第3章 13話
ようやく狭い通路が終わり広い場所に出た。洞窟の中だというのに光が射している。そしてまたこの花か。一面を埋め尽くす黄色い花畑だった。
やはり普通の洞窟ではないんだよな。それにしてもイヤな通路だった。少し休むか。
「川崎隊長、ここで少し休憩しますか?」
「そうだな、ただし警戒は怠るなよ。あと装備の確認もさせておけ」
「了解です。水分もちゃんととらせましょう。みんな注意力が散漫になってますから」
15分程度の休憩だったが所々で花畑が揺らめき、あまり気は休まらなかったかもしれない。
ただレベルアップの効果なのか、敵の攻撃もたいして影響を受けていない。落ち着いて進めば大丈夫だ。
花畑の奥に階段があり下層へと続いている。さて、次の階層か。
階段を降りると別世界が広がっていた。目の前には吊り橋があり、その先には広大な沼地が広がっていた。
ダンジョンの異質さを感じる。
ここは完全に別世界だな……。空があり光が射している。地下に空があるわけない。
「周囲を警戒。ゆっくり吊り橋を渡っていけ」
あからさまな吊り橋。あきらかに何かあるのかと思ったのだが、結局最後の三人が渡るまで何も起こらなかった。そして、ようやく全員吊り橋を渡りきった時に水面が動いた。
「おい!下に何かいるぞ!」
パシャン
水面が揺れている。何かがいた形跡はあるがどこかに消えたようだ。
「ふん。恐れをなしたか」
まぁ、この人数を見たら普通逃げるよな。
それにしても沼地か。いやらしいな。
「先に進むぞ!周囲の警戒を怠らず隊列を組め」
どうやら奥に神殿のような建物が見える。あそこにダンジョンマスターがいるのだろうか。
沼地を進んで行き、ようやく半分ぐらいまでたどり着いたか。当たり前だが泥に足をとられ進みづらい。
ゴッゴツッ
何か固いものにあたった。岩か何かだろうか。
ジュッシャアー!
その瞬間、切断された右足が鮮血とともにはじけ飛んだ。水面に薄くなった血が広がっていく。
「も、モンスターだ!」
「でかいカニだ!カニの化物がいるぞー!」
「うぁー!や、やられた!」
二体の『ジャイアントクラブ』がその鋭い鋏で隊員の足を奪い去っていた。
「撃てー!撃てー!」
ダダダダダダッ!ズダダダダダダッ!
『ジャイアントクラブ』は銃弾を弾きながら尚も進行を止めない。ゆっくりと確実に近づくと隊員を鋏で切断していく。
「く、くるな。くるなぁぁぁぁ!」
「や、やめろー!やめてくれー!」
ズダダダダダダッ!「あぁ……」
ジュッシャアー!
『ジャイアントクラブ』は動けない隊員の首をあっさりと切断した。
ピコン!侵入者を討伐しました。
討伐ポイント20万P取得。
2名討伐。
「なっ、銃弾が効かない……」
「い、一旦待避!沼から上がれー、あの岩だ。い、岩場に逃げろ!」
あわてて周囲を見渡し目についた岩に登っていく。
逃げ出す隊員を見ても『ジャイアントクラブ』は特に追いかけもせず、沼の中に潜り身を隠していった。
「な、なんなんだよ。あんな化物どうやって倒すんだよ」
「狩野、また沼の中に入るのは危険だぞ。どうする」
「あの化物、スピードはそこまでなさそうでした。沼地で走りにくいですが、突っ切るしかないのでは?」
「そうだな。沼地とはいえ我々なら最短で真っ直ぐに突っ切れば5分と掛かるまい。全員に指示……」
バッコーン!!
「隊長ぉー!!」
一瞬のことだった。岩だと思っていたのは擬態した大型の亀のモンスターだったのだ。そして川崎隊長はモンスターの強靭な顎で首から上を一気に持っていかれた。
岩の上に乗っていた隊員は沼地に振り落とされる。他にも亀のモンスターに数名の隊員が殺られていく。
ピコン!侵入者を討伐しました。
討伐ポイント40万P取得。
4名討伐。
「全員、走れー!」
沼地はまずい。早くあの神殿の方へ行かなければ我々は全滅だ。
「急げー!とにかくあの神殿まで突っ走れー!」
走っている最中、隊員の叫び声が響いていた。何人かが更にカニの化物の餌食になってしまったのだろう。
ピコン!侵入者を討伐しました。
討伐ポイント30万P取得。
3名討伐。
残り17名。




