温泉に入っても隠さないで威圧するタイプの人間だろう。ちゃんとタオルを使ってもらいたい。
「そうだねー。うちのダンジョンが攻略されそうになったら『栃木ダンジョン』に管理権限を移すよ。そうしたらボスモンスターも一緒についてくるから」
「いやー、言ってみただけです。『千葉ダンジョン』が攻略されるイメージはないですねー。まったく浮かびませんよ」
さすが隠さない男。言葉に嫌みがない。
「そ、それにしても、と、とても参考になったわ」
「そうですね。本来ならタカシさんの遠隔魔法で一発終了なんでしょうけど勉強も兼ねてくれたんですよね?」
「もともと逃げ出す隊員以外は手を出すつもりがなかったんだよ」
「ど、どうしてよ」
「モンスター達の動きの確認と、ヨルムンガンドちゃんとレイコさんのレベルアップを目的にしていたからね」
ヨルムンガンドちゃんが暴走してたから殲滅してしまうのでは!と少し焦ってしまったけど結果オーライという感じだろうか。
「そ、それでもローパーを仕掛けるタイミングとか勉強になった」
「自分はますます『ロックタートル』が欲しくなりましたね。でも『ジャイアントクラブ』も捨てがたい。両方手に入らないかなー」
さて、そろそろ『てんとう虫』さんの準備が整ったようだね。画面には心臓を止めた隊員が起き上がりティア達と話し始めた。
「では、記憶に残っていることを話してもらいますね」
レヴィから質問するようだ。
「隊員のレベルはいくつでしょうか?またステータスに魔力のある者はいましたか?」
「レベルは全員5です。彼らはレベル5が上限だと勘違いしているようです。またステータスに魔力のある者は全体の一割程度存在します」
レベル5を上限だと思っている。これはいい情報だ。ゴブリンの討伐だけではなかなかレベルが上がらないようだね。
「レベル5の隊員は現時点であと何人いますか?」
「いません。今回の攻略に全員投入しました」
「つ、次は私が聞きますね。『山梨ダンジョン』は今どうなっていますか?」
口早にレイコさんが質問した。
「ゴブリン達はリポップするとともに射殺され、隊員のレベルが5に上がると次の隊員にチェンジしていきます。また研究のために五体のゴブリンが生きたまま外へ連れていかれ数日後に魔素不足により消滅。以降、その五体はダンジョンに出現していません」
「そ、そう。」
唇を噛みしめている。悔しさと悲しみがまざったような表情がちょっとつらい。
次はティアが聞くようだ。大丈夫だろうか。
「『千葉ダンジョン』の入口付近の人員はどのくらいかしら?」
「おおよそですが、五千人ぐらいかと。『山梨ダンジョン』も同じぐらいです」
「えーっと。他にマスターに伝えた方がいい情報はあるかしら?」
もう聞くことなくなっちゃったっぽいな。完全に丸投げかしら。
「政府はダンジョン攻略のため新しく『特殊侵略者攻略部隊』通称『特侵隊』を警察の特殊部隊を中心に優秀な自衛官も含め設立しました。また、現時点でダンジョンの一般解放は考えていないようです。今後は在日米軍との訓練にも『山梨ダンジョン』が使われる予定です。これぐらいでしょうか」
「ありがとう。……もういいかしら」
レイコ(元ダンジョンマスター)
レベル7
体力110
魔力120
攻撃力33
守備力38
素早さ35
魔法:土、闇属性初級
スキル:魔力操作レベル1
ヨルムンガンド(大海蛇)
レベル5
体力240
魔力120
攻撃力270
守備力260
素早さ300
魔法:水、闇属性初級




