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第3章 14話

 「……『千葉ダンジョン』は化物の巣窟か……正直、考えが甘かったとしかいいようがないな」


 神殿手前のヤシの木の木陰に残った17名がようやく集まった。


 ようやく地面が沼地から砂地に変わった。それだけで安心感が違う。


 まさか隊長が死に、隊員が半分近くになってしまうとは誰が予測できようか。


 出来ることならダンジョンの外へ戻りたい。どう考えても一度立て直すべきだろう。


 しかしながら、もう沼地には入りたくない。なんというか、情けないが体が拒否反応を示してしまっている。


 泥に足をとられ動きが制限されているなかであんな攻撃避けられるものか!とはいえ、どうしたものやら……。


 「狩野さん。戻るにしても進むにしてもあの神殿を見てからにしませんか?」


 迷っていると一番若い隊員がそう話しかけてきた。名前は江川だったか。


 「そうだな江川。まずは神殿まで行ってみよう」


 ドサッ


 「う、うぁー!」


 ジュッサァー!


 『ジャイアントクラブ』が突然上から落ちてきて江川の首を狩った。


 ピコン!侵入者を討伐しました。


 討伐ポイント10万P取得。


 1名討伐。


 「クッ、撃てー!撃てー!撃てー!」


 ズダダダダダダッ!ズダダダダダダッ!


 「どこか柔らかい場所があるはずだ!狙え!撃てー!」


 甲殻が固くても目や関節の繋ぎめ、内側などとにかく数名でひたすら撃ちまくる。


 すると『ジャイアントクラブ』が脚を少し崩した。


 「き、効いている!倒せるぞ!もう少しだ」


 あと少し、あと少しで倒せると思った時に声が聞こえてきた。


 「……カニさんを」


 「カニさんをイジメるなー!!」


 子どもだ。小さな男の子がすっ飛んできた。


 何が起こっているのか理解できなかった。何故ダンジョンに子どもがいるんだ。いや、その前に男の子のスピードがおかしい。レベル5の私が目で追うのがやっとなのだ。


 男の子が手を横なぎに振るうと銃を構えていた隊員が全て吹き飛ばされた。


 「う、嘘だろ…」


 ピコン!侵入者を討伐しました。


 討伐ポイント60万P取得。


 6名討伐。


 吹き飛ばされた隊員はすべて体が半分に分かれており、息をしている者は皆無だった。少し遅れて血が噴き出しゆっくりと砂地を黒く染めていった。


 誰も動けなかった。動いたら殺されるとか、とにかく逃げようとか、そういうことではないのだ。


 男の子はジロリとこちらを見てくる。


 動物の本能のようなものかもしれない。我々は脳にあらかじめプログラムされているかのように生きることを諦めた。


 「ヨルムンガンドちゃーん。急に飛び出したらだめでしょ!」


 黒髪の女の子がそう言いながら神殿から出てくる。青い髪をした少女二人も一緒だ。


 「だってよー。こいつら寄ってたかってカニさんイジメてたんだぜ」


 「そうね、悪い人達ね。でもヨルムンガンドちゃんはまだレベル1なんだから一人で無理しちゃだめなのよ」


 れ、レベル1だと……。


 「コイツらすげー弱っちいから平気だって」


 「何かあってからじゃ遅いの。我が儘言う子は夜一緒に寝てあげないんだから!」


 「わ、悪かったよ」


 「ん。わかればいいの」


 そういって頭をヨシヨシと撫でられている。


 なんだこれは……。この少女達はここに住んでいるのか……ひょっとして我々は助かったのか?


 「た、助けてくれ!き、君たちはここに住んでいるのかい?」


 土棘(アースニードル)


 ズシャー!

 狩野の足に土の棘が突き刺さっていた。


 「ヒィィィィ」


 「誰が勝手にしゃべっていいといったの?」


 一瞬でも助かるかも知れないと考えてしまったからだろう。急激に膨らんでしまった生への渇望がつい言葉に出てしまう。


 「……なんでだよ。」


 氷結(フリーズ)


 レヴィが魔法を放っていた。上半身が凍りつき倒れると同時に頭が粉々に砕けた。


 ピコン!侵入者を討伐しました。


 討伐ポイント10万P取得。


 1名討伐。


 「言葉がわからないようですね」


 『ジャイアントクラブ』に治癒(キュア)を唱え終わったティアが続けて話す。

 「フフッ随分とおとなしくなるのね」


 「ティアさん『てんとう虫』さんを呼んでもらってもいいですか?」


 「そうね。呼んでくるわ。レイコはしっかり仇をとりなさい」


 「ええ。一人は『てんとう虫』さん用にティアさんが心臓だけお願いします。」


 土棘(アースニードル)氷結(フリーズ)


 ズシュアー!!!!


 ピコン!侵入者を討伐しました。


 討伐ポイント90万P取得。


 9名討伐。




 「……先輩。少しは強くなれたでしょうか」

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